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異世界転生編

5話 緊急事態と魔法訓練

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「お、おい……アサト……この魔法は……」

 想像以上の巨大な根に俺も驚いてしまった。
 これは狐の神様の加護の影響だろうか……?
 それとも俺の魔力のせいだろうか?
 どっちにしても加減をコントロール出来なと味方まで巻き込んでしまう。
 この巨大な根との感じる繋がりを絶つと、根は役目を終えたと言わんばかりにゴゴゴと地を鳴らさし潜っていく。

「あ、あははは……。
あの……これ……街まで見えてますかね……?」

 俺の問にベルガードはハッとする。
 ヨハンが必死の形相で俺達の方へ走ってくるのが見えてき。

「ベルさーん!!アサトー!!大丈夫かー!?
巨大モンスターが出現したから早く街に避難しないと!!」

 あれを見たらモンスターだと勘違いするよな……。
 とりあえず落ち着かせないと。

「えっと、ごめん……あれ、俺の魔法……」

「はぁ?初めて魔法使うやつがあんな巨大な触手出せないだろ!!
冗談言ってないで避難するぞ!!」

「落ち着けヨハン。
あれはアサトの魔法で間違いない。
俺が見たから確かだ。
それでアサト、説明してくれ。
あれは何なんだ?」

 真剣な目をして俺に問いかけてくる。
 多分隠すのは良くないよな……。
 あれが樹魔法で、俺のMPが膨大にあるとだけ伝え。
 それともう一つ。
 今度は手加減を意識して頭に浮かんだ呪文を唱える。

《神に授かりし聖なる魔法よ、我が求めに応え、ヨハンを癒し、穢れを祓いたまえ サンクトゥルス・デルミーネ・ベネディクタス》

 俺が呪文を唱えると眩い光がヨハンを包み、傷を癒やし、汚れを消し去る。
 これは加減出来てないやつです。
 2人ともポカーンと放心している。
 これはどうしたものか……。

 先に戻ったのはベルガード。

「お前……聖魔法使えるのか……?
それは神に加護を与えられし者に授かると言われる伝説の魔法……。
教会の糞共でも持ってる奴はいない。
あいつらはせいぜい光魔法だ。
それに樹魔法なんて俺は聞いたことない……。
それも加護なのか……?」

 ベルガードの言葉にピシリと硬直する俺。
 加護ってヤバ過ぎる!
 俺はそんなふうに軽く考えていた。

「とにかくここ離れるぞ!
直に街の奴らが集まってくる。
おいヨハン!いい加減戻ってこい!!」

 大きな手でヨハンの頭を叩く。

「ぐぁっ!なんだ!?
お、おいベルさん俺は自分で走れる!!」

「なら走れ!!直ぐにここから離れるぞ!!」

 俺達は街から離れるように急いで走っていく。
 スピードはあるけどスタミナは無い俺は途中からベルガードに抱えられて草原を突っ切り、森へ入る。

「はぁはぁ……ここまで来れば大丈夫だろ……。
アサトは瞬発力と素早さはあるがスタミナはてんでないな」

「あはは……すいません……」

「そんな事よりさっきの魔法凄かったな!
回復出来る奴がパーティーに居るのは安心だ!
凄になアサトは!」

 あぁ……ヨハンに癒やされるとは。
 ベルさんも気が抜けてる。
 だけど直ぐに真剣な顔に戻り、注意する。

「確かに凄いが加減出来ないと人前では使えないぞ。
何もかもが出鱈目だ。
アサト、生きていたいなら死ぬ気でその魔法を制御しろ。
教会のバケモノを倒せるくらいに力をつけるまでは絶対に加護を持ってる事を悟られるなよ。
ヨハンもだ。
死なたくなかったらアサトが加護を持ってる事は絶対に喋るな。
俺達以外に誰かいる場合は魔法の話題も禁止だ。
いいな?」

「わかった。せっかく便利な回復魔法を取られたくないしな!
アサト、俺が強くなって守ってやるよ。
だから楽させろよ!!」

 あぁ……良い子だと思って感動したのに後半ので半減だよ……。
 憎めないけど。

「2、3日は街に戻らない方が良いかもな。
この森で修行してたって事にするぞ。
まあ本当に修行するんだけどな。
それじゃ拠点となる場所を探すぞ。
アサトが回復使えるなら無茶が出来るな?ヨハン」

 ベルさんは凶悪な笑みでヨハンを見て、ヨハンは震え上がっていた。
 生きて帰ってこいよ……ヨハン!

 しばらく奥に進み、少し開けた所に出る。
 近くには沢もあり丁度いい。

「アサトはとりあえず、その特殊な魔法以外を使えるように練習な。
自分の魔力を感じ取れてるからイメージさえしっかりしてればすぐにスキルを取得できると思う。
元素魔法のスキル獲得に励んでくれ。
得意不得意があるから得意な奴を伸ばして特化していくのがいいと思うぞ。
無理に苦手な属性を得ようとすると時間がかかる。
ヨハンは俺と模擬戦だ」

「えぇー!!手加減してくださいよ!?」

 ベルガードとヨハンが軽口を言い合いながら離れていく。

 さて俺は魔法の練習をするか。
 まずは火をやってみよう。
 これが出来るようになれは攻撃でサポート出来るしね。

 イメージ……。
 火の玉が目の前に浮かんでいる……。
 大きさを、熱さを具体的にイメージ。

「ファイアーボール」

 ボッと一瞬燃えて消えてしまった。
 あれー?と思っていると。

〈火魔法を取得しました〉

 頭にアナウンスが流れて、ステータスを確認するとスキル欄に火魔法が追加されている。

 再度頭にイメージをしてみると、今度は呪文が浮かんできた。

《火の玉よ、俺の求めに応え出現せよ ファイヤーボール》

 目の前にイメージ通りの火の玉が出てきて留まっている。
 そして、その火の玉と繋がりを感じる。
 この繋がりのお陰で自由に操れる。

 上に下に、右左、目視出来る範囲なら自由自在だ。
 体の周りを回らせようとしたら背中の所で酷く不安定になって霧散してしまった。

《火よ、目の前の敵を討ち焦がせ ファイヤーボール》

 すると今度は目の前の木に自動的に射出された。
 なるほど。
 これがスキルの補助か。
 便利だな。

 それならあれできるかな……?

 自分が浮かび上がり、自在に空を飛んでいる姿を想像する。
 強く憧れた気持ちを、自由に。
 何者にも縛られない自由な大空へ。

 一瞬浮遊感を感じると、頭にアナウンスが聞こえた。

 浮遊魔法。

 これがあればスタミナ不足での足手まといも解消か?
 ワクワクと頭に自分が浮遊し空を飛ぶイメージをする。

《大空は我が世界、飛翔し自由に飛び回れ フライ》

 フワッと体が浮き上がる。
 不思議な感覚だ。
 自由に空を飛び回れる事に気持ちが開放感に包まれる。

「アハハハハハハハ!!!!
たーのしー!!!」

 俺の様子にギョッとする2人。
 ベルさんはワナワナとなにか震えて、ヨハンは羨ましそうだ。
 俺は二人の前に降り立つ。

「出来ちゃいました」

 テレテレとモジモジしながら冗談めかして言う。

「元素魔法はどうしたー!?
なんで浮遊なんて大魔法を使っている!!」

 怒られてしまった。

 浮遊魔法は魔道士が使う魔法で一般の魔法使いが使えるような簡単な魔法じゃない。
 さらに目をつけられる真似をしてどうするんだ、危機感が足りないぞと大目玉を食らってしまった。
 ごめんなさい、少し浮かれてました。

 ベルさんは「アイツも問題児か」とか「ヨハンよりも扱いにくい」とかブツブツ言っている。

 ……本当にすんません……。


 その後はしっかり練習して属性魔法をちゃんと全部取得しました。






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