僕はスケルトン 〜大賢者の弟子になって、死霊魔法で無双します〜

穂高稲穂

文字の大きさ
2 / 15

2 初めての死霊魔法

しおりを挟む

 大きな扉をリエラティが魔法で開けて蔵書庫に入る。
 ここは特に立ち入りを禁止されていない。
 中は物凄く広く、見上げるほどに高い本棚が沢山あって、膨大な本がある。

「ちょっと待ってて!」

 リエラティはそういうと、ヒラヒラと飛んでいく。
 僕はキョロキョロと周囲を見ながら待っていると、何冊かの本を浮かばせながらリエラティが戻ってきた。

「先ずはこの本から読んで勉強するのが良いかも!」

〝その本は?〟

「魔法の入門書よ! 部屋に戻って読んてみましょう!」

〝うん!〟

 2人で部屋に戻り、机に座って早速1冊手にとって見る。

〝……〟

「どう?」

〝僕……字が読めないんだった……〟

 ずっと畑仕事を手伝ってきて、字を教わったことがない。
 本が読めないことに今更ながら思い出してガックリと頭を垂れる。

「それならそうと早く言いなさいよ! 字は私が教えてあげる!」

 リエラティはそう言って得意げに小さな胸を叩く。

 文字を習い始めてから数ヶ月。
 一通り読み書きが出来るようになった。
 魔法入門書も一人で読めるようになり、魔法の勉強が始まった。
 魔法使いになるには、まず魔力を感じないといけないらしい。

〝う~ん……。魔力ってなんだろう〟

 魔力を感じると言ってもよくわからない。

「ジーナスは胸のあたりに魔石があるから、そこに集中してみて!」

〝うん、やってみる〟

 スケルトンになった時に生成されたのだろう、胸にある灰色の小さな魔石のあたりに手を当てて集中してみる。
 魔石から僅かな脈動と力みたいなのを感じる。
 これが魔力なんだろうか。

〝なんとなく……分かったかも〟

「じゃあそれを動かすイメージしてみて!」

〝うん〟

 再び胸のところに手を当てて、魔石から感じる力を動かすイメージをする。
 いくら試してみても出来ない。
 何日、何十日とやってみても、一向に動かせる気配がない。

〝僕、魔法の才能が無いのかな……〟

「諦めちゃだめよ!! ほらもう一度やってみましょう!!」

〝う、うん……〟

 それからさらに数日して、ようやく少しだけ魔力を動かせるようになった。
 ほんの僅かな魔力が手に集まる。

〝やったああああああ!! 出来たよリエラティ!!〟

「おめでとうジーナス!! それじゃあ次のステップに行きましょう!!」

〝うん!〟

 次は属性変化だ。
 魔力を属性に変える。
 水の魔法を発動する場合には水の属性へと変化させなきゃいけない。
 その前に、自分がどの属性を得意としているのか調べる必要があると入門書に書いてあった。
 属性の調べ方は、水晶に手を置いて、自分の魔力を水晶に触れさせること。

「ちょっと待ってて! 水晶持ってくるわね!」

 リエラティは部屋を出ていく。
 暫くして、透明な水晶を空中に浮かばせて戻ってきた。

「アストーに貰ってきたわよ!」

 水晶を机に置く。

〝ありがとうリエラティ!〟

 僕は早速、水晶に手を置いて魔力を手に込める。
 水晶は僕の魔力を吸収し、中心部が仄かに黒く霞む。

〝これは何属性?〟

 リエラティに聞く。

「お主は闇属性じゃな。まあスケルトンならそうじゃろう」

 背後から声がして、振り返るとお爺さんが居た。

「何やら魔法を勉強してるようじゃな。闇属性ならこれが丁度いいじゃろう」

 お爺さんの手のひらにおどろおどろしい分厚い魔導書が現れて浮かび上がる。
 リエラティがその魔導書の周りを飛び、凝視している。

「これって死霊魔法じゃない。いいの?」

「闇属性なら丁度いいじゃろう。それに、スケルトンならこの魔法とも相性がいい」

「それもそうね!!」

 僕はその魔導書を受け取る。

〝ありがとうございます!〟

「うむ。魔法で自由に遊んでみるといい」

 お爺さんはそう言って僕の頭を撫でると、フッと消えてしまった。
 魔導書の表紙には赤黒い何かで【死叙伝 冥門】と書いてある。
 表紙をめくり、1ページ目を読む。

〝……〟

 内容は難しそうな魔法の事ではなく、物語になっているようだ。
 主人公のネクトマという人が森で巻きを拾っている時に巨大な門に出くわす所から書かれている。
 ネクトマは好奇心からその門を通り抜ける。景色は森の中から一変して仄暗い霧に包まれた荒廃した世界に変わった。
 怖気おぞけを感じて戻ろうと後ろを振り返ると門は消えていた。
 ネクトマはそこで生気を感じられない存在に襲われて、恐れ慄き逃げ惑い、暗い霧の中にほんの少しだけ見える明かりを発見してそこを必死に走る。
 それは小さな小屋で、明かりは小屋の窓からだった。自分以外に人が居ると安堵したネクトマは戸を叩くと中から黒いマントで全身を覆う人が出てくる。
 その人はネクトマを小屋の中に入れて椅子に座らせてくれる。ネクトマはここは何処なのかと尋ねると、冥界だと答えた。自分が冥界に居ることに驚愕し、自分が死んてしまったのかと酷く取り乱したが、その人はネクトマはまだ死んでいないと答える。
 ネクトマは偶然冥界の門を見てしまい、通ってしまった招かれざる存在だと知る。元いた場所に帰りたいというネクトマにその人は無理だと答えた。その人は冥門の番人で亡者を地獄に導く役割しか与えられていないと話した……と書かれている。
 僕はこの物語についつい夢中になってっしまった。
 ネクトマは冥門の番人から冥界と地獄での生き方を教わり、そして生き抜くために死霊魔法を習得したと書いてある。
 死霊魔法については内容が事細かに記されていた。
 長い年月を冥門の番人の小屋で過ごして死霊魔法の基礎を極めたネクマトはようやく冥界を抜けて地獄へと足を踏み入れた。
 ここで物語は終わり背表紙をパタリと閉じる。

「読み終わった?」

 僕の目の間をひらひらと飛ぶリエラティは聞く。

〝うん! 凄く面白かったよ!〟

「そうみたいね! 私が何度も呼びかけたのに無視するくらい面白かったみたいね!」

 ぷんぷんと頬を膨らませて少しいじける。
 本当に夢中になって呼びかけに気が付かなかった。

〝ご、ごめんなさい……〟

 謝る僕にしょうがないわねと腕を組みお姉さんぶるリエラティ。

「死霊魔法の事は何かに分かった?」

〝うん。死霊魔法の基礎について色々書いてあったよ〟

「それならその基礎に沿ってやってみましょう!」

〝うん!〟

 ネクマトが最初に学んだのは死の理解を深め生と死の観念を強く持つこと。
 それについては書かれていたらなんとなくだけど分かる。
 生きていた時は考えもしなかった、死んだ今だから考えられる生きるとはどういう事なのか。
 僕は今、骨となって存在しているけど行きていると言えるだろうか。
 言えない。
 息をすることを出来ない。
 鼓動を感じる事も出来ない。
 風を感じる事も匂いを感じる事も味を感じる事も出来ない。
 ぬくもりを感じる事も涙を流す事も出来ない。
 死んている僕は生きているときに出来ていたことのほとんどが出来ないんだ。
 これが……死んでいるということだ。
 でも、僕は感情はある。
 喜ぶことも悲しむ事も怒ることも出来る。
 ただ灰色の世界に佇むだけの僕じゃない。
 僕は僕として存在出来ることに感謝しなきゃいけない。
 それに、死んだ事によって出来るようになった事もある。
 生きている時には見えなかったものが見えるようになった。
 感じるようになった。
 それが死霊魔法を行う上で最も大事な事だと本には書いてあった。
 次にネクマトが学んだのは死魂の霊火という死霊魔法。
 魂を捕まえて青白い炎を纏わせ周りを照らす魔法。
 この明かりは現実の世界では特に意味はなく冥界を覆う暗い霧を照らして周りを見えるようにする。
 だけど死魂の霊火には熱を奪い精神を蝕む効果もある。
 先ずはふよふよと漂う魂を一柱掴む。
 その魂に自分の魔力を流す。
 特に抵抗されるような感覚は無く僕の魔力が魂を侵食していく。
 魂に僕の魔力が淀み無く交わるとその魂の情報が読み取れた。
 この魂は死んでからかなりの年月が過ぎてるようで、自意識がほとんど無かった。
 そのせいか読み取れる情報はほぼ何もなかった。
 僕は手のひらにある魂に本に書かれていた死霊文字を刻む。
 死霊文字が刻まれた瞬間、魂は青白く燃え盛る。
 魂は不可視のままだけど青白い火は可視化されて周囲の熱を奪う。

「ちゃんと出来たわね! 凄いじゃない!」

 僕の手のひらの上にある青白い火の周りを飛びながら感心して褒めてくれるリエラティ。
 それが凄く嬉しかった。

〝この魔法は精神を蝕むって書いてあったけど蝕むってなに?〟

「少しずつ悪くするって意味よ!」

〝そうなの!? リエラティは大丈夫!?〟

 悪くすると教えてもらい慌てて魔法を辞める。

「ふふん! 私は妖精だから魔法耐性は高いのよ!」

 自慢げに僕の周りを飛ぶリエラティ。
 大丈夫だということでホッと胸をなでおろす。

「もう分かってると思うけど、魔法を発動するにはそれに起因した文字を覚えるのが大丈夫よ! だから魔法使い達は最初に魔法文字を覚えるの。 高位の魔法になるほど魔法文字は複雑になっていくし、特殊な魔法にはそれぞれ特殊な魔法文字が存在する。だからしっかり勉強して覚えるのよ!」

〝うん! 分かった!〟

 初めての魔法を成功させてもっと頑張るぞと意気込み復習した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処理中です...