練習用短編1

シロクマ

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フラレ愛

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「…待ってっ!行かないでっ!」
私は走り去る彼の背に向かって必死に声を振りしぼり叫ぶ。
「待ってよ!私を置いていかないでっ!」
「…………………」
「ねぇ!返事をしてよ!」
「…………………」
「ねえってば!ねぇ!」
彼は私に返事もせず私から遠ざかろうと腕を振り走る。
その遠ざかる背中に話さまい、追いつこうと必死に追いすがる。
が―やはり男女での体の違いか彼は私を置いてどんどん遠くへ消えていく。
やがて彼の背が見えないほど遠ざかって行ったのを確認して私は必死に動かしていた足を止めた。
踵が高い靴を履いて走っていたので足が痛い。
走りなれていない体で無理やり力を振り絞って走ったので横腹が痛い。
呼吸がうまくできなくて胸が苦しい。
でも―足より、横腹より、胸より、
彼に見放されたことが何よりも辛い。
心が痛い。
空耳か―心がバキバキと悲鳴を上げているのが聞こえる気がする。
ああ―行かないで。
私を置いていかないで。
あなたがいない人生なんて、何を生きがいにして生きていけばいいの?
ああ―私が何かしたなら謝るから。
どうか、どうか、私のもとに戻ってきて。
ああ―神様、どうか私から彼を奪わないで。
ああ―「この世界で一番不幸なのは誰だと思いますか?」
今誰かにこう聞かれたら確実に言えるわ。
―それは、私よ。
ああ―あなた。
ずっとあなたが大好きよ。
でも、あなたは私が嫌いみたい。
じゃあ、そんなモノはこの世から無くさなくっちゃ。
あなたの嫌いなものは私がどうにかしてあげなくっちゃね。
ああ―あなた。
一生愛しているわ。
大好きよ。

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