絶対呪ってやるからな!

こう

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93 改めまして…説明しろ

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 テラスで休もうと宣言した通り、私とスタンは夜会の会場から一歩離れてテラスに出た。

 シャンデリアの輝きから離れて、ちょっと外が見えるだけで別世界みたいに静かに感じる。それでもテラスと会場の間にはカーテンがあるだけ。どこで誰に見られているかもわからない。
 だけど不思議なもので、テラスに出れば人は近寄ってこない。私の知らない暗黙の了解があるのか、警備の人もテラス側に立たず会場側に立っていた。

 外の空気を感じて、張り詰めていた肩から力が抜ける。思ったより緊張していたらしい身体がへろりと揺れて、私はテラスの縁に手をついた。ひんやりしている。

「公爵の方から近付いてきてくれてよかったね。近いうちに招待されそうだ」

 傍に立つスタンがあっさりしているので、これで夜会に出た目的が達成されたことに気付く。
 え、あっけない。
 というか…。

「本当にあっちから声を掛けてきたわ…」
「誰、じゃなくてどこ、と聞いてきたから公爵もメイジーを知っていたのかな。じゃなければ最愛の妻に似た娘を見てもっと取り乱していたはずだし」
「そうかしら。世の中には似た顔が三人はいるっていうし、そこまで気にしないんじゃ…」

 言いながら思い出した。
 ここにスタンという名のトリスタン王子がいるらしいこと。
 似た顔じゃなくてこっちはご本人。
 先程から身分詐称問題をのらりくらりされていることを思い出す。

「それよりトリスタンってどういうことよ!」

 ダンス中も問い詰めたけれどもう一度噛みつく。
 詰め寄ってきた私を受け止めて、スタンは微笑みながら首を傾げた。三つ編みに結われた金髪の、こぼれた髪がさらりと揺れる。

「そっちの名前を呼び捨てにされるのは新鮮だな。もう一回呼んで?」
「誤魔化すな! アンタずっと私を騙してたってこと? 国の王子様が庶民相手になんてことを」
「言っていなかっただけで騙してはいないよ。僕の愛称はスタンだし、身分を明言したことはないし、僕が「塔」に所属しているのは本当のことだ。メイジーを保護したのも、協力したのも僕の意思。何も騙してない」

 微笑みながら、諭すように告げられて考える。
 確かにスタンは明言しなかった…自分が何者であるのか、身分ある立場であることをほのめかす程度で、明言を避けていた。明言したのは「塔」に所属していることくらい。

 …確かに嘘は言っていない…?

(…いいえ! 誘導しているわ!)

 スタン悪くない説に一瞬でも傾きかけた思考をぶん殴って矯正する。私はキッと目元に力を込めた。

「意図して言わなかったなら騙しているのと同じよ!」
「そうか…ごめんね。流石に萎縮しちゃうかなぁと思って。エヴァも、王女ですって伝えたら恩人にお礼を言うどころじゃなくなると気遣って黙っていたんだ。あの子は許してあげて」

 確かに、最初から王族ですと言われたら、お礼がどうのと言われても仰天してそれどころではなかったかもしれない。

 いやでも…萎縮…したかしら。
 もうかなり打ち解けた状態だからスタンはスタンだしエヴァはエヴァだと思ってしまうけれど、初期で伝えられたら流石に萎縮するわ…よね? 私そこまで無礼者じゃない…はずよ!

 …ちょっと自信がなかった。私ってば無礼者かもしれない。

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