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しおりを挟む「実はあの子が呪われるのはあれが初めてじゃない」
「は?」
「何度も何度もあの子を呪う奴がいてね。あの子が親元を離れて僕と二人で生活しているのは、避難の意味がある」
「何よそのふざけた奴。というか相手がわかっているのに放置なの?」
「放置はしていない。だけどしぶとくてね」
「一発ぶん殴れない相手なわけ?」
「考えたこともなかった。今後機会があったら殴ってみようかな。メイジーを見ていると一発ぐらいなら許される気がしてくるし」
「どういう意味よ。でもおすすめしとくわ」
「おすすめすんな大問題だ」
なによ、言って聞かないなら実力行使でしょ。それでもわからないなら排除するしかないわ。
…だけど、妹大好きなスタンが何度も呪われるのを防げないってことはあまり手を出せない相手…ってことよね。放置はしていない、しぶといってことは色々しているはず。それでも懲りないってことは相当しつこい。
とにかくエヴァが呪われなくてよかった…。
「いえ、よくないわ」
「ん?」
「エヴァに被害がなかったのは勿論よかったけど私が呪われてんのよ。何もよくないわ」
「そうだね」
そう、何もよくない。
イライラしてきたわ!
私は強く拳を握り、布団をバフバフ叩いた。
「こうなったらどんな手を使ってでも犯人をあぶり出して火あぶりにしてついでに呪ってやらなくちゃ…!」
「拷問はじめるな」
モーリス煩い! 呪い常習犯ってことは犯罪者でしょうが! 容赦するな! 犯罪者に!
勿論私が違法行為したら容赦しないで頂戴! 全力で来い!
「っく、はは!」
「何笑ってんのよ! こっちは真剣よ!」
「真剣にやめろ…」
吹き出すように笑い出したスタンを睨む。
「あんた達も色々事情があるんだろうけど、知らないわよそんなこと。結果的に私が呪われたんだから私の敵よ。お母さんの件が片付いてから呪ってやるんだから!」
「ああ、そこはきちんと順序立てるんだ?」
「二兎を追う者は一兎をも得ずって猟師のボブが言っていたわ!」
心を込めて一兎を狙えって言ってた。一兎を狙っているときに他の兎のことは考えるな。狩る相手に不誠実だって。
その教えに則って、私は今狙っている獲物から目を離す気はないわよ…!
だから何笑ってんのよスタン! 失礼な奴ね!
「泣き寝入りなんか絶対にしないわ。私を呪ったこと…いえ、エヴァを呪い続けたことを後悔させてやる…!」
「心強いなぁ」
くくくっと堪えきれない笑いを零しながら、スタンは布団を叩き続ける私の手を包み、布団に降ろした。気は済んでいなかったけれど、埃が舞うだけだからやめることにする。
あとひたすら柔らかくて衝撃が吸収されて終わった。全然殴っている感覚なかった。全力で受け止められたわ。どれだけ包容力があるのこの布団。
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