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◯月×日『風邪』
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花火大会の日、急に雨にふられて風邪を引いてしまった。
怠い体のまま学校に行くと、やっぱり悪化してしまって、授業中気が遠くなった。
ふと落ちていた瞼を持ち上げると、教室とは違う景色があった。
同時に薬品の匂いもして、そこが保健室だと気付く。
瞳だけ動かすと、視界に矢野くんが映った。
「熱。38度もある」
そう言って額の汗を拭ってくれる。
「珍しく寝てんのかと思えば気失ってるしよ」
「ぇ…?」
教室でのあの気の遠くなるような感覚…。
どうやら気を失った僕を矢野くんが保健室まで運んでくれたみたいだ。
「ぁ、ありが…」
「行ったのか?昨日」
お礼の言葉を矢野くんが遮る。
僕がその質問に小さくうなづくと、矢野くんは大きくため息をついた。
「バカじゃねーの」
「…、ぇ」
「シカトしてんの知ってたろ。」
「……」
「それで雨に降られて風邪ひいたって馬鹿だろ」
「…矢野く…、」
「ウザいから。そーゆうの。もうやんなよ」
矢野くんは言うだけ言うと、保健室から出て行った。
僕はただ矢野くんが出て行った戸を見つめながら唇を噛んだ。
噛み締めてないと、潤んできた瞳から涙が零れそうだったから。
「…っ……」
楽しみにしてた。
年に一度しかないその日を矢野くんと過ごせたらって…
たとえ一緒に見れないってわかっていても、どこかで矢野くんも同じ景色を見てるならって…
ほんと、馬鹿みたい。
怠い体のまま学校に行くと、やっぱり悪化してしまって、授業中気が遠くなった。
ふと落ちていた瞼を持ち上げると、教室とは違う景色があった。
同時に薬品の匂いもして、そこが保健室だと気付く。
瞳だけ動かすと、視界に矢野くんが映った。
「熱。38度もある」
そう言って額の汗を拭ってくれる。
「珍しく寝てんのかと思えば気失ってるしよ」
「ぇ…?」
教室でのあの気の遠くなるような感覚…。
どうやら気を失った僕を矢野くんが保健室まで運んでくれたみたいだ。
「ぁ、ありが…」
「行ったのか?昨日」
お礼の言葉を矢野くんが遮る。
僕がその質問に小さくうなづくと、矢野くんは大きくため息をついた。
「バカじゃねーの」
「…、ぇ」
「シカトしてんの知ってたろ。」
「……」
「それで雨に降られて風邪ひいたって馬鹿だろ」
「…矢野く…、」
「ウザいから。そーゆうの。もうやんなよ」
矢野くんは言うだけ言うと、保健室から出て行った。
僕はただ矢野くんが出て行った戸を見つめながら唇を噛んだ。
噛み締めてないと、潤んできた瞳から涙が零れそうだったから。
「…っ……」
楽しみにしてた。
年に一度しかないその日を矢野くんと過ごせたらって…
たとえ一緒に見れないってわかっていても、どこかで矢野くんも同じ景色を見てるならって…
ほんと、馬鹿みたい。
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