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○月×日『無害or』
しおりを挟む『将平は元気?』
「はい、お仕事が始まって帰りが遅いですけど、疲れた様子はなくて、仕事を楽しんでるって感じがします」
『そっか、楽しんでるのか』
こうして2日に1度は電話で将平くんの近況報告をする。
電話相手は柳一志さんだ。
初めて彼に連絡した日から、こんなやり取りが続いてる。
彼に将平くんの近況を伝える度に、将平くんを裏切ってる気がしたけど、背に腹はかえられなかった。
『通訳か……海外留学までしたんだもんな。』
柳さんは、しみじみと言った感じで話す。
どうやら、翔平くんと別れたあとのことは本当に何も知らないらしく、僕が思うに将平くんと柳さんは、言葉が足らなかっただけで、話せば分かり合えるのでは……と思えてしまう。
現に、柳さんとの電話で、彼は必ず最初に将平くんが元気か聞く。
なんとも思ってない人の様子を聞こうなんてしないし、元気かどうかも知らないってことは、将平くんが警戒しているような、近辺を彷徨いたりはしてないってことだと思う。
でも柳さんが過去に将平くんを傷つけたことがあるのは事実だから、この程度のことで警戒はといちゃいけない。
僕を油断させる気なのかもしれないし、僕は弱みを握られて脅されているって事を忘れちゃいけない。
こんな手段を取ってくるような人なんだから……
「仕事相手の方に先日会ったんですけど、いい人そうでした。大学の先輩だったみたいで、仲も良さそうでした」
『大学?仲いいって……男か?』
「え、はい…」
何か変なことを言っただろうか。
仕事相手が友達のような関係だから、将平くんは仕事しやすいだろうし、いいことだと思うと伝えたかったんだけど……
『どのくらい仲がいいんだ?きみより上?下?』
「え?」
上?下?
仲の良さの上、下てなんだろう。
将平くんとは、お兄ちゃんと弟て感じだと思う……今は。
体の関係があったから、濃密差で言ったらルーカスさんより僕の方が上……?
でも将平くんとルーカスさんのこと詳しく知らないし……
将平くんは男性は柳さんだけだと言ってたし…
けど、これを言ったら柳さんを変に期待させてしまいそうだ。
どう答えるのが正解なのか分からない。
僕が答えに迷って黙ってしまうと、電話の向こうで小さくため息をつく仕草が聞こえた。
『きみより上なんていないか。』
「……、」
やっぱりただの友達としての"仲"という意味ではなかったということだ。
僕が答えるまでもなく、柳さんは答えを導き出したようだった。
「あの、1度会っただけなので、詳しく知らなくて…」
『じゃあ、次の連絡までにその男のこと詳しく。』
「えっ?」
ルーカスさんと僕に接点なんて、ない。
あっちは社長さんで僕は庶民だ。
たまたま将平くんの紹介で食事しただけだ。
詳しく探りようがない……
しかも次の連絡までって、期間が短すぎる。
唯一の接点である将平くんに根掘り葉掘り聞いたとして、絶対怪しまれるに決まってる。
「あの、僕ルーカスさんとの接点ないんで、難しいと思いま……」
『ルーカス?外人かよ。』
しまった…
焦って名前を出してしまった。
『そのルーカスてやつに跨ってでも聞き出せよ。』
「……っ、」
『恋人の兄貴に股開くくらい尻軽なんだから簡単だろ?』
「……、」
『じゃ、2日後。』
そう言って通話は切れた。
柳さんのあまりに横暴な言葉にショックで言葉が出ないうちに切られてしまった。
胸がザワザワして落ち着かないけど、通話履歴を削除するのだけは忘れずに行う。
柳さんのカモフラージュのために、クラスに1番多い"高橋くん"という名前で登録してある。
万が一、着信を誰かに見られても怪しまれないためだ。
前に篤也さんとのことで不振な態度をとった僕を怪しんで、矢野くんが僕のスマホを奪ったことがあった。
だから念入りに対策しておく。
柳さんと連絡をとり始めて、ただ近況報告をするだけだったから安心に近いものを感じてた。
けど、今日、話し始めた時とは天と地ほどの温度差で通話が終わった。
別人かと思うほど言葉使いも悪くて、そんなに悪い人ではないんじゃ……という考えは打ち消された。
怖い。
どうしよう。
2日。
2日しかない。
何か、少しでもいいから情報を得なきゃ……
"A bientôt"
ルーカスさんの言葉を思い出す。
それはきっと社交辞令だろうけど、今はそれに縋るしかない。
覚悟を決めて、スマホの電話帳を開き、将平くんの名前をタップした。
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