ヤノユズ

Ash.

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○月×日『Too late④』

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学校から帰宅して、真っ直ぐ部屋へ向かった。
鞄を置いて、ベッドに腰かける。
スマホを握って、連絡帳から"高橋くん"を探す。

将平くんのためになにかできないかと考えて、僕と矢野くんは特にいい案は思いつかなかった。
けど、矢野くんには言えなかったけど……ルーカスさんなら力になってくれると思った。
矢野くんはあの食事の時のルーカスさんしかしらないけど、僕は一人で彼に会いに行った時、味方になればかなり心強いと思ったからだ。
けど、彼に助けを求める前に、将平くんが言ったことの確証がほしかった。
将平くんが嘘をついているのは明らかだからだ。
全部が嘘じゃないのはわかる。
けど、どこからどこまでが嘘なのか……
柳さんへの定期連絡が途絶えたのも、途絶えたのに矢野くんが普段通りなのも、将平くんの言っていることが事実という事にはなる。
でも、僕にはそれだけで安心できない理由がある。
柳さんが持ってる写真だ。
あれは僕と柳さんだけが知りえてること。
将平くんが柳さんと話をつけたとしても、将平くんは知らないんだから、データは消されていないってことだ。
あれが無くならない限り、僕に自由はない。

スマホをスワイプして"高橋くん"をタップした。
コール音がなる。
毎回柳さんとやりとりするときは、緊張で心臓が飛び出そうなくらい高鳴る。
電話に出てもらえないと話にならないけど、コール音が止まる瞬間は本当に怖い。

「はい?」

コールが止み、柳さんの声が聞こえる。

「あ、……今、お電話大丈夫ですか?」

明らかに声は震えてるけど、慎重に言葉にする。

「いいけど。…………なぁ、将平にきいてないのか?」

「え?」

僕が本題を話し始める前に、柳さんが問いかけてくる。

「……将平くんに?」

「ああ、将平と話したからもうきみらには関わらないから。」

話した……?
将平くんと柳さんが話し合ったのは本当てことだ。
ただ柳さんは"和解"とは口にしてない。

「……あの、でも……写真……」

「あれも消したから。もう必要なくなったし」

「え」

消した?
本当に?
なんで?
信じていいんだろうか……
でも、必要なくなったって、どういうこと……?
写真は"脅す"ためのものだった。
別の"なにか"を見つけたってことだろうか?

「……なんで、消してくれたんですか?……僕、全然役に立ってないですよね……?」

「まぁそうだけど。」

会話で確信に誘導するには無理があるかも……。
正直に、聞くべきかもしれない。

「……将平くんと、何話したんですか?将平くんからは和解したとしか聞いてなくて……。……写真のことも、本当に柳さんを信用していいんですか……?」

ここまでハッキリと言って、答えが返ってこなかったらどうしていいかわからない。
なにか1つでも信じさせて欲しい。

「……将平と何を話したかは言えない。それは俺と将平だけの秘密だから。写真はな、将平の名誉にも関わることだから漏らしたら俺が将平に嫌われる。まぁだから、最初からきみ以外に見せるつもりはなかったってことだ。思ったより役に立たなかったから消去した。バックアップもない。きみにももう用はないから、この番号も削除しとけよ。俺もこの通話を切ったら消す。……もういいか?」

「ぇ……」

すぐに処理しきれない。
けど、写真のことについてはなんとなく納得出来るかもしれない。
確かに写真が漏れたら、将平くんの名誉にも関わる。
柳さんが将平くんを好きなら、そんなことしたら嫌われるのは分かりきったことだから、絶対しないはず……。

「……きみ、馬鹿だよな。」

「え?」

急に何……

「じゃなかったら天然か?いややっぱ馬鹿か。普通慕ってる人間のことペラペラ話さないって。将平の心配してるつもりだろうけど、ちょっと脅されたくらいで将平のこと俺にリークしちゃうしな。自分が可愛いだけなら余計なことはせず大人しく弟に可愛がってもらっとけよ。間違ってももう将平に手出すなよ。俺の事信用できないんだろうがな、こっちも頭の悪いやつ手駒にするつもりもないから。だからマジで、これが最後な。」

ここで、通話が切れた。

すごく一方的に、終わった。
しかもすごくバカにされた……
けど、事実だ。
将平くんのこと裏切っといて、今更心配なんて……おかしな話だよね。
写真のことだって、将平くんには相談すれば良かったんだ。
自分でもわかってはいた。
僕は、自分のことしか考えてないって……
わかってはいたんだ。
いつも言い訳して、守ってもらって……
今だに矢野くんに将平くんとの事話せてないし、もう僕だけの問題じゃなくなってしまってる。

柳さんは正しい。

僕は本当に、大馬鹿者だ……。
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