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〇月×日『大事にしたい』
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「今どき小学生でもこの時間には寝ないだろ」
夜、ノックもなしに部屋に入ってきたのは矢野くんだった。
僕は布団の中から顔を出して矢野くんを見上げた。
「……さ、寒いから……」
「お前の部屋暖房置いた方がいいぞ」
そう言うと、矢野くんは僕をベッドの端に追いやって自分も布団の中に潜り込んでくる。
「ぇ、なに……」
「寒いから?」
「……、」
だからってシングルベッドに男2人は狭い。
というより、この矢野くんの行動、良くないんじゃないだろうか。
「……矢野くん、誰にでもこんなふうにしない方がいいよ?」
「お前にしかしねーよ」
「……、……先輩は、嫌がるんじゃないかな…」
「今更お前相手に嫉妬なんかしないって」
僕だったら絶対にするけど。
「……何か用があるの?」
気を取り直して尋ねると、矢野くんは珍しく口篭った。
「…………お前さ、俺のセックスどうだった?」
「…………。ぇ、……えっ?」
思わず赤面してしまった。
まさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなくて、顔が熱い。
「なぁ、どうなんだよ」
恥ずかしくて布団を頭までかぶると、呆気なく矢野くんに剥がされる。
おずおずと矢野くんを見上げると、矢野くんも照れくささが無いわけでもなさそうで、少し耳が赤く染まってる気がした。
「……なんで急に、そんなこと聞くの……?」
「…………………………別に。なんとなくだよ」
ものすごい間があった。
僕に言いづらい理由?
簡単に想像がついてしまった。
「先輩に何か言われたの?」
矢野くんの蒼い瞳が揺れる。
図星なんだろう。
「いいよ、話して?」
どんな内容にせよ、矢野くんが僕を頼ってくれることなんて珍しいんだ。
傷つくとわかっていても力になってあげたい。
「今まで、相手を良くしようと思ったことなかったから、気になって」
「……先輩のこと、大事なんだね」
「当たり前だろ。」
「…………あの、大丈夫だとおもう…」
「大丈夫て?良いってことか?」
「んー……悪くはない……?」
「はぁっ?」
矢野くんが勢い良く起き上がる。
「矢野くんっ、ざ…雑だから……」
「雑!?」
まずい。
何を言ってもダメな気がしてきた。
「どこが雑なんだよ」
矢野くんは半分くらいキレてる。
「……ぜ、前戯とか?」
「……、」
矢野くんは信じられないものを見た、と言いたげな顔で僕を見下ろして、長いため息をついた。
「マジかよ……」
「もうちょっと、優しくして欲しいと思う……、矢野くんについていけなくて、待ってほしいなって思う時があったから……」
「………待ってほしい、か………そういや、あの人も言ってた」
「え?」
「いや、……なるほどな。わかった。」
自分の中で何か納得したようで、矢野くんは数回頷くとまた布団の中に潜り込んだ。
「ぇ、帰らないの?」
「寒いし、面倒だから泊まってく」
…………いいのかな。
先輩を大事にしたくて僕に聞にくい話を聞きに来たのはいいけど、この状況を先輩はよく思わない気がする。
幼馴染みだけど、僕は矢野くんが好きだ。
矢野くんはやましい気持ちがなくても、僕達の間には確かに肉体関係があった。
先輩はそれを知ってる。
篤也さんと3人で共同生活をしている時のことがあったんだ、よくは思わないはずだ。
「……、」
布団から出て、クローゼットから布団を引っ張り出す。
「ゆず?」
矢野くんが布団から顔を出す。
「矢野くんはそこで寝ていいよ。僕はこっちで寝るから」
床に布団を敷いて、横になる。
掛け布団を肩までかけて寝の体勢にはいるが、矢野くんが体を起こして僕を見下ろす。
「一緒に寝ればいいだろ」
「……駄目だよ。」
「なんで。」
「先輩嫌がるよ?大事にしたいんでしょ?」
「……」
矢野くんは少し考えたあと、横になった。
どうやらわかってくれたみたいだ。
「おやすみ、矢野くん」
「……おやすみ」
同じ部屋なのに同じ布団で寝ないのは初めてかもしれない。
でも、これが正しい。
ただの幼馴染みなんだから。
夜、ノックもなしに部屋に入ってきたのは矢野くんだった。
僕は布団の中から顔を出して矢野くんを見上げた。
「……さ、寒いから……」
「お前の部屋暖房置いた方がいいぞ」
そう言うと、矢野くんは僕をベッドの端に追いやって自分も布団の中に潜り込んでくる。
「ぇ、なに……」
「寒いから?」
「……、」
だからってシングルベッドに男2人は狭い。
というより、この矢野くんの行動、良くないんじゃないだろうか。
「……矢野くん、誰にでもこんなふうにしない方がいいよ?」
「お前にしかしねーよ」
「……、……先輩は、嫌がるんじゃないかな…」
「今更お前相手に嫉妬なんかしないって」
僕だったら絶対にするけど。
「……何か用があるの?」
気を取り直して尋ねると、矢野くんは珍しく口篭った。
「…………お前さ、俺のセックスどうだった?」
「…………。ぇ、……えっ?」
思わず赤面してしまった。
まさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなくて、顔が熱い。
「なぁ、どうなんだよ」
恥ずかしくて布団を頭までかぶると、呆気なく矢野くんに剥がされる。
おずおずと矢野くんを見上げると、矢野くんも照れくささが無いわけでもなさそうで、少し耳が赤く染まってる気がした。
「……なんで急に、そんなこと聞くの……?」
「…………………………別に。なんとなくだよ」
ものすごい間があった。
僕に言いづらい理由?
簡単に想像がついてしまった。
「先輩に何か言われたの?」
矢野くんの蒼い瞳が揺れる。
図星なんだろう。
「いいよ、話して?」
どんな内容にせよ、矢野くんが僕を頼ってくれることなんて珍しいんだ。
傷つくとわかっていても力になってあげたい。
「今まで、相手を良くしようと思ったことなかったから、気になって」
「……先輩のこと、大事なんだね」
「当たり前だろ。」
「…………あの、大丈夫だとおもう…」
「大丈夫て?良いってことか?」
「んー……悪くはない……?」
「はぁっ?」
矢野くんが勢い良く起き上がる。
「矢野くんっ、ざ…雑だから……」
「雑!?」
まずい。
何を言ってもダメな気がしてきた。
「どこが雑なんだよ」
矢野くんは半分くらいキレてる。
「……ぜ、前戯とか?」
「……、」
矢野くんは信じられないものを見た、と言いたげな顔で僕を見下ろして、長いため息をついた。
「マジかよ……」
「もうちょっと、優しくして欲しいと思う……、矢野くんについていけなくて、待ってほしいなって思う時があったから……」
「………待ってほしい、か………そういや、あの人も言ってた」
「え?」
「いや、……なるほどな。わかった。」
自分の中で何か納得したようで、矢野くんは数回頷くとまた布団の中に潜り込んだ。
「ぇ、帰らないの?」
「寒いし、面倒だから泊まってく」
…………いいのかな。
先輩を大事にしたくて僕に聞にくい話を聞きに来たのはいいけど、この状況を先輩はよく思わない気がする。
幼馴染みだけど、僕は矢野くんが好きだ。
矢野くんはやましい気持ちがなくても、僕達の間には確かに肉体関係があった。
先輩はそれを知ってる。
篤也さんと3人で共同生活をしている時のことがあったんだ、よくは思わないはずだ。
「……、」
布団から出て、クローゼットから布団を引っ張り出す。
「ゆず?」
矢野くんが布団から顔を出す。
「矢野くんはそこで寝ていいよ。僕はこっちで寝るから」
床に布団を敷いて、横になる。
掛け布団を肩までかけて寝の体勢にはいるが、矢野くんが体を起こして僕を見下ろす。
「一緒に寝ればいいだろ」
「……駄目だよ。」
「なんで。」
「先輩嫌がるよ?大事にしたいんでしょ?」
「……」
矢野くんは少し考えたあと、横になった。
どうやらわかってくれたみたいだ。
「おやすみ、矢野くん」
「……おやすみ」
同じ部屋なのに同じ布団で寝ないのは初めてかもしれない。
でも、これが正しい。
ただの幼馴染みなんだから。
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