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第一章
学校で虐められている僕ですが、何故か妹に過保護にされています
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車から降り、僕はすぐに教室に向かう。理由は、物を隠されない様にするためだ。
こうならないためにも、探知魔法というのもあるが……勿論僕は使えない。だからこうして対策をしている。
まぁ、だから物を隠せるんだろうけど……でも、これだけ対策しても十分とはいえない。何かしらの魔法でやられてしまうのだから。
それだけ魔法が便利という事だ。これは僕が一番知っていることだ。
……教室に行くと、誰もいない。まぁ、基本的に誰もいないであろう時間に来ているのだから、当然ではある。
……今日の授業は、座学だけか。
授業は、僕にとっては面白くも、つまらないといった感情だ。大抵の事は家にある本に書かれてるし、魔法実習は参加できないし……いや形だけ参加はするんだけど。
……今日の放課後は、どう過ごそうかな。
そんなことを考えているうちに、教室内に人が集まってきた。
けれどいつもより違うところがある。皆僕の方を見てなにか言いたそうにしてはいるが、何も言ってこない。いつもは何かしら言ってくるのに……。
そんなとき、急に肩を叩かれた。
「やぁ落ちこぼれ。なんで君は今日も生きているのかな?」
「サルサ……」
サルサ・ヴォーン。リュアレ家に負けず劣らずの名家だが、毎回リュアレ家の影に隠れている。サルサは、そんなヴォーン家の跡取りとして将来有望とされている。
「全く……君が羨ましいよ。だって君は家で期待なんてされてないから、自由な道を選べるじゃないか。ま、この国では君は全く働けないだろうけど!」
「あはは……」
僕は笑って返すしか無かった。
「まぁ安心しなよ、僕が君の代わりになってあげるからさ」
「……まだ、それ言ってるのか」
「当然じゃないか!だって俺は……と、もうすぐ授業時間だ。邪魔したね、落ちこぼれ」
彼は笑いながら自分の席に戻った。
……先程までの光景を、一人の少女が見てると知らないまま……。
◇ ◇ ◇
今日は珍しく、誰も虐めてこなかったな……いつもなら、休み時間に入るたびにやってくるのに……。
いつの間にか時間は放課後。僕は今図書室に向かっている。
この学校の図書室は特殊で、魔法を練習する場所がある。無意味だと分かっていても、僅かな可能性に掛けて僕は放課後、こうして暇があったら練習している。
……にしても、流石に静かすぎる……部活があったとしても、いつも図書室付近は人がいるのに……。
まぁ良いか。誰にも邪魔されないと考えれば楽なものだ。
そうして図書室まで向かう途中、背中に激痛が走った。
「がっ……?」
痛みの原因は分からない。熱くて痛い……まさかこれは……魔法?
「うーむ!やっぱり俺は天才だ!こんな魔法、習ってなくても独学で撃てるんだ!」
「サルサ……」
「ほーう?まだ立ち上がるか……魔法フィルターもないくせに!」
魔法フィルター。それは魔法の威力を弱めるもの。この学校に通う人たちは、皆入学時にこの魔法を習う。だが、もちろん僕は使えない。
「さっさと沈め!ブラストバーン!」
目の前に見えたのは、炎、そして爆発。日常で見ないそれは、確かに人の命を奪うのに適している。
魔法が目の前に迫るときに僕は思い出した。どうして人がいないのかを……それは、サルサの結界魔法だ。
サルサの結界魔法は、対象を中に閉じ込め、周りから見えなくさせるもの。もちろん、中に入った人も外を見ることは無い。
サルサの放った魔法がぶつかる。あまりの痛みに僕はその場に倒れ込んだ。
「ひゃはは!お前はこの天才魔法士サルサ様にやられるんだ!むしろ感謝してほしいものだな!」
サルサが吠える。意識が薄れる。感覚が無くなる。
……もう駄目なのだろうか。僕は、もうこのまま……。
「ヒールシャワー」
その時、鈴のような、優しい声が聞こえた。雨……その雫に触れた場所が、みるみる内に治っていく……完全とは、いかないけれど。
それでも、充分だった。
僕は目の前に現れた少女の名前を呼ぶ。
「レネ……」
レネ・リュアレ。僕の妹で、結界と、回復魔法の天才だ。そうか、だからサルサの結界にも入ってこれたのだろう。
「お兄様……」
レネが僕を呼ぶ。その瞳は、悲しそうな目をしていた。
「おお!レネではないか!お前ならばこの結界も通れることは想定済みだ。やはり君とは運命のようだね……」
「……」
レネは、一体何を考えているのだろうか。何も喋らず、ずっと僕を見つめているだけだ。
「ふふ……そんな情熱的な目で僕を見て……君の考えている事は手にとるように分かるよ!俺と最高の時間を過ごしたいのだろう?でも今はこの落ちこぼれがその場所を占拠してしまってる……分かる、分かるよ」
サルサは一呼吸置いて、今度は僕の髪を掴みながら叫ぶ。
「おい落ちこぼれ。あの世で安心しろ。これからは俺がお前の変わりになってやるからさ!レネと共にな!」
「お前……!」
そう。サルサは本気なのかはどうか知らないが、レネの事が好きだ。良く、レネと結婚して、僕の変わりになると息巻いていた。
けれど……僕はそれを拒んでいた。レネの将来を勝手に決めてほしくなかったから。
こんな僕でも兄と呼んでくれる優しい子を、こんなやつなんかに渡すつもりはない。僕だって、兄としてのプライドがあるのだ。
「そんなこと……させるか……!」
「はぁ……もう耳障りだ。さぁ、俺の愛しきレネ。お前の手で、お前の家の恥晒しを倒すのだ」
そう言ってサルサは僕を魔法で空中に固定する。いわゆる貼り付けというやつだ。
「そうですか……なら」
レネは、そう呟いた。そして、手に持っている杖に魔力が集まり、氷の槍を作り出した。
「ブリザーランス」
氷の槍は、一直線に獲物に向かって発射される。しかし、レネの狙いは僕では無く……。
「……は?」
サルサの頬を掠め飛んでいった。その頬からは血が出ている。
「私の中の恥晒しを滅するとしますかね……えーっと……サウサさん?」
「な……あ……」
サルサは、想い人に名前を覚えてられていないショックと先程の魔法の事で気絶した。その瞬間、結界が解除される。人がいないのは変わらずだったが、部活に励む声が聞こえてきた。
その瞬間、レネが僕を抱きしめた。
「お兄様!大丈夫ですか!今回復魔法を掛けてあげますね!」
「いや……良いよ。もう動けるし……痛てて……」
「ほら!やっぱり無理して……全然大丈夫なんかじゃないですか!」
「僕なんかに魔法使うよりいいだろ?」
「ああもう……またそう言って……え?回復魔法が効果ない……」
「あー……まぁ爆発の魔法だったしねぇ……でも体は動くからいいだろ?」
「良くはありません!早く病院へ行きましょう!さぁ!早く!」
学校で虐められている落ちこぼれの僕は、何故か妹にすっごい過保護にされています……。
こうならないためにも、探知魔法というのもあるが……勿論僕は使えない。だからこうして対策をしている。
まぁ、だから物を隠せるんだろうけど……でも、これだけ対策しても十分とはいえない。何かしらの魔法でやられてしまうのだから。
それだけ魔法が便利という事だ。これは僕が一番知っていることだ。
……教室に行くと、誰もいない。まぁ、基本的に誰もいないであろう時間に来ているのだから、当然ではある。
……今日の授業は、座学だけか。
授業は、僕にとっては面白くも、つまらないといった感情だ。大抵の事は家にある本に書かれてるし、魔法実習は参加できないし……いや形だけ参加はするんだけど。
……今日の放課後は、どう過ごそうかな。
そんなことを考えているうちに、教室内に人が集まってきた。
けれどいつもより違うところがある。皆僕の方を見てなにか言いたそうにしてはいるが、何も言ってこない。いつもは何かしら言ってくるのに……。
そんなとき、急に肩を叩かれた。
「やぁ落ちこぼれ。なんで君は今日も生きているのかな?」
「サルサ……」
サルサ・ヴォーン。リュアレ家に負けず劣らずの名家だが、毎回リュアレ家の影に隠れている。サルサは、そんなヴォーン家の跡取りとして将来有望とされている。
「全く……君が羨ましいよ。だって君は家で期待なんてされてないから、自由な道を選べるじゃないか。ま、この国では君は全く働けないだろうけど!」
「あはは……」
僕は笑って返すしか無かった。
「まぁ安心しなよ、僕が君の代わりになってあげるからさ」
「……まだ、それ言ってるのか」
「当然じゃないか!だって俺は……と、もうすぐ授業時間だ。邪魔したね、落ちこぼれ」
彼は笑いながら自分の席に戻った。
……先程までの光景を、一人の少女が見てると知らないまま……。
◇ ◇ ◇
今日は珍しく、誰も虐めてこなかったな……いつもなら、休み時間に入るたびにやってくるのに……。
いつの間にか時間は放課後。僕は今図書室に向かっている。
この学校の図書室は特殊で、魔法を練習する場所がある。無意味だと分かっていても、僅かな可能性に掛けて僕は放課後、こうして暇があったら練習している。
……にしても、流石に静かすぎる……部活があったとしても、いつも図書室付近は人がいるのに……。
まぁ良いか。誰にも邪魔されないと考えれば楽なものだ。
そうして図書室まで向かう途中、背中に激痛が走った。
「がっ……?」
痛みの原因は分からない。熱くて痛い……まさかこれは……魔法?
「うーむ!やっぱり俺は天才だ!こんな魔法、習ってなくても独学で撃てるんだ!」
「サルサ……」
「ほーう?まだ立ち上がるか……魔法フィルターもないくせに!」
魔法フィルター。それは魔法の威力を弱めるもの。この学校に通う人たちは、皆入学時にこの魔法を習う。だが、もちろん僕は使えない。
「さっさと沈め!ブラストバーン!」
目の前に見えたのは、炎、そして爆発。日常で見ないそれは、確かに人の命を奪うのに適している。
魔法が目の前に迫るときに僕は思い出した。どうして人がいないのかを……それは、サルサの結界魔法だ。
サルサの結界魔法は、対象を中に閉じ込め、周りから見えなくさせるもの。もちろん、中に入った人も外を見ることは無い。
サルサの放った魔法がぶつかる。あまりの痛みに僕はその場に倒れ込んだ。
「ひゃはは!お前はこの天才魔法士サルサ様にやられるんだ!むしろ感謝してほしいものだな!」
サルサが吠える。意識が薄れる。感覚が無くなる。
……もう駄目なのだろうか。僕は、もうこのまま……。
「ヒールシャワー」
その時、鈴のような、優しい声が聞こえた。雨……その雫に触れた場所が、みるみる内に治っていく……完全とは、いかないけれど。
それでも、充分だった。
僕は目の前に現れた少女の名前を呼ぶ。
「レネ……」
レネ・リュアレ。僕の妹で、結界と、回復魔法の天才だ。そうか、だからサルサの結界にも入ってこれたのだろう。
「お兄様……」
レネが僕を呼ぶ。その瞳は、悲しそうな目をしていた。
「おお!レネではないか!お前ならばこの結界も通れることは想定済みだ。やはり君とは運命のようだね……」
「……」
レネは、一体何を考えているのだろうか。何も喋らず、ずっと僕を見つめているだけだ。
「ふふ……そんな情熱的な目で僕を見て……君の考えている事は手にとるように分かるよ!俺と最高の時間を過ごしたいのだろう?でも今はこの落ちこぼれがその場所を占拠してしまってる……分かる、分かるよ」
サルサは一呼吸置いて、今度は僕の髪を掴みながら叫ぶ。
「おい落ちこぼれ。あの世で安心しろ。これからは俺がお前の変わりになってやるからさ!レネと共にな!」
「お前……!」
そう。サルサは本気なのかはどうか知らないが、レネの事が好きだ。良く、レネと結婚して、僕の変わりになると息巻いていた。
けれど……僕はそれを拒んでいた。レネの将来を勝手に決めてほしくなかったから。
こんな僕でも兄と呼んでくれる優しい子を、こんなやつなんかに渡すつもりはない。僕だって、兄としてのプライドがあるのだ。
「そんなこと……させるか……!」
「はぁ……もう耳障りだ。さぁ、俺の愛しきレネ。お前の手で、お前の家の恥晒しを倒すのだ」
そう言ってサルサは僕を魔法で空中に固定する。いわゆる貼り付けというやつだ。
「そうですか……なら」
レネは、そう呟いた。そして、手に持っている杖に魔力が集まり、氷の槍を作り出した。
「ブリザーランス」
氷の槍は、一直線に獲物に向かって発射される。しかし、レネの狙いは僕では無く……。
「……は?」
サルサの頬を掠め飛んでいった。その頬からは血が出ている。
「私の中の恥晒しを滅するとしますかね……えーっと……サウサさん?」
「な……あ……」
サルサは、想い人に名前を覚えてられていないショックと先程の魔法の事で気絶した。その瞬間、結界が解除される。人がいないのは変わらずだったが、部活に励む声が聞こえてきた。
その瞬間、レネが僕を抱きしめた。
「お兄様!大丈夫ですか!今回復魔法を掛けてあげますね!」
「いや……良いよ。もう動けるし……痛てて……」
「ほら!やっぱり無理して……全然大丈夫なんかじゃないですか!」
「僕なんかに魔法使うよりいいだろ?」
「ああもう……またそう言って……え?回復魔法が効果ない……」
「あー……まぁ爆発の魔法だったしねぇ……でも体は動くからいいだろ?」
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