落ちこぼれの僕は学校で虐められていますが、何故か家族には愛されています

ユニーグ

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第一章

妹が過保護過ぎて、兄として将来が心配です

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「暇だなぁ」
 そう呟いても、何も返ってこない。それはそうだ。だってここは病院なのだから。
 回復魔法も便利ではない。なぜならあれは血を止めたり傷を治すことは出来るが、骨折やひどい火傷は、症状を軽くするだけで治すことは出来ない。
 その傷を治すため、こうして病院がある。魔法では出来ない医療をするための施設だ。
 先日のサルサの件で、僕は酷い傷を負った。彼が放った魔法は爆発の魔法。一応あれは爆発の魔法の中では初級魔法となっているが、その初級の中でも特に難しい魔法である。
 その爆発を何発も当てられ、こうして五体満足でいれるのは奇跡……という訳ではない。
「このペンダント……効果ありすぎだろ……」
 僕は蒼く煌めくペンダントを見た。一見これはただのペンダントのように見えるが、これには魔法が込められているペンダントなのだ。
 去年の誕生日にレネからこのペンダントを貰ったのだけれど……どうやらこのペンダントには強力な魔法フィルターが掛かっているらしい。
 ……まぁ、だからこうしてちょっとした怪我で済んだのだろう。全身やけどとは言われたが……。
「しかし……なんで子供一人にこんな個室用意したんだろう。寂しくて仕方ないよ」
 そう。実は、病院の手配とか、それらを用意してくれたのはレネなのだが……なんとまぁ入った時驚いたよね。だって個室だもん。何でも僕がこれ以上傷つかない為だとか言っていたが……。
 いやぁ……何だかレネは本当に過保護だなぁ。ある意味心配だよ僕は。早く兄離れしてくれないかなぁ……それはそれで寂しいけどさ。
 そんなとき、病室の扉が開かれた。
「お兄様!体調はいかがですか!」
「あぁレネ。今日も来たの?体調は良いけど……」
「なら良かったです!」
 ふと時計を見る。学校が終わる時間を超えてはいるが、精々2分ぐらいしか経ってない。
「ねぇレネ……正直に言ってほしいんだけどさ。加速魔法……使った?」
 加速魔法。人に付与する事も、自らに使うことも出来るその名の通り速くなる魔法だ。
「うっ……」
「僕は言ったよね?町中で魔法は使わないようにって。それ以前に僕らは家の事もあるんだからそんな目立った行為はするなって」
「はい……でも!私はお兄様が心配で!」
「心配してくれるのは嬉しいけど、レネはただでさえ威力が高くなるんだから、気をつけろって言ったよね?」
「あ、その点は心配無いです。飛んてきましたので!」
「飛んできたじゃないんだよ。まぁ……前に比べればマシかもしれないけどさ。ちなみにどうやって?」
「屋根を使って!」
「はぁ~……」
 うん、いつからこの子はこうなってしまったのだろう。もう溜息しか出ないよ。
 僕が妹に呆れているとき、ノックの音が聞こえてきた。
「誰だろう?どうぞー」
「失礼します……うわぁ!」
 入ってきたのは、サルサ……ではなく、サルサに瓜二つの少年だった。
「貴方……良く堂々とお兄様の前に来れましたね……」
「いやだから!僕はあの愚兄とは違いますッて!だから氷を降らすのを辞めて下さい!」
「ほらレネ、辞めてあげなさい。彼はサルサではないよ」
「え……?あ、本当だ」
「はは……相変わらずですね……お久しぶりです。セーバさん。レネさん」
「うん。久しぶり。サルヴァ君」
 彼の名はサルヴァ・ヴォーン。サルサの双子の弟だ。見た目はそっくりなのだが、性格が本当にサルサと双子なのか疑うくらい真逆なのだ。
「何故貴方に名前を呼ばれなければ……」
「まぁまぁ。今は仕方ないでしょ?ここにリュアレは二人いるんだから」
 レネは親しい人以外には名前を呼ばれたくない。けれど、流石に今は仕方ないだろう。
「それで、どうしてここに来たの?」
「あぁ……あの愚兄のその後を伝えに……愚兄は、いやサルサは本日を持ってヴォーン家から追放。家名の無い名無し子になりました」
 エレメニアでは、名前の後に家名をつける事が基本とされている。だが、名無し子はその家名が無い状態を言う。なので、以前にどれだけ権力があっても、名無し子になればそれも全て無くなってしまう。
「それでも学校には通わせるそうですけどね」
「それ、かなり反響がありそうだね……サルサの被害者多いから……」
「自業自得です!」
「ははは……それでは、僕はもう帰りますね」
「うん。伝えてくれてありがとう」
 そうしてサルヴァ君は帰っていった。
「さて……レネも帰りなさい」
「え!?何でですか!」
「いや時間みなよ。もうすぐ夕ご飯の時間でしょ。早く帰りなさい。お母さん時間に厳しいんだから」
「うぅ……分かりました……」
 そうしてレネも帰っていった。
「はぁ……やれやれ。本当に過保護なんだから……」
 過保護なのはまぁ、ちょっと嬉しいけど……流石に限度というものがある。
 妹の過保護が強すぎて、兄として将来が心配です。
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