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他視点・その他
❖晃の思い
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僕は知っていた。クラスメイトの高瀬望美がいつも僕を見ていたことを、彼女が僕を嫌いでいたことを、そうでなくなった後も彼女が僕に苦手意識を持っていたことを。
でも、彼女と会話らしい会話したことはそれまで無かった。ひと言ふた言の事務的な連絡ならしたことがあったけれど。
「あれ、高瀬さん?」
あの時、僕たちは初めてまともな会話をした。
僕のことを見ていた割に、避けているのは何故だろう。
僕しかいなかったボランティア部に彼女が入ったことが嬉しかった。夢人になりたがっているというのはその前から八葉さんを通じて聞いていた。叶さんとも相談した結果、夢人候補にすることにしていたので助かった。
候補になり得るかを最終的に判断するのは僕。だから少し部室で話をした。
高瀬さんは思ったよりも普通の子だったけれども、ボランティアをしたいという気持ちは本物だったから聖女になる方法を教えた。
高瀬さんはとても良い子だった。良くないことを考えていても、打ち明けてくれた。聖女になるためにたくさんのことを訊いてくれた。目が輝いていた。
彼女は黒節に恐怖を覚え、叶さんのことを尊敬し、ちゃんとこの世界に向き合ってくれる。前の聖女とは違う、彼女こそが聖女であるべきだと思った。
それと同時に、高瀬さんと並んで恥ずかしくない聖代になりたいと強く思った。
それが。
「叶さん、お願いします!」
「だめ。今晃がいなくなったら、この世界はどうなる?」
「きっと、大変だと思います。でも、叶さんと望美がいます。だからこの世界は大丈夫です。だから……」
望美を喪いたくない。
だって彼女は素敵な聖女だから。僕なんかでは届かないくらい、いい人だから。
「晃も若い。晃がそんなことする必要は——」
「望美も同い年です。それに、僕じゃなくて夢人としてまだ穢れのない望美こそが生き残るべきです」
叶さんが息をついた。
「本当に、それでいいの?」
僕の決意は固まっている。絶対に変わらない。死んでもいい。みんなの記憶から消されてもいい。
それで、彼女を護れるというのなら。
「……わかった。もうなんとなく分かっているみたいだね。この方法は依頼者の命を代償とする」
「構いません。望美を護りたい。今すぐにでも」
少しの沈黙の後に叶さんは八葉を呼ぶ、と言って叶さんは出て行った。
その間、僕の人生を振り返っていた。
僕は両親に厳しく育てられた。僕の言動に対して過干渉であったとも言うべきか。いつからかそれが窮屈になって十歳で家を出た。
そのとき僕は叶さんに拾われて、本当の名前を捨てた。叶さんのお陰で充実した日々を過ごしていた。
聖代候補になった。それから、一気に聖代に駆け上がった。
そのときの聖女はとても傲慢で、黒節を恐れないし叶さんに命令口調で話す。
危険は僕に任せるし、僕の日常生活にも口を出してくる。それが両親のように思えて大嫌いだった。
本を書いた。久しぶりの本名で。そうしたら優しくなった両親が、優しく「家に帰ろう」と言ってくれるのではないかと期待して。
それが「夢想」シリーズである。足りない文章力や資料は、叶さんに補ってもらった。共著である。
そうしたら、あの聖女が「自分が書いた」と周囲に言いふらした。
それを問題視した叶さんがそれまでの、叶屋や夢人に関係する記憶を彼女から消した。
すっきりした。もう、悩まされないで済む。そう思うと嬉しかった。
なのに僕を見つけた両親は強く僕を責めた。帰って来いとも言った。痛いほど腕を掴んで。その態度は、自分なりに頑張っていた僕への全否定と同義であった。
母は僕が通う学校の先生になった。だから僕は母に失望してもらえるように、小動物なふりをした。そのせいで望美に嫌われていたんだけど。
それでも両親は諦めなかった。
僕が抵抗を諦めようとしたとき、望美がボランティア部に入ってくれた。もう一度頑張ってみようと思えた。
そして今に至る。
叶さんが八葉さんを連れて戻ってきた。今から、望美を助ける方法を実行する。
もう目を開けることはないけれど、存在ごと消えて聖代の蝶に蓄積されるけれど、悲しまないで。立派な聖女になってね。
ありがとう、望美。叶さん。
でも、彼女と会話らしい会話したことはそれまで無かった。ひと言ふた言の事務的な連絡ならしたことがあったけれど。
「あれ、高瀬さん?」
あの時、僕たちは初めてまともな会話をした。
僕のことを見ていた割に、避けているのは何故だろう。
僕しかいなかったボランティア部に彼女が入ったことが嬉しかった。夢人になりたがっているというのはその前から八葉さんを通じて聞いていた。叶さんとも相談した結果、夢人候補にすることにしていたので助かった。
候補になり得るかを最終的に判断するのは僕。だから少し部室で話をした。
高瀬さんは思ったよりも普通の子だったけれども、ボランティアをしたいという気持ちは本物だったから聖女になる方法を教えた。
高瀬さんはとても良い子だった。良くないことを考えていても、打ち明けてくれた。聖女になるためにたくさんのことを訊いてくれた。目が輝いていた。
彼女は黒節に恐怖を覚え、叶さんのことを尊敬し、ちゃんとこの世界に向き合ってくれる。前の聖女とは違う、彼女こそが聖女であるべきだと思った。
それと同時に、高瀬さんと並んで恥ずかしくない聖代になりたいと強く思った。
それが。
「叶さん、お願いします!」
「だめ。今晃がいなくなったら、この世界はどうなる?」
「きっと、大変だと思います。でも、叶さんと望美がいます。だからこの世界は大丈夫です。だから……」
望美を喪いたくない。
だって彼女は素敵な聖女だから。僕なんかでは届かないくらい、いい人だから。
「晃も若い。晃がそんなことする必要は——」
「望美も同い年です。それに、僕じゃなくて夢人としてまだ穢れのない望美こそが生き残るべきです」
叶さんが息をついた。
「本当に、それでいいの?」
僕の決意は固まっている。絶対に変わらない。死んでもいい。みんなの記憶から消されてもいい。
それで、彼女を護れるというのなら。
「……わかった。もうなんとなく分かっているみたいだね。この方法は依頼者の命を代償とする」
「構いません。望美を護りたい。今すぐにでも」
少しの沈黙の後に叶さんは八葉を呼ぶ、と言って叶さんは出て行った。
その間、僕の人生を振り返っていた。
僕は両親に厳しく育てられた。僕の言動に対して過干渉であったとも言うべきか。いつからかそれが窮屈になって十歳で家を出た。
そのとき僕は叶さんに拾われて、本当の名前を捨てた。叶さんのお陰で充実した日々を過ごしていた。
聖代候補になった。それから、一気に聖代に駆け上がった。
そのときの聖女はとても傲慢で、黒節を恐れないし叶さんに命令口調で話す。
危険は僕に任せるし、僕の日常生活にも口を出してくる。それが両親のように思えて大嫌いだった。
本を書いた。久しぶりの本名で。そうしたら優しくなった両親が、優しく「家に帰ろう」と言ってくれるのではないかと期待して。
それが「夢想」シリーズである。足りない文章力や資料は、叶さんに補ってもらった。共著である。
そうしたら、あの聖女が「自分が書いた」と周囲に言いふらした。
それを問題視した叶さんがそれまでの、叶屋や夢人に関係する記憶を彼女から消した。
すっきりした。もう、悩まされないで済む。そう思うと嬉しかった。
なのに僕を見つけた両親は強く僕を責めた。帰って来いとも言った。痛いほど腕を掴んで。その態度は、自分なりに頑張っていた僕への全否定と同義であった。
母は僕が通う学校の先生になった。だから僕は母に失望してもらえるように、小動物なふりをした。そのせいで望美に嫌われていたんだけど。
それでも両親は諦めなかった。
僕が抵抗を諦めようとしたとき、望美がボランティア部に入ってくれた。もう一度頑張ってみようと思えた。
そして今に至る。
叶さんが八葉さんを連れて戻ってきた。今から、望美を助ける方法を実行する。
もう目を開けることはないけれど、存在ごと消えて聖代の蝶に蓄積されるけれど、悲しまないで。立派な聖女になってね。
ありがとう、望美。叶さん。
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