蝶と都とキラキラと

樟谷

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本編

❖じゅうご 最終話

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 私ははっと目覚めた。そしてあれは誰かの演じてくれた夢だったのだと認識する。 あれからもう七年も経過した。 私はまだ生きている。
「望美、おはよう」
 熱が出ていて寝込んでいる私に優しく微笑んでくれる彼は新谷陽仁にい や はるひと。私と晃が所属していたボランティア部の元顧問だ。
「おはよう」
 私は彼に挨拶をした。



 あの日、気づくと今度は叶の都の外れにある丘にいた。
 初めて黒節と遭遇した、そして晃が美しく倒すのを見た場所である。
 その時の私には、場所への恐怖はあるものの動くような気力はなかった。
 そうしてただぼうっと時間を過ごしていたのだが、そこにまたもや黒節が現れた。
「嫌、どうしよう。一人じゃ、何も出来ない……」
 追い詰められていく。どうしよう。何か対抗できる方法はないか。
 必死になって考えてみるものの、全くと言っていいほど良い案は思いつかない。
 ついに、黒節が私を発見した。黒節はこちらへ一直線に向かってくる。
 何かしないと。生きるために。怖い。今にも襲われそうだ。そう思った瞬間だった。
「晃! 叶さん!」
 本能が、二人の名を叫ばせた。
「衣装展開・水月花炉・発動!」
 晃だ。晃が空から現れて、前に護ってくれたように護ってくれている。晃は蝶になる紙を大量に投げ、扇をあおぐ。しかし効果は前に比べて弱いようだ。私も、何かしないと。
「衣装展開・秋の風・発動!」
 口から滑り落ちた言葉は、衣装展開だった。蝶の力が持っていかれる。秋を感じさせる、椛などの描かれた昔の装束の今風アレンジであるが、そんなことを気にしている余裕はない。私も技を出そうとする。
 晃に倣って橙の扇をあおぐ。でも何も起こらない。叶さんを見つけたがただ見守るばかり。窮地に立たされた、そんな時。
「望美!」
 聞こえてくるはずのない声が聞こえた。
「八葉!?」
 彼女は八色未神だとされる姿絵にそっくりな姿で宙に浮き、何事かを呟いた。
 その後からの、私の記憶がない。
 後から聞いた話であるが、この時に八葉が黒節を倒したらしい。

 次に目を覚ましたとき、また私は部屋にいた。
 前とは違う点は、晃がいない代わりに八葉がいること。
 そこで衝撃的な話を聞かされる。
 八葉は八色未神で出来ているのだという。叶さんもそうであるらしい。そして。

 晃は死んだ。

 どういうことなのか。しばらくは受け止めきれなかった。
 私は蝶の力を上手に扱えなかった。でもこれは、初心者なら誰にでもあり得ることらしい。晃も最初は苦戦したらしい。
 しかし夢に襲われるほどに悪化した例は四代目聖代以来で、今回はその時と同じ方法で彼の命と引き換えに私の命を護ってくれたようだ。
 流れ出た涙は止まるところを知らなかった。
 私は、ただただ泣くことしかできなかった。



 時が過ぎ、私はあの頃よりも成長した聖女——夢人第一位である——になった。
 聖代は陽仁。彼は夢人歴五年である。空白期間は私の修行期間だ。
 忘れない。それが彼への最大の感謝を表すことであるのだと思う。 
 あの期間で何度も晃が私を護ってくれたように、私も陽仁を護ることができる日が来ればいいな。 私が黒く染まるその日まで。

Fin.
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