蝶と都とキラキラと

樟谷

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本編

❖に

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 そんなことを続けていたある風の強い秋の日、私は夢を見た。あれはもう棄てたはずの愛都の妄想だ。流石私から出てきた妄想の産物なだけあって、かっこよくてかなり好きだった。
 どちらも観賞用イケメンだという認識はあるが、やはり愛都のほうがキラキラしていて好きなのだ。だからといってもう彼の性格を貶そうというつもりはない。その結果でもあるのだろうか。
 私はその日、運命に出会ったのだ。

「ああ、夢人になりたい……」
 頬杖をつきながらぽつりと私は呟く。窓の外は大荒れ、ざあざあと降る雨とどんよりと重苦しい雲が元から低い私の気分をさらに落とす。そんな中、背中からとん、という音と共に優しい衝撃が走った。
「八葉ぁ」
 驚いたので責めるよりはいくらか軽い調子で名を呼ぶと、彼女はふふふ、といつもと同じような上品さで笑う。まるでいたずら大成功、とでも言うように。

 私と八葉は今年——高校一年生——の春に出会った。私は当初、キャピキャピしていて平気で校則を破る女子たちのいた八人の(中間考査前には十人にまでなった)グループにいた。だが校則を破る気概もない私は、さっさと置き去りにされてしまった。そんな時、隣にいた八葉に声をかけて、のんびりとした性格に親しみを覚え、以来徐々に仲良くなったのだ。
 それから中間考査が終わると同時に席替えがやって来て、そのグループは散り散りとなった。

「夢人? 夢人になりたいの?」
 のんびりと彼女は私に問う。
「うん……。愛都くんの夢がね」
 私は答える。それに対して八葉はあら、と声を漏らした。
「棄てたはずではなかったの?」
 棄てた、はずだった、と呟いた。そしてでも、と続ける。
「出てきてしまったんだよねぇ……」
 出てきてしまった。本当にそれだけだったのだ。それだけだったのに。どうして、こんなにも夢人になりたいのだろう。
 そもそも、夢人という無条件で尊敬されるような存在にはやや不信感を抱いていたというのに。

 私は、あれから善を重ねはじめた。
 最初は、八葉との下校中に通りがかりのおばさんが落としたハンカチを拾った。落としましたよ、と渡せば、ありがとう、と微笑んでくれた。
 次の土曜日には、ボランティア募集をしていた公園の清掃に参加した。落ち葉を集めたり、ゴミ拾いをしたりした。
 ゴミ拾いに関しては、すぐそこにゴミ箱があるのに空き缶やペットボトル、レジ袋などをポイ捨てする意味がわからない。その日は、午後二時の開始から午後五時の終了まで黙々と作業をしていた。
 それから、コンビニとかスーパーとかへ行ったときにはレジ横の募金箱に小銭を入れた。「緑の募金」「災害復興募金」「いのちの募金」など、いろんな募金があるのを知った。



 どれも細やかなものだが、少しでも夢人に近づくのはとても嬉しいし、ボランティアのやりがいや喜びを知ってもっとやりたいと思った。ボランティアが偽善だとも思われるが、そもそも完璧な善とは何かがわからない。夢人という夢だって、どこか義務感があって善でもないような気がする。
 私は今、強烈に夢人になりたいという思いがあるものの、それイコール現実世界の命を捨てるということになるので悩んでいる。
 だからこそ私は、夢人などは関係なしにボランティア活動をしたいと思った。
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