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本編
❖ろく
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それから飲み物が届くのにはあまり長い時間はかからなかった。だが、体感は別である。長かった。私と相賀くんはその時間をほぼ無言で過ごしていた。お互いに私は初めての場所にいて、相賀くんは私がいるからいつものように出来ない、という非日常の緊張を味わっていたからだ。
その間、私はこの都行席の内装を観察したり、それについて考えたりしていた。
「はい、お待たせしました」
叶さんの声でふっと現実に戻る。目の前には、相賀くんの瞳と似ているオレンジ色の水色の紅茶があった。
「ありがとうございます。いただきます」
そして香りを嗅ぎ、一口。アールグレイだ。
「美味しい……」
完全に好みだったので、思わず表情が緩んでしまう。でも、なぜ「ホットストレートティー」だけでアールグレイが出てきたのだろうか。
「ありがとう。高瀬さんが飲みたい紅茶を選んでみたよ」
一瞬意味がわからなかったが、徐々に理解した。正にこれが飲みたかったのだ。
「凄いです! どうして分かったんですか?」
「私はこれでも『神域の甘味処』叶屋の店主ですから」
あ、成程。そういえばそうだった。だからここへ来たんだ。
叶さんはその思考の変化に気がついたらしい。改めて自己紹介をしようかと提案し、座っていいかと断りを入れて、もう一つ空いていた席に腰を下ろした。
「はじめまして。私は叶屋店主の大宮叶、一応女です。役割としては、神様との接触、この世界の保護、夢人の都の管理、あと店主業です。これからよろしくお願いします」
叶さんは丁寧に頭を下げてくれた。って言うか、叶さんって女の人だったんだ。かっこいいし素敵だ。こんな人になりたい。
「こちらこそよろしくお願いします」
私は思考を隠すようにして頭を下げた。そしてそのまま自己紹介に移る。
「私は高瀬望美、相賀くんのクラスメイトで、月曜日にボランティア部に入りました」
「……ほら、晃もやりなよ」
「え、えー」
叶さんの突然の提案を相賀くんはかなり嫌がっている。だが抵抗むなしく、自己紹介をする運びとなった。
「えー、相賀晃です。夢人です。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
まるで初対面のように交わされる挨拶に三人でくすくすと笑った。
「さて、夢人についての話をしようか」
「はい」
私は、飲みかけのアールグレイを置いた。叶さん、次いで相賀くんが姿勢を正したので、私も背筋を伸ばした。
「まず、夢人はこっちでは死んだとされるけれども夢人の都で生きている。次に、夢人は夢の持ち主の記憶によって置き換えられた夢の中に入って演技をする。これは大丈夫だね?」
「はい」
私は首肯する。
「では、夢人の脅威は何で、夢人が夢にいるときはどうなっているかは?」
「脅威は黒節で……夢にいるときは、夢の登場人物になると聞いていますが詳しくはわかりません」
「じゃあ晃、説明お願いね」
相賀くんは予想済みだったような感じで開いていた「夢想学入門」を私に向けてくれた。そして左ページ中央あたりの文を指でなぞりながら説明をしてくれる。
「はい、脅威は黒節。夢にいるときは夢人としての姿が失われて、代わりに登場人物の姿となる。ここまでは大丈夫みたいだね。
夢に入ったときにその人物の思考となって、演技が始まる。 成り切る人物が人以外なら、動物や非生物、ファンタジーに出てくるような魔物になる……以上」
その間、私はこの都行席の内装を観察したり、それについて考えたりしていた。
「はい、お待たせしました」
叶さんの声でふっと現実に戻る。目の前には、相賀くんの瞳と似ているオレンジ色の水色の紅茶があった。
「ありがとうございます。いただきます」
そして香りを嗅ぎ、一口。アールグレイだ。
「美味しい……」
完全に好みだったので、思わず表情が緩んでしまう。でも、なぜ「ホットストレートティー」だけでアールグレイが出てきたのだろうか。
「ありがとう。高瀬さんが飲みたい紅茶を選んでみたよ」
一瞬意味がわからなかったが、徐々に理解した。正にこれが飲みたかったのだ。
「凄いです! どうして分かったんですか?」
「私はこれでも『神域の甘味処』叶屋の店主ですから」
あ、成程。そういえばそうだった。だからここへ来たんだ。
叶さんはその思考の変化に気がついたらしい。改めて自己紹介をしようかと提案し、座っていいかと断りを入れて、もう一つ空いていた席に腰を下ろした。
「はじめまして。私は叶屋店主の大宮叶、一応女です。役割としては、神様との接触、この世界の保護、夢人の都の管理、あと店主業です。これからよろしくお願いします」
叶さんは丁寧に頭を下げてくれた。って言うか、叶さんって女の人だったんだ。かっこいいし素敵だ。こんな人になりたい。
「こちらこそよろしくお願いします」
私は思考を隠すようにして頭を下げた。そしてそのまま自己紹介に移る。
「私は高瀬望美、相賀くんのクラスメイトで、月曜日にボランティア部に入りました」
「……ほら、晃もやりなよ」
「え、えー」
叶さんの突然の提案を相賀くんはかなり嫌がっている。だが抵抗むなしく、自己紹介をする運びとなった。
「えー、相賀晃です。夢人です。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
まるで初対面のように交わされる挨拶に三人でくすくすと笑った。
「さて、夢人についての話をしようか」
「はい」
私は、飲みかけのアールグレイを置いた。叶さん、次いで相賀くんが姿勢を正したので、私も背筋を伸ばした。
「まず、夢人はこっちでは死んだとされるけれども夢人の都で生きている。次に、夢人は夢の持ち主の記憶によって置き換えられた夢の中に入って演技をする。これは大丈夫だね?」
「はい」
私は首肯する。
「では、夢人の脅威は何で、夢人が夢にいるときはどうなっているかは?」
「脅威は黒節で……夢にいるときは、夢の登場人物になると聞いていますが詳しくはわかりません」
「じゃあ晃、説明お願いね」
相賀くんは予想済みだったような感じで開いていた「夢想学入門」を私に向けてくれた。そして左ページ中央あたりの文を指でなぞりながら説明をしてくれる。
「はい、脅威は黒節。夢にいるときは夢人としての姿が失われて、代わりに登場人物の姿となる。ここまでは大丈夫みたいだね。
夢に入ったときにその人物の思考となって、演技が始まる。 成り切る人物が人以外なら、動物や非生物、ファンタジーに出てくるような魔物になる……以上」
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