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本編
❖ご
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「え? え、待ってよ相賀くん! 並ばないの?」
列を気にせず叶屋に向かっていく相賀くんを止めようとしたが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。
「あ、言うのを忘れていたね。叶屋は叶屋でも、一般の人が入れない所に行くんだよ」
「え?」
「地下には都行席っていう特別な席があって、そこは夢人専用の席だから叶さんの分と三席だけなんだ」
そうなのか。恥ずかしいことを言ってしまった。今、きっと私は赤面している。だから黙って彼に着いていった。
引き戸を開けて叶屋に入ると、肩くらいまでの艶やかな黒髪とブルーグレーの美しい輝きの瞳を持つ中性的な人がいた。
「いらっしゃい。晃、高瀬さん」
その人はふわりとした笑顔で迎えてくれた。叶さんもまた、私の周りに多い柔の雰囲気を持つ人のようである。声まで中性的で、なんだか不思議な人だなあと思った。
店内はやはりすごく混雑している。けれども明るくて上品な店内は忙しさを微塵も感じさせない。神様の守護するお店だからでもあるのだろうか。
私たち三人はそのまま左へ曲がり、「関係者以外立ち入り禁止」のドアへ入っていく。ちなみに外国語では書かれていない。相賀くんや私のような人は叶屋の関係者だが従業員ではないから、「従業員専用」のニュアンスを含む言葉を使えないからだ。言葉って面白い。
そのまま真っ直ぐ進むと、角に小さくて急な下り階段があった。横にはスロープも備え付けられてある。どちらもこの空間では異質で、朽葉色の木材がニスを塗られたかのようにつるっとしている。滑りそうでかなり不安だ。
「降りるよ。大丈夫、滑らないから」
余程その不安が顔に出ていたのか、安心を与えるような明るい声で叶さんが教えてくれた。相賀くんは先に降り始めたが滑っていない。だから私は恐る恐るだがその清澄な空気で満たされた階段へと踏みだすことができた。
❖
「え、わぁ。凄い!」
階段を降りた先、そこは何だか澄んだ空気でひんやりとしている。部屋は上の階と比べて貴族の時代のような(決してそれを悪い意味で用いているのではなく、重厚で歴史を感じられてとても良い、という意味である)机や椅子で、内装もがらりと変わってお洒落な家の一室のような雰囲気だ。アンティークな雰囲気があって良い。その時代の文化が大好きな私好みな部屋だ。
叶さんはと口元に手をやりながら品良く笑った。これは女性的な仕草だな、と思う。
「びっくりした? ……これは晃も知らない先代のせ——ううん、晃みたいな夢人の趣味だよ。まあ、晃も良いって言ってくれたからこのままなんだけどね」
まあ座って、と叶さんは私たちの行動を促した。叶さんの言葉に従って相賀くんが座ったので、私もバッグを後ろに置いて座る。
「強めの神域だから食べ物は何も出せなくて悪いけれど、コーヒーか紅茶かお冷なら出せるよ。何がいい?」
叶さんの質問に相賀くんは甘いミルクコーヒー、と頼んだ。私はホットのストレートティーをお願いした。
「あ、都行席に居る人は大切な夢人だからお代はいらないよ」
「えっ、良いんですか?」
叶さんはゆっくりと頷いた。
「ありがとうございます!」
「いいえ、こちらこそ」
そのまま叶さんは準備をしに上へと向かっていった。
列を気にせず叶屋に向かっていく相賀くんを止めようとしたが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。
「あ、言うのを忘れていたね。叶屋は叶屋でも、一般の人が入れない所に行くんだよ」
「え?」
「地下には都行席っていう特別な席があって、そこは夢人専用の席だから叶さんの分と三席だけなんだ」
そうなのか。恥ずかしいことを言ってしまった。今、きっと私は赤面している。だから黙って彼に着いていった。
引き戸を開けて叶屋に入ると、肩くらいまでの艶やかな黒髪とブルーグレーの美しい輝きの瞳を持つ中性的な人がいた。
「いらっしゃい。晃、高瀬さん」
その人はふわりとした笑顔で迎えてくれた。叶さんもまた、私の周りに多い柔の雰囲気を持つ人のようである。声まで中性的で、なんだか不思議な人だなあと思った。
店内はやはりすごく混雑している。けれども明るくて上品な店内は忙しさを微塵も感じさせない。神様の守護するお店だからでもあるのだろうか。
私たち三人はそのまま左へ曲がり、「関係者以外立ち入り禁止」のドアへ入っていく。ちなみに外国語では書かれていない。相賀くんや私のような人は叶屋の関係者だが従業員ではないから、「従業員専用」のニュアンスを含む言葉を使えないからだ。言葉って面白い。
そのまま真っ直ぐ進むと、角に小さくて急な下り階段があった。横にはスロープも備え付けられてある。どちらもこの空間では異質で、朽葉色の木材がニスを塗られたかのようにつるっとしている。滑りそうでかなり不安だ。
「降りるよ。大丈夫、滑らないから」
余程その不安が顔に出ていたのか、安心を与えるような明るい声で叶さんが教えてくれた。相賀くんは先に降り始めたが滑っていない。だから私は恐る恐るだがその清澄な空気で満たされた階段へと踏みだすことができた。
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「え、わぁ。凄い!」
階段を降りた先、そこは何だか澄んだ空気でひんやりとしている。部屋は上の階と比べて貴族の時代のような(決してそれを悪い意味で用いているのではなく、重厚で歴史を感じられてとても良い、という意味である)机や椅子で、内装もがらりと変わってお洒落な家の一室のような雰囲気だ。アンティークな雰囲気があって良い。その時代の文化が大好きな私好みな部屋だ。
叶さんはと口元に手をやりながら品良く笑った。これは女性的な仕草だな、と思う。
「びっくりした? ……これは晃も知らない先代のせ——ううん、晃みたいな夢人の趣味だよ。まあ、晃も良いって言ってくれたからこのままなんだけどね」
まあ座って、と叶さんは私たちの行動を促した。叶さんの言葉に従って相賀くんが座ったので、私もバッグを後ろに置いて座る。
「強めの神域だから食べ物は何も出せなくて悪いけれど、コーヒーか紅茶かお冷なら出せるよ。何がいい?」
叶さんの質問に相賀くんは甘いミルクコーヒー、と頼んだ。私はホットのストレートティーをお願いした。
「あ、都行席に居る人は大切な夢人だからお代はいらないよ」
「えっ、良いんですか?」
叶さんはゆっくりと頷いた。
「ありがとうございます!」
「いいえ、こちらこそ」
そのまま叶さんは準備をしに上へと向かっていった。
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