暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 「変なの呼ばんでね。」

 別れ際にありさが言った言葉があまりにも図星過ぎて、僕はハハハと苦笑いを浮かべるしかなかった。もちろん、サイト内での名前を僕が変えた事、この後の予定を聞かれて、しばらく留まると伝えた事、その辺りの情報は嫌でもありさに入り込んではいたが、女の勘が鋭いとはこういう事だろうと、そして得にありさはそれが強いんだろうと肌で感じ、脱帽したのだった。

 ありさが部屋を出てサイトを覗くと、さおりの予約がついに入っていた。ただまだ、受付終了とはならず、「次回17時~」の記載だった。さすがに予約が入ったかと思うと同時に、それでも僕はまだ、予約の電話を掛ける事ができなかった。
 帰宅時間も考えると、元々の理想で言えば、15、16時頃からさおりの予約を取るのが望ましかった。17時からの予約で逆算すると、その時間あたりがギリギリのラインだった。

 それでも僕はまだ、躊躇していた。

 それを踏み出す事で、一体、何がどうなっていくのか、そして、僕のこの行動自体が自分自身として納得できるものなのか、後悔しないものなのか、そんな事がまたぶり返してきて、尚更に頭が痛くなった。
 ただ最終的にやはり、この神のお膳立ての前で、行動しないのは男ではないし、ここで呼ばなかったら、それはそれでやはり、一生モノの後悔として残ってしまうだろうという自分の中での結論に達し、更新マークばかりをタップしていた指を「予約」マークへ動かした。
  
 電話口のスタッフの対応は今一つだった。
 「80分」と伝えたが、「えーとちょっと待って下さい、大丈夫、多分大丈夫です」といった感じだった。

 それから先、僕はピラフを頼んで食べたが、味気はなかった。
 待ってる時間、スマホでゲームでもすればいいかと思っていたし、実際にゲームを始めてはみたが、とても長続きせず、結局何する気も起きずに、ひたすらにウダウダとして時間を潰した。
 ベッドの上でスマホすら握る気にもなれず、テレビさえも見る気になれず、閉ざされ、外界から遮断された空間の中で、どうにもならない事にも関わらず、これまで書いてきたような考えで頭が一杯で無駄な時間を過ごした。

 17時頃に再度、スタッフからの電話があった。
 もう既にホテルにいるのかの確認と、あと10分程で到着する旨の連絡だった。

 さおりが、今からここに来る。

 もちろん動揺はしていた。

 ただ胸の高まりが最高潮だとか、そんな気分ではなかった。
 考え過ぎて、疲れていた。
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