暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 「わたし、ますかけなんですよー。」
 
 僕の左隣に座ったさおりは左手をこちらに向けながらそう言った。

 「すげー!今までで2人目や!」
 僕はそう驚いて言ったのであるが、
 「あーそれ、前にも言ってたような気がしますー。」
 そう言われて僕は、薄い薄い記憶が若干蘇り、
 「あー、そうやった気がする…」
 と単なる酔っ払いの会話を広げる共に、あれだけ推しと公言していたさおりの事を酔っ払って覚えていないこの自分のいい加減さに自ら呆れていた。

 「ほら、ますかけやとばい。」
 田舎のスナックで隣に座っていた彼女も僕に左の掌を見せて言っていた。
 当時は何人かの集まりで飲んでいて、20歳の僕からすればこの、飲みの席で女性の隣に座るというこの行為も若干の不思議な心持と、ワクワクやドキドキが重なり会うような、彼女の隣に座りたい、座って嬉しい、そんな気持ちを周りにばらさないように、そんな事も考えながら、無駄に焼酎をかっくらっていたのである。

 当然、この2人の共通点は、その辺に転がっているものではないと思っていた。
 「ますかけ」とさおりに聞いたその瞬間に彼女の存在がよぎった事も確かであって、どこか惹かれる、そういった要素はやはりここから来るものも少なくはないなとは思っていたのである。
 
 100人に1人と言われる…が諸説あり、100人に2,3人とも…となんともスッキリしないような事がネットには書かれてはいるが、珍しい事に変わりはなかろうと、それくらいの意識でしかなかった。

 その元カノと久々に飲んだ数日後、僕は仕事中に車を走らせながら、ふと記憶が蘇ったのである。

 「36!」
 「そう36!」
 さおりと、さおりの同級生がカウンター越しに笑いながら話している場面。
 それはさおりの車のナンバーの話だった。
 それから何度かさおりが車に乗って降りている場面には遭遇してきていたが、ナンバーまでは確認してなかったの である。
 その場面と、彼女の昔の車のナンバーが同じである事にハッと気づくわけではなく、「あれえ~?そう言えば…」とそんな感じでじわりと気が付いていったのである。

 車のナンバーが同じ確率は9999分の1、ますかけである確率は100分の1~3。
 
 どんな確率だろうと考える反面、ただ、何より、僕が出会う方1人1人に「手相見せて下さい!」「車のナンバー教えて下さい!」そんな事を聞くはずもなく、この2人のこの2つの事は自然と僕の頭に入り込んできた事であって、それを考えると確率云々ではなく、出会うべくして出会った、そしてその距離が近くなる事も、神の思し召しであると、そう思わざるを得ないのである。
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