カルバート

角田智史

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 真理恵にくびったけ 9

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 真理恵と約1年ぶりの再会を果たしてから、僕はいい気分になっていた。
 そして彼女は僕の予想に反して、MKに勤める事となった。意外で、僕は驚いたが、純粋に嬉しい気持ちと、安心した気持ちになった。
 
 真理恵の初出勤の時に僕はMKへ向かった。それはあのポケットに押し込んだ紙を返す為であった。あの日帰って、その紙を広げてみると、個人情報満載の、子供のランドセル購入の控えだったのだ。電話番号、住所、それが見事に記載されており、僕はその写真を真理恵へ送ったのだった。それがないとランドセルとの引き換えは叶わないだろう。
 真理恵の初出勤の日、まきやここみが色めき立っていた。真理恵推しの僕、そして古賀さん、その辺りをからかってやろうと意気揚々としていたのである。

 その日僕がMKに向かうと、終始ほんわかとしたムードだった。元々僕が真理恵推しだと公言していた部分は大きい。入ってすぐにニヤニヤしながら引き換え券を真理恵へ渡した。
 「ホンっとにすみません!」
 そう言って真理恵は紙を受け取った。
 「もう、嫌やった~。」
 久々に記憶を飛ばし、あそこまで酔っ払ったのもなかなか無かったようで、次の日の僕からのLINE、それも見たくなかったようだ。
 僕は「飲みすぎんなよ。」と真理恵に言って、ワンセットで店を後にした。前回の事があったから言った言葉だった。周りからは「親みたいやん!」とかそういう冷やかしも受けていたが、僕はそれで良かった。
 家に帰って、真理恵からは、
 〔顔を見れて安心しました!ありがとうございました!〕
 というLINEがきていた。

 それから、順調にご飯を食べに行ったりした。デートを重ねてるような感覚に近かった。
 まきからたまに〔今日真理恵ちゃんおるよ~。〕というLINEも来ていたが、真理恵がいるから店に行くとか、そういう対象ではなかった。ちゃんと元気で働いている事が分かれば、それで十分だった。
 ご飯を誘う時にも、おそらく彼女の中で遠慮があったのだろう。「さとし君」という存在を美化しすぎていたようなそんな気さえする。「同伴」すら失礼に当たると思っていたのではないだろうか。そもそもが、今まで真理恵と同伴した事はなかったし、飲みに行ってもお金を貰っていたのだ。
 再会した串カツ屋を僕が出したので〔次はご馳走させて下さい!〕とLINEが来ていて、それからというもの、ご飯にせよ、同伴にせよ、交互にどちらかがお金を払うという無言の決まり事ができつつあった。そして行くお店に関しても、交互に決めて予約をするような、そんな流れが自然と出来上がってきていた。
 同伴に関しては、MKで喋っている中で、まきやここみからの後押しがあって、ようやくそれに至ったのである。
 そもそもが同伴をしまくっている男に、全く気を遣う必要はなかったのだが、先述した真理恵の僕に対する遠慮があったのだろう。
 それまで積極的に他の子は誘わなかったアフターにも、真理恵は誘って何度か行った。2人静かに喋る事の方が多かったが、MKでいつも聞く真理恵の歌声も、僕は好きだった。

 そんな中、他のスナックに一緒に行こうと話が持ち上がった。他のスナックに行くには、真理恵が休みの日じゃないと実現しなかった。
 寒さが厳しい水曜日、そのスナックに行く事になった。
 
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