カルバート

角田智史

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 さとし 5

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 完結させる、その事をずっと考えてきていた。
 ただしかし、完結を目前として、僕はまた、躊躇している。
 それは、これを書き続けている事、これを読み続けている事が、僕にとっての大きな、楽しみとなっているからであった。
 現時点で、何人かの方に読んでもらっている現状があって、そして「楽しみ」という言葉も頂いている中で、この連載を終わらせてしまう事は、その繋がりが無くなってしまうような気もして、寂しく感じている。
 そして僕はと言えば、これを誰よりも多く、何度も、何度も、読んで修正、加筆を加え続けている。
 
 そして、ここまで引っ張ってきた真理恵はどうなったのか。
 これまでの流れの中でそれを説明するに、一行や二行では、あまりにも忍びなく、素っ気なく、寂しい書き方な気がして、当初冒頭の一文で済ませようと思っていた、さきの事までも書き綴ろうとしている。
 さきについて書き進めると、思いのほか文字数が増えていくのを見て、やはり自分の中では大きな出来事だったのだろうと、改めて感じているのである。
 ただ、これを公開していくのには、これまで以上の勇気が必要で、それを公開させるかどうか、揺れに揺れているのである。エピソードとして面白いわけではなく、真理恵との絡みも少ない。そんな中でわざわざ書き進める、わざわざ公開させる必要はないようにも感じるけれども、これがあるかないか、それによってボリュームが大きく違ってくる事も確かであって、実際の「公開」その意味と、僕の知り合い何人かへの「公開」それは全く違う意味合いを持っていて、その後者の存在が、僕のこの想いを大きく揺るがしている。
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