スコア稼ぎ短編小説集

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 私は曇りの日が嫌い。
 何せ竹を割ったような性格をしているものだから、あの晴れでもない雨でもない曖昧が天気にイライラするのだ。

「でも、あたしは曇り……好きかな」
「どうして?」
「だって、晴れてる日、暑いでしょ? だから、お外で本、読めない。雨の日も、本が濡れちゃうから……」

 だから、今日みたいな曇り、いいでしょ?
 彼女はそう言って儚げに笑った。
 今にも消えそうな笑顔に、私は胸がきつく締め付けられたような痛みを覚えた。

 彼女は、私の双子の姉であり、同時に一番の親友であった。
 いつも一緒に行動し、助け合う固い絆で結ばれたかけがえのない存在。
 ただ、体力バカな私と違って、彼女は体が弱かった。

 私が庭や校庭を走り回っている間、彼女はそれを見ているだけ。
 自分だけ楽しんでいることに申し訳なさを感じ、私は彼女に付き合って本を読むこともあった。もちろん難しい内容は理解できないので、児童書――の中でも低学年向け――だったが。

「どう? ……その本、面白い?」

 掠れたような、静かな声に、

「うん」

 としかかえすことができない私は、なんと無力なんだろう。
 私は溢れかける涙を、唇を噛みしめることでことで必死にこらえた。










 数年前まで、姉とここで本を読んでいたのを思い出す。
 庭の一番大きな木の下。

「姉さん……」

 私は還らぬ人となってしまった自分の姉に、話しかける。

『どうしたの? ほら、早く座って。一緒に本、読みましょ?』

 ゆっくりと、相手の心に語りかけるようなあの口調はもう二度と聞けない。
 気付けば、自分の頬を生温かいものが伝っていた。

「曇りの日も、いいものだね」

 私は、曇り空をちらりと見ると、太い幹の隣に腰を下ろし、本を開いた。
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