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1、目に見える世界と見えない世界
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僕は、人気のない街中の川に架かる橋の上に立って、川を覗き込んでいた。
ここから飛び込んだら死ねる。
そう思いながら。
苦しさへの恐怖が脳を占領するけれど、これで楽になれるんだと目を閉じる。
橋のガードを越え、その上に腰をかける。
あとは、身体を傾けるだけだ。
『死にたいのか?』
自分のすぐ横から声がする。
ばっと左を向くと、ロングコートにフードを被った人が立っていた。
『可哀想に。そんなに、齧られて。どうせ死にたいなら、俺が食べてやる。』
「たべっ・・?やばい人!食人まにあ?!!カニバリズム!!!」
僕は、小声で呟くと、バタバタとその人から距離を取ろうとしたけれど、橋の上だったこともあって、距離は全然取れずに終わった。
痛いのだけは嫌なんだけど・・・僕の終わりはこんな風なのか???
『はははは!違う違う。俺は、人の肉は食わないよ。食うのは、魂だよ。上質な魂は、食べると力になるからな。ほら、寒いし。とりあえず、家においで。傷でいっぱいだから、とりあえず綺麗にしてあげないと。
』
僕には、傷なんてないのに、この人は何を言ってるんだろう?
目深に被ったフードのせいで顔も見えない男に、僕は橋の上から抱えられ、そのまま手を繋いで家まで連れていかれた。
死ぬ気は削がれたが、家にも帰りたくなかった。
選択肢はなかった。
怪しいフードの家は、街の路地裏にあった。
小さな家に連れられ、暖炉の前に座らされる。
『秋でも、今日は冷えるから。暖まるといい。』
男は毛布を僕にかけてくれた。
「た・・・たべるんじゃ、ないの・・・?」
プルプルと震えながら、男を下から覗き込むと
『んー。せっかく美味しそうなのに、傷だらけで勿体ない。』
「あの、通じる言葉話してくれない・・・?」
僕は、毛布を頭まで被り、顔だけ出して話す。
『ふむ・・・信じるかは、お前次第だけど。その前に、名前は?俺は、クォン。』
「えと、リク。」
おずおずと応える。
『リク。そうか。今から話す事は、多分信じられないと思う。後で、証拠を見せてあげるけれど。』
そう言うと、クォンはゴソゴソと胸元を探り、ペンダントを出す。
『まず、この世界は、色々な階層になっていて、悪魔、魔物、魔獣、幻獣、神などが住んでる。ほかにも、色々なものがいる。だが、そういうものが見えるのは、ごく1部の人間に限られてる。』
クォンは、キッチンでお茶を煎れ、僕に温かなカップを差し出しながら話をする。
『魔獣とかは、森でたまに見るとは思うがな。神とかは見えない奴が大半だ。見えるやつは、神託ギルドというところに登録してる。俺は、ギルドの一員だ。』
カップに口を付けながら話を聞く。
ふわっといい匂いの香る紅茶は、少し甘くておいしい。
『俺は、生きてる死神みたいなもんだ。人の魂の力を借りながら、神の意図を反映させることを仕事にしてる。お前は、他のやつより魂の輝きが綺麗で、美味しそうだ。』
「輝きが綺麗って、なんだよ?」
『んー、格が、違うってことかな。美味しそうだから、色んなやつに狙われて、齧られてるんだよ。』
「信じられない。」
速攻で、クォンの言うことを否定する僕。
『まあ、そうだろう。これを通して、自分の体を見てみろ。』
クォンは、薄いガラスの板が付いたネックレスを僕に渡してくる。
僕はガラスを通して、自分の手を見る
「ぎゃああ!!!!とって!とって!!!!」
僕の指を、小さな黒い塊が齧っていて、血が流れていた。
ーーバシッ!
クォンが黒い塊を手で払い除けると、黒い塊が霧散して消えた。
『まぁ、これが、俺の見えている世界。こいつらから、リクを守る代わりに、リクが死んだら、俺に魂を食わせて欲しい。』
「いや、そもそも死にたいから、守るもなにも、生きたくないんだけど。」
『・・・死んじゃったら、俺と話が出来なくなるだろ。とりあえず、今日からしばらく傷を癒すから』
僕の死にたい気持ちをさらっとかわして、クォンはベッドに僕を連れて行った。
毛布の上から抱きしめられ、背中をトントンと軽く叩かれる。
フードをとったクォンは、前髪が長く犬歯の鋭い色白のイケメンだった。クリっとした目に二重まぶたと、ぱちっとした目は女ウケがさぞいいだろうに、フードで隠すのは勿体ない。
そんな事を考えながら、トントンとリズムよく叩かれる背中に、段々と眠気を誘われ、夢の中に落ちていく。
ここから飛び込んだら死ねる。
そう思いながら。
苦しさへの恐怖が脳を占領するけれど、これで楽になれるんだと目を閉じる。
橋のガードを越え、その上に腰をかける。
あとは、身体を傾けるだけだ。
『死にたいのか?』
自分のすぐ横から声がする。
ばっと左を向くと、ロングコートにフードを被った人が立っていた。
『可哀想に。そんなに、齧られて。どうせ死にたいなら、俺が食べてやる。』
「たべっ・・?やばい人!食人まにあ?!!カニバリズム!!!」
僕は、小声で呟くと、バタバタとその人から距離を取ろうとしたけれど、橋の上だったこともあって、距離は全然取れずに終わった。
痛いのだけは嫌なんだけど・・・僕の終わりはこんな風なのか???
『はははは!違う違う。俺は、人の肉は食わないよ。食うのは、魂だよ。上質な魂は、食べると力になるからな。ほら、寒いし。とりあえず、家においで。傷でいっぱいだから、とりあえず綺麗にしてあげないと。
』
僕には、傷なんてないのに、この人は何を言ってるんだろう?
目深に被ったフードのせいで顔も見えない男に、僕は橋の上から抱えられ、そのまま手を繋いで家まで連れていかれた。
死ぬ気は削がれたが、家にも帰りたくなかった。
選択肢はなかった。
怪しいフードの家は、街の路地裏にあった。
小さな家に連れられ、暖炉の前に座らされる。
『秋でも、今日は冷えるから。暖まるといい。』
男は毛布を僕にかけてくれた。
「た・・・たべるんじゃ、ないの・・・?」
プルプルと震えながら、男を下から覗き込むと
『んー。せっかく美味しそうなのに、傷だらけで勿体ない。』
「あの、通じる言葉話してくれない・・・?」
僕は、毛布を頭まで被り、顔だけ出して話す。
『ふむ・・・信じるかは、お前次第だけど。その前に、名前は?俺は、クォン。』
「えと、リク。」
おずおずと応える。
『リク。そうか。今から話す事は、多分信じられないと思う。後で、証拠を見せてあげるけれど。』
そう言うと、クォンはゴソゴソと胸元を探り、ペンダントを出す。
『まず、この世界は、色々な階層になっていて、悪魔、魔物、魔獣、幻獣、神などが住んでる。ほかにも、色々なものがいる。だが、そういうものが見えるのは、ごく1部の人間に限られてる。』
クォンは、キッチンでお茶を煎れ、僕に温かなカップを差し出しながら話をする。
『魔獣とかは、森でたまに見るとは思うがな。神とかは見えない奴が大半だ。見えるやつは、神託ギルドというところに登録してる。俺は、ギルドの一員だ。』
カップに口を付けながら話を聞く。
ふわっといい匂いの香る紅茶は、少し甘くておいしい。
『俺は、生きてる死神みたいなもんだ。人の魂の力を借りながら、神の意図を反映させることを仕事にしてる。お前は、他のやつより魂の輝きが綺麗で、美味しそうだ。』
「輝きが綺麗って、なんだよ?」
『んー、格が、違うってことかな。美味しそうだから、色んなやつに狙われて、齧られてるんだよ。』
「信じられない。」
速攻で、クォンの言うことを否定する僕。
『まあ、そうだろう。これを通して、自分の体を見てみろ。』
クォンは、薄いガラスの板が付いたネックレスを僕に渡してくる。
僕はガラスを通して、自分の手を見る
「ぎゃああ!!!!とって!とって!!!!」
僕の指を、小さな黒い塊が齧っていて、血が流れていた。
ーーバシッ!
クォンが黒い塊を手で払い除けると、黒い塊が霧散して消えた。
『まぁ、これが、俺の見えている世界。こいつらから、リクを守る代わりに、リクが死んだら、俺に魂を食わせて欲しい。』
「いや、そもそも死にたいから、守るもなにも、生きたくないんだけど。」
『・・・死んじゃったら、俺と話が出来なくなるだろ。とりあえず、今日からしばらく傷を癒すから』
僕の死にたい気持ちをさらっとかわして、クォンはベッドに僕を連れて行った。
毛布の上から抱きしめられ、背中をトントンと軽く叩かれる。
フードをとったクォンは、前髪が長く犬歯の鋭い色白のイケメンだった。クリっとした目に二重まぶたと、ぱちっとした目は女ウケがさぞいいだろうに、フードで隠すのは勿体ない。
そんな事を考えながら、トントンとリズムよく叩かれる背中に、段々と眠気を誘われ、夢の中に落ちていく。
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