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一部
花のような人間
しおりを挟む花だった。
まるで花のような人間だった。
彼とも、彼女とも言えない人間は、例えるなら花のような人間だった。
その人間の髪は今にも溶けて消えてしまいそうな、まるで空のような色をしていた。
目の上で切り揃えられた前髪と、必死で髪をかき集めれば束ねられそうなくらいの長さの髪。
遠くを見据える瞳は琥珀色。
横顔はまるで少女のようで、どこか少年のようにも見える。
ふっくらとした紅色の唇にギザギザの歯。
その人間が好んで着るタートルネックの下にはしっかりした筋肉がついており、何処か成人男性のようにも思える。
まるで湖のように深い声をしているが、小鳥の囀りにも例えられる不思議な声だ、と人間と話した者は表現する。
その上、人間は白がとてもよく似合っていた。
膨張色である白を着こなせる人間など滅多に居るものではない。
それだけでも価値のあることだ、と人間自身何度も呟いていた。
その人間には遥か遠くを見据える力があった。
視力云々の話ではなく、未来を見れた。
人間は予知が出来たのだ。
人間はその力を使い、占いのようなことをして小銭稼ぎをしていた。
しかしそれは全て嘘であった。
それが明らかになったのはミスのような物だった。
ある日、とある男に「部屋にいる貴方の恋人が30秒後に怪我をする」と予言したのだが、その男には恋人なんて居なかったのだ。
落胆する周囲の人間。
彼の側に居た彼の友人は笑い、人間が占った男の肩を抱きながら「こいつは寂しい人間なんだ」と説明し始める始末。
その瞬間、何を思ったか人間は周囲の人間を罵倒し始めた。
その結果人間は職を失ったのだ。
小銭稼ぎではなく、あれで生計を立てていたその人間は路頭に迷うことになる。
と、周囲の人間は思った。
人間は今も生きている。
綺麗な服を着て、綺麗な飯を食べ、美しい景色を月に数回見に行く余裕すらある。
その人間こそこの私。
隠れ家では一応ある事を担当している私だ。
勿論、男の手で死ぬ私ではない。
あの人間と私は全くの別人と言っても差し支えないであろう。
全くの別人だ。あぁ。
死なないよ私は。絶対に。
ここに来たのは予言で見た人間がどう死ぬかを見届けたかっただけだ。
無様に死ぬ同類を笑うために来た。
こんな選択をしたから死ぬのだと嘲笑うために。
今思っても笑えてくる。
どんな選択をしようが、血の色は変わらないんだよ。
どう生きても、お前を苦しめた人間と同じ血が流れているということは変わらないんだよ。
悲しいね。悲しいんだよ。
それが人生だと唄う馬鹿も悲しいね。
悲しいんだよ。
たった二文字で苦しさ全てを表すなんて、悲しかったんだね。
悲しかったね。
そうだ、最後の日には君を表す花を贈ろう。
「オダマキ」なんて良さそうだ。
花言葉は「愚か」そして……
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