本当の主人公 リメイク版

正君

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六章

49話 龍馬のために

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2日目の昼。
これからみんなで観光らしい観光をしようという話になった。
その結果、まずはここのご当地グルメなるものを食べてみたいなという結論になったんだよね?

ここは海産物が有名だから、行くとしたらそういう場所かなっていう話になった。
でもある問題が起きた。それは龍馬君。
龍馬君が魚介類苦手で食べれないんだよね…。
でも貝とかはギリギリ食べれるらしいけど、今まで散々私達に合わせてくれた龍馬君に恩返しをしようっていう…流れになったんだ。

「でもこのあたりでお魚出さないチェーン店以外のお店ってあるかな?」
彩ちゃんのその発言から地獄が始まった。
無い。
どこにも無い。
魚出すとこしかない。
定食屋でも魚。というか定食屋閉まってるし。

肉を出すお店あると思ったら値段が高すぎて入れない。
その上土地勘が0なせいでうろうろしてたら路地裏みたいなとこ入ってキャッチに引っ掛かって明人君が泣いちゃう始末。

もう終わった。人生終わり。

「せっかくの旅行なんだしチェーン店っていう逃げ道は作らないでおこうぜ!」
っていう智明の地獄みたいな提案に、地図だったりお店だったりを調べまくったせいで全員の携帯の充電が切れるという非常事態。
最悪。最低。生き地獄。

重いかなと思ってポラロイドカメラ持ってこなかったせいで景色も撮れないし。
昼に出たのにもう夕方。
オレンジ色に染まった夕日が意味分かんないくらい綺麗。
最悪。

「あー!もう!なんでないねん!こんなとこに電柱置くなや!!なんで電柱あって店無いねん!!!!」
まぁ錯乱して電柱に喧嘩を売る晶を見れたのは良かったけど。
面白いし。

「僕お魚出すとこでもいいのに…。」
「俺らに合わせてくれてる龍に申し訳ないだろ?」
「…それは気にするのに何時間も歩かせてる事は気にしないんだ。」
ヴッ
龍馬くんって結構痛いとこつくな。
ど正論。

「なあ、僕正直昼飯よりも携帯充電する場所が欲しい。」
明人君…確かにそうかも。みんなスマホ中毒だから禁断症状出てるもんね。
「推し実況者が新シリーズ始めるんだよ、観なきゃ生きてけない。」
なるほど…それは早く観たいね(モバイルバッテリー持ってきなよ)。

なんて思っていると、智明が知っているのか明人君にこう質問した。

「あー、前言ってた最近結婚した人か?」
え?嘘…明人君の推しと言ったらあの人だよね…心当たりあるな…。
「え!あの人結婚したの!?あの…一回めちゃくちゃ炎上した人だよね?」
気になった私も明人君に質問してみると、明人君が二度頷きこう答えてくれた。
「そうそうデキ婚らしい、でまた炎上してる。」
「なんで?愛があるならいいんちゃう?」
「というかギリギリまで私と結婚すると思ってた。」
「私も思った!」
「一回リプ返貰っただけで何言ってんの?うちフォロバ貰ったで。」
「不倫してるじゃん。」
「最低男。」
「ファンやめます。」

…しまった、龍馬君を置いてけぼりにしちゃった。

「龍馬君、龍馬君は好きな配信者さんとかいる?」
私達の後ろでにこにこしながらお話を聞いていた龍馬くんにこう尋ねてみると、顔を上げ、何かを思い出しながらこう答えてくれた。
「んー…智明と晶さんがおすすめしてくれた配信者さんを観るくらいで…推しとかはいないかな…。」
「あの配信者さん面白いやろ?頭良さそうな話し方やのに実はめっちゃビビりというか…そんな感じのとこが可愛いんよ!」
「だよね…早く続き観たいから電波良い所行きたいのにな…。」
……申し訳ない、本当に。
でも食べる場所が本当に何処にも無くて…。

そんな時、彩ちゃんが龍馬君や私達の顔を見ながら唸っている智明へ、何処かを指差しながらこう言った。

「智明君…もう最後の手段しかないよ…。」
彩ちゃんが指差した場所には…私達がいつも行っているファミレスが。

「でも…せっかくの旅行なのに…。」
「智明、もういいよ…お腹すいたし早く行こ…?いつものファミレス…。」
「……そう、するか…。」




ため息が出た。
運ばれてきた料理の香りが素晴らしくて。
みんなで一斉に手を合わせ、いただきますと言ってから、それぞれがそれぞれの頼んだ料理を口に運んだ。

智明はステーキで龍馬君はハンバーグ。
晶はアサリのスープパスタ、彩ちゃんは小さめのマルゲリータとサラダ。
明人君はドリアとコーンスープ、私はミートソースのパスタ

久しぶりだ。食べた瞬間食べた事を後悔しないの。
いつもだったら嫌悪感というか…顔が腫れたようなそんな感じがして嫌だったのに。

トマトソースのパスタが美味しいと感じる。
麺が太めのなのが良い…モチモチしててソースとよく絡む。
自然と笑みがこぼれてくる。
美味しい。美味しすぎる。

「…うめぇ…ここの飯ってこんな美味かったっけ…。」
「パスタもなかなかいけるで、頭おかしくなりそう。」
「私もうダイエット辞めたから食べ終わったら絶対デザートも食べる…。」
「僕も食べたい…プリンあったっけ…?」
「明人これも食べな、美味しいよ。」
「…ほんとだ、なんかめっちゃ味濃く感じる…。」

…いいな、ご飯食べれるって。

パスタを完食し、追加で頼んだアイスを食べていると、ふと明人君と目が合った。
みんなにばれないよう少しだけ頷いてみると、明人君が少しだけ微笑んでからすぐに目を逸らした。

…優しい子だな、明人君は。
……本当。
私なんかの愚痴を聞いて…その上心配までしてくれて…喜んでもくれて…。




…明人君みたいに優しい子が、龍馬君に嫌われたいなんて理由で襲ったりするかな。
明人君がもしそんなに自分勝手な子だったら…自分中心で生きてるんだとしたらあの時の私の愚痴なんてそれなりに誤魔化してしまうんじゃないかな。
確か龍馬君は自分の恩人と龍馬君が似てて…そんな理由で好きになった自分に嫌気がさしたし、申し訳ないと思ったから、嫌われるために襲ったんだよね?
…でも、でももし…私だったらどうする?

私だったら…きっかけがそれだからって、そんなに考え込むかな?
今の明人君は龍馬君が好きなんでしょ?だったらそれで終わってよかったのに。
そういう思いがあって襲った明人君が今も龍馬君の側にいるのはおかしいよ。


…そういえば何で龍馬君と明人君は仲良くなったの?
大人しい姿で近付いたんだっけ?でも今の二人を見てたら素のままの明人君でも仲良くなれてたと思うんだけど。
…いや、よく考えてみたら素の明人君と龍馬君が4月に会ってたら仲良くなれたかどうかは分からないな。

大人しくておっとりしてたから龍馬君は話しかけられたし智明とも仲良くなれたのか。

…最初は弱い姿で近付いて、本性を出しても変わらず仲良くしてくれる環境を作った?
襲ったとしてもずっと仲良く…いや、友達以上に親密な関係になれるような…きっかけさえあれば…それさえ作れれば明人君が襲った事実を揉み消せる…?
いや…まず襲う事も想定内?
そうか。
明人君が優しい子で人の痛みに敏感なんだとしたら龍馬君を襲うなんて事するわけない。
龍馬君は襲われることを何とも思ってない?
むしろ嬉しかった、喜んでいたと仮定したら?なんでそれが分かる?分かる人が身近にいる?

…明人君はどうしても龍馬君と付き合いたい理由があった?それともどうしてもセックスがしたかった?二つ目は絶対無いな。
…作戦を思案した人にとって邪魔な存在がいて…それを消す為に明人君を利用したとかそういう説はあるかな?

明人君と龍馬君を付き合わせた上に邪魔な人を除外するには…何がいる?
二人の仲を取り持つ何か…今までしてきた行動で何か無いかな。

いや、今までの行動じゃない。


…旅行だ…。
行き道ではずっと側にいた。邪魔者は無しで…。

…待って、明人君と龍馬君の仲を取り持つために不必要な存在って誰だ?
明人君のお姉ちゃんの彩ちゃん?パラ?晶?私?シジャクちゃん?
…智明か?
龍馬君の側にずっといる人間といえば智明だ。

智明を除外するとしたら…私の存在は必要不可欠だ。
だからわざとチームを分けた…?

…待って、恩人に似てると言われた時の龍馬君から聞こえた警報は…?
それ以外にも何度も何度も鳴ってる。
全部智明に関係がある時だ。
智明が嫌い?好き?コンプレックスの塊とか…智明と自分を比べられた?
智明に似てると言われたのがトラウマ?

…何か、智明の事で…それとも、誰かに似てるという事が龍馬君の地雷なんだとしたら…。
…それを癒す力が明人君にあるんだとしたら…あのときわざと「恩人に似てる」と言わせた?
…龍馬君の傷口を抉ってでも二人をくっつけようとしてる人がいる?
もしいるんだとしたら。

…あの人しかいない。
あの人の…伝説になったあの人の…娘しか。


「…朱里?どしたん?」

この女は今私の心を読んでない。
少し前はずっと読んでいた。
なら龍馬君の考えも明人君の考えも分かってるはず。

…賭けに出るか。

「ちょっと…BL漫画の事思い出してただけ。」
「へぇ…どういう漫画?」
「高校生の恋愛。」

興味津々でこっちを見てる晶と彩ちゃんにこう言ってみると、彩ちゃんは「どんな話だった?」と食いついてくれた。

晶は…彩ちゃんに乗っかって質問してきたな。
「うちも気になる…作者さん誰?後で読ませて!」

……うん、はっきり聞こえたよ、アラーム。
はっきりと。

…高校生、男の子同士の恋愛に心当たりがあるんだね、晶。
分かったよ。

「…あ、ちょっと待って、晶…トイレ行きたい、ついてきて。」
「いいよ、場所分からへんの?」
「そう…早く来て。」

もし晶が明人君と龍馬君二人を苦しめるつもりなら…私は…。





「じゃあうちここで待ってるわ、行って来……ッ!!」
いつも通りのテンションでのんびりとしている晶の腕を引き、女子トイレの個室へ押し込んでから思い切り壁に押さえつける。 
「痛……。」 
めんどくさそうに、顔を横に振って乱れた前髪を適当に直す晶。 

「晶…今何考えてんの?龍馬君と明人君の事利用してるでしょ?」
眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をしている晶にそう問いかけると、軽く…まるで自分の行動が正義であるかのようにこう答えた。

「?うん、やったら何?」

…信じられない。 
人の人生がかかってるのに、なんでそんな…。 
……晶だって、どうしようもなく不安な筈でしょ。 
自分の非力さで人が死ぬところを何回も見てきた筈なのに。 
もし晶が失敗してあの二人を追い詰めたら……!?

「今度は龍馬君の人生まで壊す気?萌奈さんの時から何も学習してないの!?」 
……あっ。
叫んでから後悔した。
晶の胸ぐらをつかみ、つい大声で怒鳴ってしまった事を。 

すると、晶が一瞬驚いた表情をしてから大きく息を吐き、私を睨みつけぼそりとこう呟いた。 

「あのな?朱里はさ、そんな大した経験してないやろ?やのになんでうちにそんな派手なこと言えるん?」 

…! 
大した経験……して……ない…。
……確かに、晶に比べたら…私の、苦労なんか……。

……

晶の言葉が妙に心に張り付き、晶を押さえつけていた手から力が抜ける。 
すると、晶が力の抜けた私の手を払いのけ、少し乱れた服を直しながら、また、ボソボソと囁くように話し始めた。 

「……うちはまだガキやから世の中のことはわからんよ、でも…お前よりかは分かってるって自信あるぞ?」 
「…晶…私は…晶を」 
晶の言葉に何かを返そうとすると、晶の細いけどゴツゴツと骨ばった手で口を抑えられる。 

「黙れ朱里……お前は女子高生の真似でもして普通に暮らし、お前はうちに比べりゃまだ普通なんやから。」 

…晶……。




…ねえ、晶。 
普通って、そんなに大切なの? 
私達には…普通に生きることより大切な事があるんじゃないの…?

晶の骨ばった手を握り、どこか不安げな顔をしている晶へ
「私は、晶と生きたいよ。」と伝え、教えて欲しいと態度で示すと、見た事の無いくらい怯えた表情をして30秒程悩んでから…私の耳へ唇を近付けこう囁いた。 

「朱里、龍馬はな」


……



……。 

空っぽになった頭の中にアラームが響き渡った。
私と晶、そして…ある人のアラームが。響いた。 

…。


「…次は、どういう事するの?」
「……旅行が終わったら、嫌な事が起こりそうな予感が……する…やから…何をしてもいいから監視していて欲しい。」
「晶の勘は当たる、晶の為なら何でもする、私と晶は二人でひとつ。」
「……頼ってごめん、朱里が居なうち生きてけへん。」
「気にしないで、私もそうだから。」

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