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六章
53話「開花」
しおりを挟む龍馬さんや自分の事で悩んでいると、久しぶりに父の姉…つまり彩の母親、僕の叔母さんから連絡がきた。
「何か悩みがあるなら言いなよ!」
という懐かしい声を聞いて、叔母さんの家に行き、龍馬さんの事や自分の考えについての相談をする事にした。
「男より女の子にしなさいよ」
「そんなの一時の気の迷いよ」
「彩と一緒に病院行ったら?」
「お父さんもきっと孫の顔が見たいはずよ」
「明人くん結構モテるらしいじゃないの!」
「良い子見つかるといいわね!」
と、彼女の優しさ溢れる言葉を聞いて…心に封印していた氷のようなものがゆっくりと溶けていく気がした。
叔母さんの家を出て、駅に向かう。
その間も、ずっとあの人の言葉が頭から離れなかった。
「男より女の子にしなさいよ」?
「一時の気の迷い」?
優しさ溢れる言葉?バカ言え。
あの人はただ僕に…僕達に普通でいてほしいだけだろ。
そりゃあそうだ。
ただでさえ僕みたいなじめじめした男が男と付き合いでもしたらただでさえ悪い評判が更に悪くなる。
僕みたいな男が。男の僕が。
普通ならそう言うだろう。
これ以上家を、 いや、自分を悪く見られたくないだろうしな。
足に力が入って。
目がジリジリと霞む。
想いや考えがベリベリと剥がされ、脳に直接「こうすればいい」と
誰かが指示を出してくる。
なにかがザクザクと崩れていく音がする。
例えるのなら、雨に打たれる砂の城のように。
懸命に作り上げたものが、勝手な都合や環境で崩されていく。
「つまらない。」
立ち止まり、そう言葉に発した瞬間、空模様が先程と打って変わって大粒の雨が降り出した。
天気予報を裏切り、いきなり降り出した雨に周りの人間は焦り近くの店に駆け込む。
だけど、僕は焦らなかった。
それどころか、駅という目的地を諦め、自宅という道を選んだ。
言わずとも分かっているだろうが、いや言わなければ分からないだろうが…電車を乗らなければ帰れないほど、叔母の家と彩と僕の家はかなり遠い。
だけど、今は歩きたい気分だった。
雨に抵抗するように、何か薄い壁のようなものを粉々に叩き割れるように、足に、身体に、全てに力を入れて歩く。
雨水を吸って肌にべたりと張り付くシャツを脱ぎ肩にかける。
そして、ビショビショに濡れた髪をかきあげる。
…負けるものか。
どうしてあの人の言う通りに動かなければいけない。
どうして誰かの言う通りに動かなければいけない。
どうして普通に生きなければいけない。
どうして僕だけが夢を見られない。
あいつ如きに言われた程度で諦めるものか。
拒絶された程度であきらめるものか。
どんな手を使っても手に入れてみせる。
どんな事をしてでもあの人を僕のものにしてみせる。
どんな事をしてでもあの人を救ってみせる。
智明に言った言葉の意味がやっと分かった。
文句を言いたいのなら好きに言え。
ただ見てるだけのお前なんかに、僕達の意思は曲げられない。
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