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VIVA
03.Aqr
しおりを挟む炭の弾ける音。遠くから私の様子を伺う彼の声。薬っぽいお湯の香り。
汗を流したいだけだと言ったのに、彼は私のためだけに大がかりなお風呂を準備してくれた。
私が一週間居た場所は彼の家の地下室だった。彼は、広く寂しい、町外れの山奥に建てられた屋敷にたった一人で住んでいたのだった。
子供の頃、お父様から「あの屋敷には怖いお化けが住んでいる」と教えられていた屋敷に、彼は一人で住んでいたのだ。
私が彼の側にいたのは、たった一週間だった。私は、ほんの一部で彼の全てを知った気になっていたのだ。
彼が聞かせてくれるお話は、いつも、とても面白かった。薄い緑色のお湯を撫でながらそう思う。
これが私の初恋なのかもしれない。私は一瞬そう思い、浅いお湯に頭まで沈むことで、自らの奇怪な考えを否定した。
こんなんじゃ、私の、先生みたいだ。
彼と違い細い手足、細い腰。先生の理想が詰まった私の身体。
高い声。シルクのようだと言われた私の歌声。身が穢れるとその声が消えて無くなると言われ続けていた。
無くしたいと、ずっと思っていた。
先生が、今の私を見たらどう思うかな。穢れたと、思うのかな。思って、くれるのかな。
そういえば台本の読み合わせがまだだったな。それだけが、唯一の、心残りかもしれないな。
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