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正君

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VIVA

11.Lib

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 ネイと引き離されたあの日。家に帰ると、怖い顔をしたお父様とお母様二人に呼び出された。
「あの男とどういう関係なんだ」
 恐ろしいお父様の顔。私は拳を固く結び、意を決して、こう発言した。
「愛し合っています。お父様と、お母様のように」
 顔を見合わせるお父様とお母様。
「許嫁が、いるのに?」
 不安そうにそう呟くお母様。
「彼は私を愛していない、彼の家が私の家を愛しているだけ」
 私の言葉を聞き、お母様の代わりに、彼女の背を撫でながらお父様がこう答えた。

「それが許嫁というものだ、お前も彼の家が好きだろう」
「嫌いです。昔から私を少女として扱うあの家は大嫌いなんです。何をしても好きになれません」
「お前を少女として扱わなければ、好きになれるか」
「嫌いです」

 背筋が伸びるのを感じた。
 喉の奥が力み、深呼吸ができない自分に気付いた。

「お前はもう大人なんだ、自由になりたいだとか、抑圧されたくないという言葉がどれだけ無責任なのか」
「自由を願うだけで責任が必要になるんですか。お父様お母様。これは反抗なんかじゃありません」
 泣きそうな顔をするお父様とお母様。
「私は自由を切望しているだけです。ただ彼の側にいたい。私らしく生きていきたい。ただそれだけなんです。それだけを切望しているんです」
 産まれて初めて、お父様とお母様に逆らった。
「お母様、貴方が心の底から『欲しい』と切望しているのは好きな男のペニスだけ。私の幸せなんて望んでいない」
 震える手、頬を流れる熱い涙。
「自由になりたいと言っておきながら行動もしなかった貴方と私は違う」
 お母様の頬にも涙が伝った。
「三人目のお父様、四人目のお母様、貴方に私は曲げられない」
 立ち上がる。彼らは私を追わなかった。
「一人目のお母様に産んでくれてありがとうと、お父様にはお母様に苦しみを与えた事を憎んでいると伝えてください」
 頷くお父様。
「二人目のお母様には、育ててくれてありがとうと、お父様には女遊びを繰り返したことを悔いろと伝えてください」
 涙を流しながら、微笑むお母様。
「三人目のお母様には、どうか、幸せでいてくれ、と、伝えてください」
 震える声。お母様は立ち上がって私を抱き締めてくれた。
「今の、お母様、お父様、貴方二人には、これを、伝えさせてください」
 お母様と同じように私を抱き締めてくれるお父様。
 私の背を撫で、相槌をうってくれるお母様。

「私が、生半可な、気持ちで、貴方達を、裏切らないよう、色々、考えさせてくれてありがとう」
「……ああ、僕の愛しの子、どうか健やかで」
「向こうについたら手紙を書いてね」
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