VaD

正君

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avid

08.WE JUST WANT YOU MAKE IT CLAP!!!!

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 爆発した。
 例え話じゃなくて、マジで爆発した。
 少女は手に持った火薬を鍋にぶち込んで火をつけた。
 その結果、爆発した。
 僕はそれを見ていることしか出来ず、何故か一番怯えている少女の手を掴み、その場から逃げ去った。

「あれを使って、劇場を粉々にしたい」
 少女は怯えておきながらもそんな言葉を口にする。
「私の自我を踏みにじって蹂躙したあの劇場なんか消えてなくなればいい」
 少女の言葉には一理あった。
 いや一理どころじゃない。その場にいたみんなが少女に同意していた。言うなれば四理あった。面白くないからこの例えはやめよう。
 みんなと言ってもたった三人だけれど、僕達にはそれしかなかったんだ。

 頷く悪魔、僕の弟は許嫁の顔を見つめてから、爆破はやめないかと止め、その言葉を聞いた少女は簡単に爆破案を諦め、一応責任を感じてはいたのか、煤まみれになった僕達の隠れ家を一人で掃除した。

 爆破がダメなら、爆破したように見せかけるのはどうだろうか。
 そう発言したのは僕だった。
 三人は同意し、まるで、舞台設計を考えるように、まるで、演技の打ち合わせをするかのように、僕と弟にとっては初めて、悪魔と少女にとってはいつも通り、床に座り込み、大きな画用紙に好きに書き込んでいった。

 たのしかった。
 悪魔が考える、悪魔の体格に似合わないくらいスケールの小さすぎる作戦に、少女の体格に似合わないくらいスケールの大きすぎる作戦をまとめる、乱雑だと思われていた僕の弟の繊細な言葉。
 そして、色んな人達から頼られ続けていた僕が投げ掛ける沢山の質問。答えてくれる笑顔の三人。

 この場では、僕達四人が、居たい姿で居られた。

「もし火薬を誤飲したらどうなるんだろ」
「死にはしないよ」
「じゃあこれ燃やしたら?」
「煙を吸わなければ死なないよ」
「ハニー、なんでそんな不慮の事故で起こりうる死因について詳しいの?」
「不慮の事故でも良かったからだよ」
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