2 / 3
第一話 記憶の欠片
しおりを挟む
――――ここはどこだろうか。
平衡感覚や身体の感覚、全てが曖昧となり、時空が歪んでしまったような空間。
刻々と薄れゆく意識の中、今まで考えまいと強く心の奥底に仕舞い込んでいた思い出。
幼き日の出来事すら、昨日のことのように鮮明に蘇る。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、アレンの使ってる魔術って何で属性がないの?」
隣に座り込み、首を傾げながら少女が俺の顔を覗き込む。
草原に吹く心地よい風が、ショートに切り揃えられた桃色の鮮やかな髪を揺らす。
「さぁな、つまりあれだ。可能性は無限大! 何属性にでも染められるってことだな。きっかけさえあればとんでもない魔術も扱えるようになるってわけだ。俺の黒髪に因んだ黒魔術とかいいよな」
「はぁ......そんなこと言い始めてもう五年は経つよ? 十歳の頃から魔術を習い始めてもう五年。私なんかとっくに火属性の中級魔術も使えるのに、アレンってば未だにちょっとした防御魔法しか使えないじゃん」
隣に座る少女は額に手を当て、呆れたと言わんばかりの視線をこちらに向けると、ため息を吐き出す。
「なっ、いいだろ別に! そんなこと言ってるといざという時に守ってやらねえからな!」
俺は仰向けになっていた体制をバッと起こし、食ってかかるように反論する。
「はいはい、低級モンスターに破られるような防御魔法に守られないよう善処しますよ~」
少女は両手を上に向け肩をすくめると、おどけたように俺を挑発した。
「ヘレナてめぇ......今日という今日は許さねえ! そこまで言うなら禁足地まで付き合ってもらうからな!」
「えっ、嘘でしょ!? あそこには立ち入っちゃダメって村長からも散々言われてきたじゃない!」
ヘレナの表情が急に固まり、先程までの余裕が目に見えてなくなっている。
「おいおいまさかビビってんのか? 中級魔術が使えるヘレナさんよぉ?」
今度は俺がニヤニヤと煽るような表情を浮かべ、ヘレナに毒気づいた。
「そ、そんなわけないでしょ! いいわよ行ってやろうじゃないの禁足地に!」
ヘレナは顔を真っ赤にさせ、身体を強ばらせている。負けず嫌いなこいつなら絶対に乗ってくると思っていたが、予想通りの反応だ。
「でもこの格好じゃ少し心配よね......」
ヘレナは不安そうに自分の身に着けている装備を見下ろす。
二人の身に纏う装備はレザー製の安っぽい生地で出来た革の装備一式だ。唯一胸当てだけが鉄で出来ている。
「ま、禁足地に行けばきっと伝説の装備や金銀財宝が隠されてんだろ! それなら村長が必死に言い聞かせてたのにも納得できるしな」
不安を拭うように笑みを浮かべ、禁足地に希望を見出す。
そう......そこにもしかしたら俺の魔術を開花させるきっかけがあるかもしれないのだ。
「そうね、ここから禁足地までは一時間くらいかしら? ちゃちゃっとお宝ゲットして帰りましょ!」
「そうだな、俺の防御魔法が火を吹くぜ!」
「無属性のくせにどうやって火を吹かせるつもりなの?」
俺たちは互いに下らない雑談を交わしあいながら、禁足地へと歩を進めた。
――この出来事が、一生俺を後悔させるとも知らずに......。
平衡感覚や身体の感覚、全てが曖昧となり、時空が歪んでしまったような空間。
刻々と薄れゆく意識の中、今まで考えまいと強く心の奥底に仕舞い込んでいた思い出。
幼き日の出来事すら、昨日のことのように鮮明に蘇る。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、アレンの使ってる魔術って何で属性がないの?」
隣に座り込み、首を傾げながら少女が俺の顔を覗き込む。
草原に吹く心地よい風が、ショートに切り揃えられた桃色の鮮やかな髪を揺らす。
「さぁな、つまりあれだ。可能性は無限大! 何属性にでも染められるってことだな。きっかけさえあればとんでもない魔術も扱えるようになるってわけだ。俺の黒髪に因んだ黒魔術とかいいよな」
「はぁ......そんなこと言い始めてもう五年は経つよ? 十歳の頃から魔術を習い始めてもう五年。私なんかとっくに火属性の中級魔術も使えるのに、アレンってば未だにちょっとした防御魔法しか使えないじゃん」
隣に座る少女は額に手を当て、呆れたと言わんばかりの視線をこちらに向けると、ため息を吐き出す。
「なっ、いいだろ別に! そんなこと言ってるといざという時に守ってやらねえからな!」
俺は仰向けになっていた体制をバッと起こし、食ってかかるように反論する。
「はいはい、低級モンスターに破られるような防御魔法に守られないよう善処しますよ~」
少女は両手を上に向け肩をすくめると、おどけたように俺を挑発した。
「ヘレナてめぇ......今日という今日は許さねえ! そこまで言うなら禁足地まで付き合ってもらうからな!」
「えっ、嘘でしょ!? あそこには立ち入っちゃダメって村長からも散々言われてきたじゃない!」
ヘレナの表情が急に固まり、先程までの余裕が目に見えてなくなっている。
「おいおいまさかビビってんのか? 中級魔術が使えるヘレナさんよぉ?」
今度は俺がニヤニヤと煽るような表情を浮かべ、ヘレナに毒気づいた。
「そ、そんなわけないでしょ! いいわよ行ってやろうじゃないの禁足地に!」
ヘレナは顔を真っ赤にさせ、身体を強ばらせている。負けず嫌いなこいつなら絶対に乗ってくると思っていたが、予想通りの反応だ。
「でもこの格好じゃ少し心配よね......」
ヘレナは不安そうに自分の身に着けている装備を見下ろす。
二人の身に纏う装備はレザー製の安っぽい生地で出来た革の装備一式だ。唯一胸当てだけが鉄で出来ている。
「ま、禁足地に行けばきっと伝説の装備や金銀財宝が隠されてんだろ! それなら村長が必死に言い聞かせてたのにも納得できるしな」
不安を拭うように笑みを浮かべ、禁足地に希望を見出す。
そう......そこにもしかしたら俺の魔術を開花させるきっかけがあるかもしれないのだ。
「そうね、ここから禁足地までは一時間くらいかしら? ちゃちゃっとお宝ゲットして帰りましょ!」
「そうだな、俺の防御魔法が火を吹くぜ!」
「無属性のくせにどうやって火を吹かせるつもりなの?」
俺たちは互いに下らない雑談を交わしあいながら、禁足地へと歩を進めた。
――この出来事が、一生俺を後悔させるとも知らずに......。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる