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農作業開始
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まだ王国らしからぬ王国に戻り私は唖然とした。
「カレンよ!こんなもので良いか!?」
お父様とじいやは大きな犬のように「褒めて褒めてオーラ」を出しているが、褒めるを通り越して引いている。私は二人に鍬を持たせ土を耕すように頼んだつもりだったけど、目の前にはまるでユンボで土を掘り返しているかのような山盛りの土と地面の下で作業している二人がいる。しかも鍬だけでこんなに土を掘り返しているのに疲れなど全く感じていない様子でむしろ楽しんでいる。
「どうしたカレン?以前土が悪いと言っていただろう?掘れば良いと思ったのだが違うのか?」
「違わないんだけど……うん、土を見せて?」
若干二人をスルーしつつ土を見てみる。けっこう深く掘っているのにやっぱり粘土質なものは確認出来ず、圧縮された細かな砂の塊といった感じだ。
「お父様、一度そこから出て土を均して欲しいの。じいやもお願い」
そう言うと二人は楽しそうに土を均している。やっぱりパワー系は体を動かすのが好きなのね……。二人が土を均している間にバラックの近くに丸太を置き、その上にさっきの樽を置く。
「みんな!飲み水はこれを飲んで!」
一応樽の使い方などを説明し、湧き水のように冷たくはないけれど綺麗な水が飲めると伝えると民たちは喜んでくれた。その間にお父様たちは作業を終える。
「カレンよ、もう終わりなのか?」
「まだまだこれからよ。土にはね、酸性とアルカリ性というのがあるの。どちらが強くても植物は上手く育たなくて、真ん中の中性に土を近付けるの。酸とアルカリを足すと中性になるのね」
よく理解できていないだろうに、お父様たちは静かに話を聞いてくれる。スイレンは理解できたのか、小石を拾い地面に「↔」を書き左右にこの世界の文字で酸性・アルカリ性と書いている。理解が早くて助かる。
「私が生きていた国では全体的に土が酸性だったの。だからアルカリ性の物を混ぜて中性に近付けていたのね。今はそれを調べる道具もないから確実なことは言えないけれど、ここの土はアルカリ性だと思う。ここまで何も生えていないということは、土を分解する生物がいないと思うから。土を分解する生物がいると普通は酸性に近付いていくの。だからこの酸性の土を畑に混ぜるわ。手探りでやっていくしかないの」
お父様は理解できなかったらしく、思考を放棄して笑顔で「どれに土が入っているんだ?」と無理やり話題を変えた。思考放棄の部分は私はお父様に似たのね……。
私たちは降ろした荷物の場所に行き、この樽に入っていると言うとお父様は土が入っている大きな樽を担ぐ。これにはタデとヒイラギも引いている。なぜなら二人で持って荷車に載せていたからだ。それを見たじいやが参戦する。
「まだまだ若い者には負けておられません」
お父様に張り合うかのようにじいやまで樽を担ぐ。パワー系の二人は、王とじいやという以前に良きライバルなんだろうと無理やり自分を納得させる。
「おーいカレン!これをどうしたら良いのだ!?」
「カレン様!撒けば良いのですかな!?」
唖然としている私たちを気にすることなく作業をしようとする二人。そもそもじいやはリトールの町で食事をとっていたけれど、お父様はほとんど食べていないはずだ。それなのにあのパワー……『類まれな森の民』の称号はダテじゃない……。
私はお父様たちの元へと走り、一応中身を確認する。
「うん、良いものだわ。本当は乾燥させてから使うのだけれど、畑が乾燥しているし混ぜるとちょうど良くなると思う」
樽の中にはまだ湿っているピートモスが入っている。強酸性のこの土はアルカリ性を酸性に傾けてくれるし、これを入れることによって土の保水力が上がる。耕した場所に対して樽二つ分では少し足りないと感じたので、表面だけ混ぜ合わせるようにお父様とじいやに指示する。二人は鍬の扱いにすっかり慣れたようで、ピートモスを全体に撒きながらさらさらの土と混ぜ合わせる。土の色は黒っぽく変わり畑らしくなった。
本来なら畝を作るけど、ここまで排水性の良すぎる土だと逆に畝を作るとよろしくないので、歩く場所だけ目印として鍬で均す。お父様たちにその作業を任せている間にスイレンとお母様を呼び、種の蒔き方をレクチャーしつつ土をかぶせていく。私たちがリトールの町に行っている間に乾燥させておいたトウモロコーンの種も植える。そして種蒔きをお願いし、タデとヒイラギを呼んで少しずつ水をかけてもらう。私は臨機応変に遅れている作業を手伝う。
「ふぅ!これが農作業よ!」
一通り作業を終えた私は汗を拭いながら腰をトントンと叩く。
「こんなに手間隙がかかるとは思わなかったわ」
私の横に座り疲れきった様子のお母様はそう呟く。
「そうね。でもこんなに手間暇をかけるから美味しい野菜が収穫出来るのよ」
私の言葉にお母様は微笑み「私も頑張るわ」と言ってくれた。
ちょうど夕暮れ時になってきたので、国民たちに干し肉とクッキーのような物を配って歩く。民は一緒に働けないことを謝るばかりだったので、動けるようになったらとことん手伝ってもらうわよ!と発破をかけるとみんな笑って頑張りますと言ってくれた。そしてまた全員が集まり大規模な食事会になったけど、私は干し肉を一かじりしたところで眠りに落ちてしまった。本当はまだやりたいことがたくさんあったのに……疲れには勝てなかった。
「カレンよ!こんなもので良いか!?」
お父様とじいやは大きな犬のように「褒めて褒めてオーラ」を出しているが、褒めるを通り越して引いている。私は二人に鍬を持たせ土を耕すように頼んだつもりだったけど、目の前にはまるでユンボで土を掘り返しているかのような山盛りの土と地面の下で作業している二人がいる。しかも鍬だけでこんなに土を掘り返しているのに疲れなど全く感じていない様子でむしろ楽しんでいる。
「どうしたカレン?以前土が悪いと言っていただろう?掘れば良いと思ったのだが違うのか?」
「違わないんだけど……うん、土を見せて?」
若干二人をスルーしつつ土を見てみる。けっこう深く掘っているのにやっぱり粘土質なものは確認出来ず、圧縮された細かな砂の塊といった感じだ。
「お父様、一度そこから出て土を均して欲しいの。じいやもお願い」
そう言うと二人は楽しそうに土を均している。やっぱりパワー系は体を動かすのが好きなのね……。二人が土を均している間にバラックの近くに丸太を置き、その上にさっきの樽を置く。
「みんな!飲み水はこれを飲んで!」
一応樽の使い方などを説明し、湧き水のように冷たくはないけれど綺麗な水が飲めると伝えると民たちは喜んでくれた。その間にお父様たちは作業を終える。
「カレンよ、もう終わりなのか?」
「まだまだこれからよ。土にはね、酸性とアルカリ性というのがあるの。どちらが強くても植物は上手く育たなくて、真ん中の中性に土を近付けるの。酸とアルカリを足すと中性になるのね」
よく理解できていないだろうに、お父様たちは静かに話を聞いてくれる。スイレンは理解できたのか、小石を拾い地面に「↔」を書き左右にこの世界の文字で酸性・アルカリ性と書いている。理解が早くて助かる。
「私が生きていた国では全体的に土が酸性だったの。だからアルカリ性の物を混ぜて中性に近付けていたのね。今はそれを調べる道具もないから確実なことは言えないけれど、ここの土はアルカリ性だと思う。ここまで何も生えていないということは、土を分解する生物がいないと思うから。土を分解する生物がいると普通は酸性に近付いていくの。だからこの酸性の土を畑に混ぜるわ。手探りでやっていくしかないの」
お父様は理解できなかったらしく、思考を放棄して笑顔で「どれに土が入っているんだ?」と無理やり話題を変えた。思考放棄の部分は私はお父様に似たのね……。
私たちは降ろした荷物の場所に行き、この樽に入っていると言うとお父様は土が入っている大きな樽を担ぐ。これにはタデとヒイラギも引いている。なぜなら二人で持って荷車に載せていたからだ。それを見たじいやが参戦する。
「まだまだ若い者には負けておられません」
お父様に張り合うかのようにじいやまで樽を担ぐ。パワー系の二人は、王とじいやという以前に良きライバルなんだろうと無理やり自分を納得させる。
「おーいカレン!これをどうしたら良いのだ!?」
「カレン様!撒けば良いのですかな!?」
唖然としている私たちを気にすることなく作業をしようとする二人。そもそもじいやはリトールの町で食事をとっていたけれど、お父様はほとんど食べていないはずだ。それなのにあのパワー……『類まれな森の民』の称号はダテじゃない……。
私はお父様たちの元へと走り、一応中身を確認する。
「うん、良いものだわ。本当は乾燥させてから使うのだけれど、畑が乾燥しているし混ぜるとちょうど良くなると思う」
樽の中にはまだ湿っているピートモスが入っている。強酸性のこの土はアルカリ性を酸性に傾けてくれるし、これを入れることによって土の保水力が上がる。耕した場所に対して樽二つ分では少し足りないと感じたので、表面だけ混ぜ合わせるようにお父様とじいやに指示する。二人は鍬の扱いにすっかり慣れたようで、ピートモスを全体に撒きながらさらさらの土と混ぜ合わせる。土の色は黒っぽく変わり畑らしくなった。
本来なら畝を作るけど、ここまで排水性の良すぎる土だと逆に畝を作るとよろしくないので、歩く場所だけ目印として鍬で均す。お父様たちにその作業を任せている間にスイレンとお母様を呼び、種の蒔き方をレクチャーしつつ土をかぶせていく。私たちがリトールの町に行っている間に乾燥させておいたトウモロコーンの種も植える。そして種蒔きをお願いし、タデとヒイラギを呼んで少しずつ水をかけてもらう。私は臨機応変に遅れている作業を手伝う。
「ふぅ!これが農作業よ!」
一通り作業を終えた私は汗を拭いながら腰をトントンと叩く。
「こんなに手間隙がかかるとは思わなかったわ」
私の横に座り疲れきった様子のお母様はそう呟く。
「そうね。でもこんなに手間暇をかけるから美味しい野菜が収穫出来るのよ」
私の言葉にお母様は微笑み「私も頑張るわ」と言ってくれた。
ちょうど夕暮れ時になってきたので、国民たちに干し肉とクッキーのような物を配って歩く。民は一緒に働けないことを謝るばかりだったので、動けるようになったらとことん手伝ってもらうわよ!と発破をかけるとみんな笑って頑張りますと言ってくれた。そしてまた全員が集まり大規模な食事会になったけど、私は干し肉を一かじりしたところで眠りに落ちてしまった。本当はまだやりたいことがたくさんあったのに……疲れには勝てなかった。
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