37 / 370
恋バナ
しおりを挟む
「モクレンはね、伝説を作った男なのよ」
ナズナさんは笑いながら続ける。
「私たちは身体能力の高い村の出身だったの。でも産まれた子どもの全員が身体能力が高いとは限らないでしょ?だから親は子育てをしながら適性を見るの。そして十歳前後で適性の合った村に預けられるの。三日に一回は自分の家に帰るのよ」
森での暮らしをほとんど聞いていなかった私とスイレンは、その面白い習慣を興味深く聞く。
「私は植物採取を主にする村に、レンゲとナズナは手先が器用な村に行くことが決まったの」
ハコベさんは語る。
「誰が見てもモクレンはレンゲに恋をしてたのよ。小さな頃からね。だからレンゲが他の村に行くことを嫌がったモクレンはとんでもないことをしでかしたの」
笑う大人たちの話の続きを知りたくて私たちはせがむ。
「私たちは早い人で十五歳くらいに結婚をするの。でも私たちは当時十歳前後よ?なのに結婚をすればレンゲは出て行かなくてもいいとモクレンは単純に考えたのよ。結婚の申し込みには自分が得意なことを披露するのだけど……ははは!」
ナズナさんは説明しながら笑い出す。
「当時村一番の狩人がベンジャミン様でね。ベンジャミン様の再来と言われていたモクレンはベンジャミン様のところへ行ってこう言ったの。『嫁のいないベンジャミン様に言うのは心苦しいが、嫁にしたい女がいるから狩りの極意を教えてくれ!』ってね。村中が笑いに包まれたわ。ベンジャミン様は困りながらもモクレンの素質を評価してたから付きっきりで極意を教えたのよ」
話し手はハコベさんに変わる。
「ある日『ちょっと狩りに行ってくる』とモクレンは村を出たの。騒ぐモクレンがいない間に私たちは他の村へ行かされたわ。心配ではあったけど村の掟を守ろうと私たちは必死に学んでいたある日、モクレンが戻って来たと連絡があって私たちは家に戻ったの。ね、レンゲ」
話を振られたお母様は真っ赤になっている。それをニヤニヤと見ているナズナさんが話を続ける。
「驚いたわよ!まだ子どものモクレンが、子どもとはいえベーアを二体両肩に担ぎ、服の中には食べられる小動物を入るだけ詰め込んで帰って来たんだから!そして『レンゲ!妻になれ!』って叫んだのよ」
「情熱的……」
「お父様すごい……」
私たちはおとぎ話を聞いているように聞き入っている。
「でもね、結婚は早すぎるって大人たちに言われて、結局私は十五歳まで他の村と行き来する生活だったのよ」
お母様はもじもじとしながらも懐かしそうに語ってくれた。私はハコベさんにも聞いてみた。
「タデとはどう結婚したの?」
するとハコベさんも真っ赤になりつつも答えてくれた。
「タデもヒイラギも身体能力が高くてとても器用な人で、そういう人は全部の村を渡り歩くの。私は生まれつき体が弱かったから、自分の為の薬草を取りに行っては森の中で動けなくなっていたのだけど……どこで具合が悪くなっても、狩りの最中や食べ物の採取や木材を調達に来たタデに不思議と出会って……ある日『……放っておけない』って言われて……」
両手で頬を押さえ真っ赤になるハコベさんはとにかく可愛らしかった。
「私とヒイラギは話が合ってね。いつも話しているうちに自然と結婚しちゃった」
ナズナさんはあっけらかんと笑う。そして私はあの話を思い出す。
「ハコベさん……こんなこと聞くのもあれだけど……お子さんは……」
すると真っ赤になっていたハコベさんはこちらに向き直る。
「違うのよ。タデが言ったことは本当にごめんなさい。子どもは私に似てしまって、生まれつき体が弱かったの。私もこの土地に来て動けなくなってしまってお乳も止まってしまったし、あの子ももうお乳を吸う力も失くなってしまっていたの……」
聞かなければ良かったと激しく後悔していると、ハコベさんはふんわりと笑った。
「この国がもう少し安定したらまた子どもを産むわ。ナズナはまだ子どもがいないし、同じ歳のいとこを産むのが夢なの。あの子のことは悲しかったけど、その悲しさを乗り越えて次の子を必ず産むわ。だから、この国をお願いね」
最初の弱々しくて儚い印象はどこかへ消え去ったハコベさん。実はとても芯の強い女性なんだと思った。だからこそあの難しいタデも惹かれたんだろう。お母様たちには「このことはお父様たちには内緒よ」と約束させられた。そして私たちを呼ぶお父様の声が聞こえて来たとき、私たちは顔を見合わせて笑いあった。
ナズナさんは笑いながら続ける。
「私たちは身体能力の高い村の出身だったの。でも産まれた子どもの全員が身体能力が高いとは限らないでしょ?だから親は子育てをしながら適性を見るの。そして十歳前後で適性の合った村に預けられるの。三日に一回は自分の家に帰るのよ」
森での暮らしをほとんど聞いていなかった私とスイレンは、その面白い習慣を興味深く聞く。
「私は植物採取を主にする村に、レンゲとナズナは手先が器用な村に行くことが決まったの」
ハコベさんは語る。
「誰が見てもモクレンはレンゲに恋をしてたのよ。小さな頃からね。だからレンゲが他の村に行くことを嫌がったモクレンはとんでもないことをしでかしたの」
笑う大人たちの話の続きを知りたくて私たちはせがむ。
「私たちは早い人で十五歳くらいに結婚をするの。でも私たちは当時十歳前後よ?なのに結婚をすればレンゲは出て行かなくてもいいとモクレンは単純に考えたのよ。結婚の申し込みには自分が得意なことを披露するのだけど……ははは!」
ナズナさんは説明しながら笑い出す。
「当時村一番の狩人がベンジャミン様でね。ベンジャミン様の再来と言われていたモクレンはベンジャミン様のところへ行ってこう言ったの。『嫁のいないベンジャミン様に言うのは心苦しいが、嫁にしたい女がいるから狩りの極意を教えてくれ!』ってね。村中が笑いに包まれたわ。ベンジャミン様は困りながらもモクレンの素質を評価してたから付きっきりで極意を教えたのよ」
話し手はハコベさんに変わる。
「ある日『ちょっと狩りに行ってくる』とモクレンは村を出たの。騒ぐモクレンがいない間に私たちは他の村へ行かされたわ。心配ではあったけど村の掟を守ろうと私たちは必死に学んでいたある日、モクレンが戻って来たと連絡があって私たちは家に戻ったの。ね、レンゲ」
話を振られたお母様は真っ赤になっている。それをニヤニヤと見ているナズナさんが話を続ける。
「驚いたわよ!まだ子どものモクレンが、子どもとはいえベーアを二体両肩に担ぎ、服の中には食べられる小動物を入るだけ詰め込んで帰って来たんだから!そして『レンゲ!妻になれ!』って叫んだのよ」
「情熱的……」
「お父様すごい……」
私たちはおとぎ話を聞いているように聞き入っている。
「でもね、結婚は早すぎるって大人たちに言われて、結局私は十五歳まで他の村と行き来する生活だったのよ」
お母様はもじもじとしながらも懐かしそうに語ってくれた。私はハコベさんにも聞いてみた。
「タデとはどう結婚したの?」
するとハコベさんも真っ赤になりつつも答えてくれた。
「タデもヒイラギも身体能力が高くてとても器用な人で、そういう人は全部の村を渡り歩くの。私は生まれつき体が弱かったから、自分の為の薬草を取りに行っては森の中で動けなくなっていたのだけど……どこで具合が悪くなっても、狩りの最中や食べ物の採取や木材を調達に来たタデに不思議と出会って……ある日『……放っておけない』って言われて……」
両手で頬を押さえ真っ赤になるハコベさんはとにかく可愛らしかった。
「私とヒイラギは話が合ってね。いつも話しているうちに自然と結婚しちゃった」
ナズナさんはあっけらかんと笑う。そして私はあの話を思い出す。
「ハコベさん……こんなこと聞くのもあれだけど……お子さんは……」
すると真っ赤になっていたハコベさんはこちらに向き直る。
「違うのよ。タデが言ったことは本当にごめんなさい。子どもは私に似てしまって、生まれつき体が弱かったの。私もこの土地に来て動けなくなってしまってお乳も止まってしまったし、あの子ももうお乳を吸う力も失くなってしまっていたの……」
聞かなければ良かったと激しく後悔していると、ハコベさんはふんわりと笑った。
「この国がもう少し安定したらまた子どもを産むわ。ナズナはまだ子どもがいないし、同じ歳のいとこを産むのが夢なの。あの子のことは悲しかったけど、その悲しさを乗り越えて次の子を必ず産むわ。だから、この国をお願いね」
最初の弱々しくて儚い印象はどこかへ消え去ったハコベさん。実はとても芯の強い女性なんだと思った。だからこそあの難しいタデも惹かれたんだろう。お母様たちには「このことはお父様たちには内緒よ」と約束させられた。そして私たちを呼ぶお父様の声が聞こえて来たとき、私たちは顔を見合わせて笑いあった。
122
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる