貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
73 / 370

優秀な民たち

しおりを挟む
 翌日になりまずは窯の様子を見に行く。蓋の代わりにした瓦状の物はいくつか割れていたが、そっと外して中を見る。まだ完全には冷えていないがヤケドはしなさそうだ。
 中を覗くと半分ほどのレンガが割れていた。やはり最初の乾燥が足りなかったようだ。無事なレンガは濃いめのベージュ色に焼き上がっているようだ。使用した粘土や土によって変わるが、焼いた時の温度が高ければ黒っぽくなり温度が低いとベージュ色に焼き上がる。簡易の窯で作ったにしては上出来と言っても良いだろう。すなわちリベンジに成功したのだ。

「姫様……残念でしたね……」

 割れたレンガを一緒に見ていたイチビが気遣ってくれる。その表情は心から悲しんでいるようだった。

「ううん、本当はしっかり干してから焼かないとダメなのよ。昨日私が作ったレンガをあと一日か二日乾かしてから焼けばほとんど割れないと思うわ。割れたレンガもさらに砕いて砂のようにしてから粘土に混ぜれば強度が増すのよ」

 何も気にすることなく明るく言うとみんなの表情も明るいものへと変わる。

「今日は一日かけてこのレンガをこのまま冷やすわ。新しいレンガ作りと窯作りを頑張りましょう」

 そう言うとみんなの表情にやる気が満ち溢れた。

 まず人が増えた分、日干しレンガを作る者と焼成レンガを作る者に分ける。一度全員に日干しレンガの作り方を教え、焼成レンガ組には別で土を混ぜる工程を教える。大ざっぱな私は目分量だったと言うと全員に引かれてしまったが、シャガが上手く軌道修正してくれた。
 全員が粘土を捏ねている間にイチビたち四人組と共に新しい窯を組み上げる。数を焼けるように窯を横長に作り、焚き木を入れる場所を複数作った。手探りのこの作業がとても楽しく感じる。日干しレンガの在庫が増えたら向かい側に同じ物を作る予定だ。

 そしてイチビたちは私に気を遣ったのか、今日は四人が主導でレンガを作るので他の作業を見たら良いのではと提案され、私は渋々その場所を離れる。
 そういえば昨日は家の周りに置いている物の様子を見ていなかったなと思い、家の方に向かうとタラに出会った。タラと一緒にペパーの様子を見てみると、緑色だった実は申し分ないくらいに乾燥している。そして水に浸けていた赤い実は充分にふやけていた。

「ここまでふやけたら問題ないわね。あとはこの皮を剥いて干せば私の欲しい物が手に入るわ」

「姫様、ペパーの実の収穫とその作業は子どもたちにやらせても良いでしょうか?」

「もちろんよ」

 どうやら子どもたちは昨日一日いっぱい鍬を振るったおかげで疲れが抜けていないらしい。なので座ってできる作業をやらせたいとのことだった。タラにペパーの実の収穫方法と緑と赤い実を穂から外して分けるように伝えると、タラはカゴを持って子どもたちを呼んで畑へと向かった。
 そのまま私はデーツの種から発芽した物を見に行き驚いた。やはりこの土地の力のおかげかあんなに小さかった芽はかなり成長している。すぐに地植えをすると良くないらしいが、この成長ぶりだと地植えをしても大丈夫だろう。ならばとエビネを探しに畑へと向かう。

「エビネー!どこー?」

 大声で叫べば近くのトゥメィトゥ畑からひょっこりと顔を出してくれた。

「どうされました?あ!姫様、そういえば果樹に花が咲きましたよ」

「本当!?」

 嬉しいことだがしばし考える。蜂などの虫がいないここでは受粉が上手くいくだろうか?

「コートンの木の様子はどう?」

「コートンですか?先程ざっと見た限り数個綿毛を確認できましたよ?」

 エビネは不思議そうに小首を傾げる。受粉について知っているかを聞くと肯定してくれた。ならばと思い、コートンの綿毛を使って人の手で受粉させるように頼むと「実が成るかは私たちにかかっているのですね!」と笑顔になりつつも気合が入る。エビネはいつも心から楽しんで畑作業をしていて本当に頼りになる。

「コートンはあまり大量に使わないようにして、乾燥したら綿毛の部分を収穫してほしいの。……って本来の目的を忘れてたわ!」

 危うく自分まで受粉の作業に行きそうになったが、途中で思い出し胸の前で手を叩く。

「そうでしたね、改めましてどうされました?」

 エビネも私もおかしくて笑ってしまう。

「あのね、手が空いた時でいいから発芽したデーツを東側の新しい畑の横にでも植えてほしいのよ。水路が完成したら植える予定だったでしょ?でもあの数の種からほとんど芽が出てかなり育ってきているのよ。あの様子だと脇芽もそのうち出てくるでしょうし植えてしまおうと思って」

「なるほど。まだあちら側は殺風景ですものね」

 エビネはすき込みが終わったばかりの休ませている畑のほうを見る。

「分かりました。こちらの作業が終わりましたら早速取り掛かります」

 笑顔で承諾してくれたエビネに植える時の注意として、山のように寄せてあるムギンの藁を根元から幹にかけて包んで植えてほしいと伝える。成長が早いとはいえまだ赤ちゃん苗なのだ。風や気温から守るための作業だと言うとますますやる気になったエビネであった。
 そしてその作業を手伝おうと思っていると、イチビたちと同様に他のことをして大丈夫ですよ、と言われる。この王国の民たちは優秀すぎて、たまに手持ち無沙汰になってしまうのが困りどころだと思い笑ってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...