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ムギン粉
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オヒシバたちが旅立ってからもバタバタと忙しいのは変わりない。
お母様たちに渡し忘れていたリトールの町のサンダル風の履き物を渡し、朝に植えるように伝えたテンサインの様子を見に行き、そのまま農作業チームと干して保管していたムギンを脱穀することにする。
水路建設の時にモールタールの養生用に使った布を洗って乾かした物を地面に敷き、その上に足踏式脱穀機を乗せる。使い方やコツを説明しながらムギンの束を脱穀し、ムギンの実や落ちた茎などを一つにまとめる。ムギンの茎は麦わら帽子などに使うので、まとめて保管庫にしまう。ムギン用の保管庫も増やしたほうが良さそうね。
集めたムギンの実を程よい目の粗さのザルでふるいにかけると、実とそうでない物に分かれる。何回かふるいにかけ実だけを集め、他はすき込みに使ったりコンポストに入れてもらう。
さて次にやるのはムギンの実と取り除ききれなかった細かい殻などを分ける作業である。『とうみ』と呼ばれる機械があれば楽だが、手間をかければ人力でもやれるのだ。バケツや小さな樽などを準備して布の上に置き、ムギンの実を大人の背丈程の高い位置から落とす。パラパラと実を落としている間に横から板などを使って扇いで風を起こすと、軽い実や細かなゴミなどは風に飛ばされ重い実だけが真下に落ちる。数回もやればほぼ実の詰まったものだけが集まる。
「次は製粉しましょう」
タデが作ってくれた石臼を準備してもらう。今までは脱穀機も石臼もなかったので製粉が出来ず、ムギンの茎を使う時は叩いて脱穀し実と茎に分けていた。それでもまだ脱穀していないものが大量にあるので数チームに分かれて作業する。
保管していた実と今分けたばかりの実を用意し、上臼の上部に開いている穴に投入する。上臼の横に取り付けられた取っ手を反時計回りにゆっくりと回すと、ゴリゴリと懐かしい感触が手に伝わる。安物買いのなんとやらで、実はフリマで購入した物が美樹の家にあったのだ。美樹のお父さんが何を思ったのか巨大な、おそらく業務用の物を購入し、置き場所と家庭での使い勝手の悪さから倉庫の奥に仕舞われていたのだが。
タデに頼んだ物は女性でも使いやすい大きさの物で、粉受け台も作ってもらっている。数回に分けてムギンを投入し、早すぎず遅すぎないように上臼を回し続けて粉にする。粉受け台に溜まった粉をもう一度上臼に入れて挽く。その出来た粉をリトールの町で購入したかなり目の細かいふるいにかけ、小麦粉、いや、ムギン粉とふすまに分ける。
ふすまとは実の表皮の部分で栄養価が高いのでそのまま使っても問題はないのだが、ヒヨコの好物でエサとして使えるのだ。もちろんポニーとロバのおやつにもなるので、これも保管しておきたいというのもある。手の空いている者にふすまを渡し、ヒヨコやポニーたちに食べさせてほしいとお願いした。
足踏み式脱穀機のおかげで相当な量のムギンが脱穀でき、五台の石臼をフル稼働したおかげでムギン粉も大量に作ることが出来た。今日挽くことの出来なかったムギンは保管をしていれば問題なく使える。
気付けば手の空いた者たちは夕食の準備に取り掛かっている。今日は野菜たっぷりのスープを作っているようだ。せっかくなので今挽いたばかりのムギン粉を使って料理をしたい。卵も牛乳もないので作れるものは限られるが、美樹の家でよく作っていた貧乏飯の『なんちゃってナン』を作ろうと思う。
ムギン粉に塩を混ぜ水で溶き、少量の油を混ぜ込む。あとは良く熱したフライパンで焼くだけの簡単料理だ。生地が膨らんできたらひっくり返すだけで出来てしまうが、みんなが食べれるようにひたすら焼いてはひっくり返してを繰り返す。
「カレン、これはどうやって食べるの?」
近くにいたお母様はなんちゃってナンを不思議そうに見ている。
「塩を入れているからそのまま食べてもいいし、野菜などの具材を載せたり折り畳んで挟んだり、好きなように食べていいのよ」
味見として焼き上がったものの一部をちぎりお母様に手渡すと、お母様はそれを口に入れ咀嚼する。
「まぁ」
飲み込んだお母様の表情は明るい。どうやら気に入ったようだ。
「今日は早く焼けるように薄くしているけれど、もう少し厚みをもたせて焼くともっちりとするのよ。それはそれで違う食感が楽しめるわ」
そう言うと周りの民たちも「早く食べたい」と言ってくれる。何よりも今までムギンを作り続けてくれている農作業チームが一番ワクワクとしているようだ。
夕食はなんちゃってナンをそのまま食べる者、スープの具材を載せて食べる者、スープに浸して食べる者と各々が好きなように食べてもらったが、パリパリが良いと言う者とモチモチが良いと言う者に分かれた。
みんな、これからもたくさんの料理を作って食べる楽しみを増やしましょうね。
お母様たちに渡し忘れていたリトールの町のサンダル風の履き物を渡し、朝に植えるように伝えたテンサインの様子を見に行き、そのまま農作業チームと干して保管していたムギンを脱穀することにする。
水路建設の時にモールタールの養生用に使った布を洗って乾かした物を地面に敷き、その上に足踏式脱穀機を乗せる。使い方やコツを説明しながらムギンの束を脱穀し、ムギンの実や落ちた茎などを一つにまとめる。ムギンの茎は麦わら帽子などに使うので、まとめて保管庫にしまう。ムギン用の保管庫も増やしたほうが良さそうね。
集めたムギンの実を程よい目の粗さのザルでふるいにかけると、実とそうでない物に分かれる。何回かふるいにかけ実だけを集め、他はすき込みに使ったりコンポストに入れてもらう。
さて次にやるのはムギンの実と取り除ききれなかった細かい殻などを分ける作業である。『とうみ』と呼ばれる機械があれば楽だが、手間をかければ人力でもやれるのだ。バケツや小さな樽などを準備して布の上に置き、ムギンの実を大人の背丈程の高い位置から落とす。パラパラと実を落としている間に横から板などを使って扇いで風を起こすと、軽い実や細かなゴミなどは風に飛ばされ重い実だけが真下に落ちる。数回もやればほぼ実の詰まったものだけが集まる。
「次は製粉しましょう」
タデが作ってくれた石臼を準備してもらう。今までは脱穀機も石臼もなかったので製粉が出来ず、ムギンの茎を使う時は叩いて脱穀し実と茎に分けていた。それでもまだ脱穀していないものが大量にあるので数チームに分かれて作業する。
保管していた実と今分けたばかりの実を用意し、上臼の上部に開いている穴に投入する。上臼の横に取り付けられた取っ手を反時計回りにゆっくりと回すと、ゴリゴリと懐かしい感触が手に伝わる。安物買いのなんとやらで、実はフリマで購入した物が美樹の家にあったのだ。美樹のお父さんが何を思ったのか巨大な、おそらく業務用の物を購入し、置き場所と家庭での使い勝手の悪さから倉庫の奥に仕舞われていたのだが。
タデに頼んだ物は女性でも使いやすい大きさの物で、粉受け台も作ってもらっている。数回に分けてムギンを投入し、早すぎず遅すぎないように上臼を回し続けて粉にする。粉受け台に溜まった粉をもう一度上臼に入れて挽く。その出来た粉をリトールの町で購入したかなり目の細かいふるいにかけ、小麦粉、いや、ムギン粉とふすまに分ける。
ふすまとは実の表皮の部分で栄養価が高いのでそのまま使っても問題はないのだが、ヒヨコの好物でエサとして使えるのだ。もちろんポニーとロバのおやつにもなるので、これも保管しておきたいというのもある。手の空いている者にふすまを渡し、ヒヨコやポニーたちに食べさせてほしいとお願いした。
足踏み式脱穀機のおかげで相当な量のムギンが脱穀でき、五台の石臼をフル稼働したおかげでムギン粉も大量に作ることが出来た。今日挽くことの出来なかったムギンは保管をしていれば問題なく使える。
気付けば手の空いた者たちは夕食の準備に取り掛かっている。今日は野菜たっぷりのスープを作っているようだ。せっかくなので今挽いたばかりのムギン粉を使って料理をしたい。卵も牛乳もないので作れるものは限られるが、美樹の家でよく作っていた貧乏飯の『なんちゃってナン』を作ろうと思う。
ムギン粉に塩を混ぜ水で溶き、少量の油を混ぜ込む。あとは良く熱したフライパンで焼くだけの簡単料理だ。生地が膨らんできたらひっくり返すだけで出来てしまうが、みんなが食べれるようにひたすら焼いてはひっくり返してを繰り返す。
「カレン、これはどうやって食べるの?」
近くにいたお母様はなんちゃってナンを不思議そうに見ている。
「塩を入れているからそのまま食べてもいいし、野菜などの具材を載せたり折り畳んで挟んだり、好きなように食べていいのよ」
味見として焼き上がったものの一部をちぎりお母様に手渡すと、お母様はそれを口に入れ咀嚼する。
「まぁ」
飲み込んだお母様の表情は明るい。どうやら気に入ったようだ。
「今日は早く焼けるように薄くしているけれど、もう少し厚みをもたせて焼くともっちりとするのよ。それはそれで違う食感が楽しめるわ」
そう言うと周りの民たちも「早く食べたい」と言ってくれる。何よりも今までムギンを作り続けてくれている農作業チームが一番ワクワクとしているようだ。
夕食はなんちゃってナンをそのまま食べる者、スープの具材を載せて食べる者、スープに浸して食べる者と各々が好きなように食べてもらったが、パリパリが良いと言う者とモチモチが良いと言う者に分かれた。
みんな、これからもたくさんの料理を作って食べる楽しみを増やしましょうね。
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