貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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カレンの希望

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 私はまずさっき考えた玄関について語る。

「履き物を作っている者たちにはたくさん話したのだけれど、私は家の中で靴を履きたくないのよ。家の中の掃除が大変だし足が疲れるから。だから入り口で靴を脱ぐ場所が欲しいの」

 チューダー様式はいつでも描けるので黒板から消し、玄関を描くとみんなが興味深く見ている。

「だけどさ姫、靴を脱いだ足が汚れていたら一緒じゃない?」

 よく聞いてくれたわヒイラギ。次の譲れないものの話ができるわ。

「そうよ。だから毎日体を清める必要があるのよ。綺麗な足で靴を履けばそうそう汚れないわ。その為の浴室よ!」

 そう拳を握り締めて言った私にヒイラギは小首を傾げて問いかける。

「浴室ってブルーノさんの家にあったあの場所?」

「そうよ」

 ブルーノさんの家にある浴室はバスタブなどない。そもそもお湯に浸かるという文化がこの世界にはないので当然だ。ブルーノさんの家では浴室に置いてあるバケツに水が入っていて、それを絞って体を拭くので大体畳一畳から二畳くらいの広さしかない。水を絞る時の洗面台のようなものが壁にあり、排水は管を通って外に直接放流していた。

「ただ私が求める浴室はもっと広くて、お湯を貯めてお湯に入る風呂と呼ばれるものなのよ! 前世の記憶が蘇ったから、もう体を拭くだけの生活は嫌なのよ……」

 みんなはお湯に入るというのがどれ程気持ちの良いものなのか分からないので不思議そうな顔をしている。

「さらに言うなら各家庭に調理をする場所……台所が欲しいわ。そしてお便所よ!」

 トイレという言葉がないので便所というしかないが、どうしても『お』を付けてしまいたくなりそれを笑われる。

「もう外でしたくないのよ……かと言って穴を掘ってするのも嫌なのよ……」

 するとヒイラギがキョトンとしながら疑問を投げかけた。

「姫がいたところではどんな便所だったの? 外でも穴でもないなんて想像がつかないんだけど?」

「そうね、まず水というのは蛇口というのをひねれば出るのよ。汲みに行くこともないわ。料理をする時にすぐ使えるの。そして台所で使った水も浴室で使った水も、家の中に部屋のようにあるお便所も水で流して『下水道』という地下を通って浄水場という場所にたどり着くの」

 もっとも美樹の住んでいた辺りは田舎だったので水洗トイレと汲み取りの家庭が半々ぐらいであったが。美樹の家は汲み取り式だった。

「使用後の水は飲めるものではないし病気の元になるわ。だから浄水場という場所で水を綺麗にしてから川に流すの。水や自然を守る為にもね」

 みんなからは「へー」や「ほー」といった感嘆の声が上がる。

「その浄水場って場所はどうやって水を綺麗にするの?」

 またしても疑問をヒイラギは口にする。

「うーん……機械を使って薬を使って……かしらね。私がいた世界は夜でも明かりが灯って明るいし、人がやることは機械がやっていたから……自然もどんどん破壊されていたし……」

 便利な分、自然破壊が進んでいたことを思い出しぼんやりとあの頃を思いながら言葉にするとイチビが意外にも声を上げた。

「無理に機械に頼らずとも人がやれることは人がやるべきです。自然は大事なものだと私たちは特に思います」

 そうだろう。森と共に生きてきて、何もないこの場所で辛い思いをしてきたのだから。そして今また人の手で森を作っているのだから尚更そう思うのだろう。

「えぇそうね。浄水場についても考えがあるから大丈夫よ……ただ、また大変な作業になるわね」

 そう苦笑いをしながら言うとヒイラギがまとめに入る。

「姫の希望を叶えるとなると相当大変なのは分かった。けれどやるよ。森の民の、特に私の技で作れないものなんて無いと思うから」

 そう言い切ったヒイラギをイチビたちも「格好良い……」と呟きながら女子のような眼差しで見ている。もちろん私もだ。

「力仕事だけはモクレンにもベンジャミン様にも負けてしまうから、力が必要な時はあの二人を頼ろう」

 本当に我が父ながら人間重機のような怪力に驚いてしまう。

「私の頭の中にあるものを描くわね」

 私は黒板に新たに描くのはファンタジーの世界のような町並みだ。水道代わりになるものを描くとヒイラギは腕がなると気合いが入り、地下の下水道について描くと「モクレン様たちほどではありませんが精一杯やります!」とイチビたちも気合いが入った。
 イチビたちも器用な者たちなので、そこからは細かい部分を話し合っていく。中には当然タデの力が必要な部分もあり、水路の建設が終わったらこちらも頑張ってもらおうと盛り上がる。

「何はともあれまずは水路の建設が最優先ね。レンガもたくさん作っておかなきゃいけないわね」

 かなり重労働の次の大仕事が決定してもみんなの瞳からは光は消え失せない。私の思いもみんなの思いも一緒なのだ。少しずつでも住みよい王国にする為に私たちは頑張ろうと頷きあった。
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