139 / 370
大所帯
しおりを挟む
ポニーとロバに荷車を取り付けてもらいながら「今からお出かけよ」と声をかけるとポニーは尻尾を高く振っている。二頭も行く気満々のようだ。
スイレンがいるであろう場所に行くと女性陣が珍しく立ち話をしている。特段変わったことではないのでスイレンを探すとその女性陣の近くで苦笑いで立っている。そのスイレンの近くには荷物を載せた荷車を引くつもりのヒイラギの姿が見えたが、こちらも困ったような苦笑いをしている。
「スイレーン! ヒイラギー! 準備が出来たわよー!」
大きな声で呼びかけるとヒイラギが猛烈な勢いで走って来た。私とタラは驚いて止まる。
「姫! スイレン様が言ってたのだけど、モクレンが『行きたい者は連れて行って』と言ってたのは本当!?」
見たことのない形相に驚きつつも「えぇ」と肯定するとヒイラギは深く深く、それは深く溜め息を吐いた。
「私はナズナをこっそり連れて行こうと思ったんだ。そこに今日の小屋での監視役であるナデシコとキキョウが出発が遅れていて、小屋まで一緒に行くことになったんだ」
何か問題でもあるのかと私とタラは小首を傾げた。
「その場にハコベが現れてしまい『良いなぁ』と呟いたんだけれど……スイレン様がモクレンがそんなことを言ったと言ってしまったものだから……」
軽くパニック状態になっているヒイラギの話をまとめると、スイレンが言った言葉によりハコベさんも行くこととなり、それを聞いたセリさんも行きたいと言い出し、さらにはお母様まで行くと言っているようだ。
「ナズナたち幼馴染三人組は結託したら強いんだ。絶対に引かない。連れて行かないと言っても勝手に付いてくるだろうし、姫は知らないだろうけどモクレンはレンゲを好きすぎて伝説を作った男だ。レンゲがいないことを知ったら泣いて癇癪を起こすと思うんだ……。さらにタデ……。タデもハコベを大事にし過ぎているから絶対に激怒する。帰って来たらその二人の怒りの矛先は私に来るんだ……」
ナズナさんたちにその伝説の話は聞いているし、じいやにもお父様の弱点はお母様だと聞いている。それだけに「うわぁ……」という感想しか出て来ない。私と同じように引いている横にいたタラが口を開く。
「実は私も一緒に同行しますので……二人で死に物狂いで全員を守りましょう……」
二人はうんうんと頷き合い、今ここに新たな友情が芽生えたようである。
────
道中女性陣はそれはそれは楽しそうに盛り上がる。女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、その倍の人数がいるので会話が止まらない。
「モクレンったら本当に良いことを言ってくれたわ」
「そうね。でも何も告げずに出たから、タデもモクレンも驚くかしら?」
「自分で言ったのだもの、大丈夫でしょ」
お母様は天然全開で嬉しそうに笑い、ハコベさんも若干天然なのか驚くかしらなどと呑気なことを言い、ナズナさんはあっけらかんと笑っている。セリさんたちもそれを聞いて楽しそうに笑っている。そんな女性陣の先頭を男性陣と私は溜め息を吐いたり真顔になったりと会話もなく黙々と歩く。今回のおババさんの占いでは『楽しい』や『幸福』というプラスの言葉ばかりであったが、最後の最後に『嵐』なんて言っていた。『嵐』とはお父様とタデのことだと言うのは先頭を歩く私たちだけは理解した。
辺りは暗くなっていたが山沿いを歩けば道に迷うことなく小屋に着いた。正直なところバラックのようなものを想像していたが、掘っ立て小屋にしてはかなり立派なものが建っていた。かなり木材を持って行ったように見えていたが、さすがはヒイラギとタデの作ったものだ。中は簡易的ではあるが居間のような広く集まれるスペースがあり、その分狭いが小さな個室が何個か作られているようだ。
「さすがヒイラギね。これはここに来るのが楽しみになってしまうわ」
「やっぱり癖で集まりたくなると思ってね。砂嵐を防ぎつつ集まれるようにしたんだ」
小屋を褒めるとようやくヒイラギに笑顔が戻る。すると真っ暗な個室の中から交代予定であった者たちが出て来てスイレンは驚いて叫んでいる。今日はもう交代の者は来ないだろうと思い寝ようとしていたとのことだった。怒る訳でもなく実におおらかでのんびりとしている。
そして一度外に出て月明かりを頼りに焚き火に火をつける。私とスイレンだけでは不可能だが、他のみんなは手慣れたものでテキパキと作業をする。火がつくとみんなで火を囲み売り物として持ってきた野菜や果実を食べたが、売り物に手をつける大雑把さが私にはちょうど良い。
寝ようとしていた者にお母様は「あの日以来、初めてシャイアーク国に行くの」と呑気に語っていたが、その話を聞いた者は色々と察した顔をしてヒイラギを見ていた。私たちは貼り付けたような笑顔で女性陣が喋り疲れるまで黙って聞いていたのだった。
スイレンがいるであろう場所に行くと女性陣が珍しく立ち話をしている。特段変わったことではないのでスイレンを探すとその女性陣の近くで苦笑いで立っている。そのスイレンの近くには荷物を載せた荷車を引くつもりのヒイラギの姿が見えたが、こちらも困ったような苦笑いをしている。
「スイレーン! ヒイラギー! 準備が出来たわよー!」
大きな声で呼びかけるとヒイラギが猛烈な勢いで走って来た。私とタラは驚いて止まる。
「姫! スイレン様が言ってたのだけど、モクレンが『行きたい者は連れて行って』と言ってたのは本当!?」
見たことのない形相に驚きつつも「えぇ」と肯定するとヒイラギは深く深く、それは深く溜め息を吐いた。
「私はナズナをこっそり連れて行こうと思ったんだ。そこに今日の小屋での監視役であるナデシコとキキョウが出発が遅れていて、小屋まで一緒に行くことになったんだ」
何か問題でもあるのかと私とタラは小首を傾げた。
「その場にハコベが現れてしまい『良いなぁ』と呟いたんだけれど……スイレン様がモクレンがそんなことを言ったと言ってしまったものだから……」
軽くパニック状態になっているヒイラギの話をまとめると、スイレンが言った言葉によりハコベさんも行くこととなり、それを聞いたセリさんも行きたいと言い出し、さらにはお母様まで行くと言っているようだ。
「ナズナたち幼馴染三人組は結託したら強いんだ。絶対に引かない。連れて行かないと言っても勝手に付いてくるだろうし、姫は知らないだろうけどモクレンはレンゲを好きすぎて伝説を作った男だ。レンゲがいないことを知ったら泣いて癇癪を起こすと思うんだ……。さらにタデ……。タデもハコベを大事にし過ぎているから絶対に激怒する。帰って来たらその二人の怒りの矛先は私に来るんだ……」
ナズナさんたちにその伝説の話は聞いているし、じいやにもお父様の弱点はお母様だと聞いている。それだけに「うわぁ……」という感想しか出て来ない。私と同じように引いている横にいたタラが口を開く。
「実は私も一緒に同行しますので……二人で死に物狂いで全員を守りましょう……」
二人はうんうんと頷き合い、今ここに新たな友情が芽生えたようである。
────
道中女性陣はそれはそれは楽しそうに盛り上がる。女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、その倍の人数がいるので会話が止まらない。
「モクレンったら本当に良いことを言ってくれたわ」
「そうね。でも何も告げずに出たから、タデもモクレンも驚くかしら?」
「自分で言ったのだもの、大丈夫でしょ」
お母様は天然全開で嬉しそうに笑い、ハコベさんも若干天然なのか驚くかしらなどと呑気なことを言い、ナズナさんはあっけらかんと笑っている。セリさんたちもそれを聞いて楽しそうに笑っている。そんな女性陣の先頭を男性陣と私は溜め息を吐いたり真顔になったりと会話もなく黙々と歩く。今回のおババさんの占いでは『楽しい』や『幸福』というプラスの言葉ばかりであったが、最後の最後に『嵐』なんて言っていた。『嵐』とはお父様とタデのことだと言うのは先頭を歩く私たちだけは理解した。
辺りは暗くなっていたが山沿いを歩けば道に迷うことなく小屋に着いた。正直なところバラックのようなものを想像していたが、掘っ立て小屋にしてはかなり立派なものが建っていた。かなり木材を持って行ったように見えていたが、さすがはヒイラギとタデの作ったものだ。中は簡易的ではあるが居間のような広く集まれるスペースがあり、その分狭いが小さな個室が何個か作られているようだ。
「さすがヒイラギね。これはここに来るのが楽しみになってしまうわ」
「やっぱり癖で集まりたくなると思ってね。砂嵐を防ぎつつ集まれるようにしたんだ」
小屋を褒めるとようやくヒイラギに笑顔が戻る。すると真っ暗な個室の中から交代予定であった者たちが出て来てスイレンは驚いて叫んでいる。今日はもう交代の者は来ないだろうと思い寝ようとしていたとのことだった。怒る訳でもなく実におおらかでのんびりとしている。
そして一度外に出て月明かりを頼りに焚き火に火をつける。私とスイレンだけでは不可能だが、他のみんなは手慣れたものでテキパキと作業をする。火がつくとみんなで火を囲み売り物として持ってきた野菜や果実を食べたが、売り物に手をつける大雑把さが私にはちょうど良い。
寝ようとしていた者にお母様は「あの日以来、初めてシャイアーク国に行くの」と呑気に語っていたが、その話を聞いた者は色々と察した顔をしてヒイラギを見ていた。私たちは貼り付けたような笑顔で女性陣が喋り疲れるまで黙って聞いていたのだった。
54
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる