貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
142 / 370

天然砲炸裂

しおりを挟む
 ようやく町の中に入ることが出来たが、いつもは「カレンちゃん」と話しかけてくる町の人たちは左右に分かれ道を開け私たちを見ている。正確にはお母様をだが。ペーターさんがアンソニーさんが経営している食堂に向かえと言うので向かっているが、女性陣は町の中の建物を見てキャーキャーと騒いでいる。道行く人には「こんにちは」や「はじめまして」と声をかけ、ただでさえ目立つ私たちは注目の的となっている。
 食堂の前にポニーとロバを繋ぎ、私たちは食堂へと足を踏み入れた。

「こんにちはー」

 いろんな意味で疲れきった私は少し気怠げに声を出しながら店に入ったが、何やら奥が騒がしい。その騒がしい場所から騒がしい人がこちらに気付いたようだ。

「カレン嬢!」

「カレン! 来たのだな!」

「え!? クジャ!?」

 いるとは思わなかったクジャもおり、二人は立ち上がりこちらに向かって来る。そのタイミングで私以外の者が入店してきた。

「ここは食事をする店なのかしら?」

 上下左右全ての方向を見回しながら入って来たお母様の声がした途端、店内に静寂が訪れる。ヒイラギなど見知った顔もいるのに、店内の者は皆お母様を見て固まっている。ふぅと溜め息を吐いて声を絞り出した。

「……私のお母様よ。スイレン、こっちへ」

 気後れをしてみんなの後ろに隠れているスイレンを呼ぶと、おどおどとしながらもお母様の横に来てくれた。

「こっちは弟のスイレンよ。双子なの」

 そう紹介すると両者見つめ合ったまま動かないので、ニコライさんたちの紹介をしようと口を開きかけたところでお母様が声を発した。

「あなたがニコライさんなのね。騒がしくて女性を見ると求愛ばかりすると聞いていたけれど、カレンったら嘘をついたわね」

 それを聞いたニコライさんは笑顔のまま固まり、クジャは吹き出す。

「そしてあなたがクジャクさんね? 娘と仲良くしてくれてありがとう。噂通り綺麗な方ね」

 そうクジャに微笑みかけると、あのクジャですら「いえ、あの」と姫らしからぬ言動をして慌てている。そして今までおとなしくしていたスイレンも口を開いた。

「……本当に綺麗……あ、あの、はじめまして」

 クジャを見つめてそう言ったスイレンはペコリと頭を下げる。私が思うにスイレンは恋愛関係についてほぼ知識がないので、クジャの瞳の色に対して純粋に「綺麗」と言ったと思うのだが、クジャは真っ赤になって俯いてしまっている。あのクジャをおとなしくさせるとは思わず、スイレンもお母様と同様ある意味危険な人物なのかもしれない。

「本当に綺麗な方よね。クジャクさん、もし良かったらスイレンのお嫁さんにいらっしゃいな」

 お母様なりの冗談を言っているのだが、お母様の天然ぶりを知らないクジャはさらに赤くなり小さくなってしまっている。

「もう、お母様! クジャクさんが困っているよ! 変なことを言わないの。ごめんね、クジャクさん」

 スイレンなりにクジャを気遣って微笑みながら謝るのだが、その笑顔を見たクジャは両手を胸の前で組みポーっとしながら「……いえ」なんて聞いたこともないほど小さな声で言っている。ちなみにニコライさんはしばらく前から両手を組んでお母様に見惚れている。お母様だけではなくスイレンまでも天然魔性系なのかもしれない。
 この状態をどうしたら良いのか分からずにいると、入り口から大きな声が聞こえてきた。

「姫様! スネックを獲って参りましたよ! マーク殿まで巻き込んで! ちゃんと謝ってくださ……おや?」

 やけくそ気味に怒鳴りながら入って来たのはクジャのじいやであるモズさんだ。その後ろには疲れきった表情のマークさんもいたが、二人は私たちを見て歓喜の声を上げている。どうやらクジャは二人にスネック狩りになかば無理やり行かせていたようである。モズさんはスネックを店主のアンソニーさんに渡すと、「皆さん座りましょう」と提案してくれ、ようやく私たちは座ることが出来た。

 全員の自己紹介が終わったが、驚くほどにおとなしいニコライさんとクジャは自分から話すこともなく会話が弾まない。

「そういえば二人とももう帰っているとばかり思っていたわ。何かあったの?」

 そう聞いても「あの……」「えぇと……」と二人はモジモジとし会話にならない。まるでイチビたちのようだわ。そう思っているとモズさんが口を開いた。

「ペーター殿から『賭けごと』を教えてもらいまして、カレン様がいらっしゃるか賭けていたのでございますよ」

 クジャは慌てて「じい!」と叫ぶが、バレてしまったものだからクジャは「一週間以内に来ると賭けたのじゃ……」と言い、ニコライさんは「カレン嬢はお忙しいので来ないほうに賭けておりました……」と白状した。それを聞いたお母様が口を開く。

「もうカレン、カレンがいけないことを教えるからお忙しいのに二人ともここに留まっているのよ? 反省なさい」

 お母様に怒られシュンとする私が珍しいのか、ようやくニコライさんとクジャも笑顔を見せてくれた。

「本当に誰に似てこんなにお転婆なのかしら?」

 何気なく呟いたお母様の一言にヒイラギ、ナズナさん、ハコベさんの三人は「モクレンでしょ」とハモる。

「モクレンさんとは?」

 ニコライさんが質問をするとお母様が答えた。

「この世界で……一番素敵な私の夫よ……」

 と、今度はお母様が真っ赤になり頬を押さえモジモジとし始めた。知らない者からすれば美女が恋する乙女モードとなり危険なフェロモンを振り撒いているのだろう。ニコライさんを始めとする店内の数人の男性たちが鼻血を噴いてしまった。私とスイレンが慌てる中、ヒイラギたちは慣れているのか「被害者が増えた……」と呟いていた。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...