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天然砲炸裂
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ようやく町の中に入ることが出来たが、いつもは「カレンちゃん」と話しかけてくる町の人たちは左右に分かれ道を開け私たちを見ている。正確にはお母様をだが。ペーターさんがアンソニーさんが経営している食堂に向かえと言うので向かっているが、女性陣は町の中の建物を見てキャーキャーと騒いでいる。道行く人には「こんにちは」や「はじめまして」と声をかけ、ただでさえ目立つ私たちは注目の的となっている。
食堂の前にポニーとロバを繋ぎ、私たちは食堂へと足を踏み入れた。
「こんにちはー」
いろんな意味で疲れきった私は少し気怠げに声を出しながら店に入ったが、何やら奥が騒がしい。その騒がしい場所から騒がしい人がこちらに気付いたようだ。
「カレン嬢!」
「カレン! 来たのだな!」
「え!? クジャ!?」
いるとは思わなかったクジャもおり、二人は立ち上がりこちらに向かって来る。そのタイミングで私以外の者が入店してきた。
「ここは食事をする店なのかしら?」
上下左右全ての方向を見回しながら入って来たお母様の声がした途端、店内に静寂が訪れる。ヒイラギなど見知った顔もいるのに、店内の者は皆お母様を見て固まっている。ふぅと溜め息を吐いて声を絞り出した。
「……私のお母様よ。スイレン、こっちへ」
気後れをしてみんなの後ろに隠れているスイレンを呼ぶと、おどおどとしながらもお母様の横に来てくれた。
「こっちは弟のスイレンよ。双子なの」
そう紹介すると両者見つめ合ったまま動かないので、ニコライさんたちの紹介をしようと口を開きかけたところでお母様が声を発した。
「あなたがニコライさんなのね。騒がしくて女性を見ると求愛ばかりすると聞いていたけれど、カレンったら嘘をついたわね」
それを聞いたニコライさんは笑顔のまま固まり、クジャは吹き出す。
「そしてあなたがクジャクさんね? 娘と仲良くしてくれてありがとう。噂通り綺麗な方ね」
そうクジャに微笑みかけると、あのクジャですら「いえ、あの」と姫らしからぬ言動をして慌てている。そして今までおとなしくしていたスイレンも口を開いた。
「……本当に綺麗……あ、あの、はじめまして」
クジャを見つめてそう言ったスイレンはペコリと頭を下げる。私が思うにスイレンは恋愛関係についてほぼ知識がないので、クジャの瞳の色に対して純粋に「綺麗」と言ったと思うのだが、クジャは真っ赤になって俯いてしまっている。あのクジャをおとなしくさせるとは思わず、スイレンもお母様と同様ある意味危険な人物なのかもしれない。
「本当に綺麗な方よね。クジャクさん、もし良かったらスイレンのお嫁さんにいらっしゃいな」
お母様なりの冗談を言っているのだが、お母様の天然ぶりを知らないクジャはさらに赤くなり小さくなってしまっている。
「もう、お母様! クジャクさんが困っているよ! 変なことを言わないの。ごめんね、クジャクさん」
スイレンなりにクジャを気遣って微笑みながら謝るのだが、その笑顔を見たクジャは両手を胸の前で組みポーっとしながら「……いえ」なんて聞いたこともないほど小さな声で言っている。ちなみにニコライさんはしばらく前から両手を組んでお母様に見惚れている。お母様だけではなくスイレンまでも天然魔性系なのかもしれない。
この状態をどうしたら良いのか分からずにいると、入り口から大きな声が聞こえてきた。
「姫様! スネックを獲って参りましたよ! マーク殿まで巻き込んで! ちゃんと謝ってくださ……おや?」
やけくそ気味に怒鳴りながら入って来たのはクジャのじいやであるモズさんだ。その後ろには疲れきった表情のマークさんもいたが、二人は私たちを見て歓喜の声を上げている。どうやらクジャは二人にスネック狩りになかば無理やり行かせていたようである。モズさんはスネックを店主のアンソニーさんに渡すと、「皆さん座りましょう」と提案してくれ、ようやく私たちは座ることが出来た。
全員の自己紹介が終わったが、驚くほどにおとなしいニコライさんとクジャは自分から話すこともなく会話が弾まない。
「そういえば二人とももう帰っているとばかり思っていたわ。何かあったの?」
そう聞いても「あの……」「えぇと……」と二人はモジモジとし会話にならない。まるでイチビたちのようだわ。そう思っているとモズさんが口を開いた。
「ペーター殿から『賭けごと』を教えてもらいまして、カレン様がいらっしゃるか賭けていたのでございますよ」
クジャは慌てて「じい!」と叫ぶが、バレてしまったものだからクジャは「一週間以内に来ると賭けたのじゃ……」と言い、ニコライさんは「カレン嬢はお忙しいので来ないほうに賭けておりました……」と白状した。それを聞いたお母様が口を開く。
「もうカレン、カレンがいけないことを教えるからお忙しいのに二人ともここに留まっているのよ? 反省なさい」
お母様に怒られシュンとする私が珍しいのか、ようやくニコライさんとクジャも笑顔を見せてくれた。
「本当に誰に似てこんなにお転婆なのかしら?」
何気なく呟いたお母様の一言にヒイラギ、ナズナさん、ハコベさんの三人は「モクレンでしょ」とハモる。
「モクレンさんとは?」
ニコライさんが質問をするとお母様が答えた。
「この世界で……一番素敵な私の夫よ……」
と、今度はお母様が真っ赤になり頬を押さえモジモジとし始めた。知らない者からすれば美女が恋する乙女モードとなり危険なフェロモンを振り撒いているのだろう。ニコライさんを始めとする店内の数人の男性たちが鼻血を噴いてしまった。私とスイレンが慌てる中、ヒイラギたちは慣れているのか「被害者が増えた……」と呟いていた。
食堂の前にポニーとロバを繋ぎ、私たちは食堂へと足を踏み入れた。
「こんにちはー」
いろんな意味で疲れきった私は少し気怠げに声を出しながら店に入ったが、何やら奥が騒がしい。その騒がしい場所から騒がしい人がこちらに気付いたようだ。
「カレン嬢!」
「カレン! 来たのだな!」
「え!? クジャ!?」
いるとは思わなかったクジャもおり、二人は立ち上がりこちらに向かって来る。そのタイミングで私以外の者が入店してきた。
「ここは食事をする店なのかしら?」
上下左右全ての方向を見回しながら入って来たお母様の声がした途端、店内に静寂が訪れる。ヒイラギなど見知った顔もいるのに、店内の者は皆お母様を見て固まっている。ふぅと溜め息を吐いて声を絞り出した。
「……私のお母様よ。スイレン、こっちへ」
気後れをしてみんなの後ろに隠れているスイレンを呼ぶと、おどおどとしながらもお母様の横に来てくれた。
「こっちは弟のスイレンよ。双子なの」
そう紹介すると両者見つめ合ったまま動かないので、ニコライさんたちの紹介をしようと口を開きかけたところでお母様が声を発した。
「あなたがニコライさんなのね。騒がしくて女性を見ると求愛ばかりすると聞いていたけれど、カレンったら嘘をついたわね」
それを聞いたニコライさんは笑顔のまま固まり、クジャは吹き出す。
「そしてあなたがクジャクさんね? 娘と仲良くしてくれてありがとう。噂通り綺麗な方ね」
そうクジャに微笑みかけると、あのクジャですら「いえ、あの」と姫らしからぬ言動をして慌てている。そして今までおとなしくしていたスイレンも口を開いた。
「……本当に綺麗……あ、あの、はじめまして」
クジャを見つめてそう言ったスイレンはペコリと頭を下げる。私が思うにスイレンは恋愛関係についてほぼ知識がないので、クジャの瞳の色に対して純粋に「綺麗」と言ったと思うのだが、クジャは真っ赤になって俯いてしまっている。あのクジャをおとなしくさせるとは思わず、スイレンもお母様と同様ある意味危険な人物なのかもしれない。
「本当に綺麗な方よね。クジャクさん、もし良かったらスイレンのお嫁さんにいらっしゃいな」
お母様なりの冗談を言っているのだが、お母様の天然ぶりを知らないクジャはさらに赤くなり小さくなってしまっている。
「もう、お母様! クジャクさんが困っているよ! 変なことを言わないの。ごめんね、クジャクさん」
スイレンなりにクジャを気遣って微笑みながら謝るのだが、その笑顔を見たクジャは両手を胸の前で組みポーっとしながら「……いえ」なんて聞いたこともないほど小さな声で言っている。ちなみにニコライさんはしばらく前から両手を組んでお母様に見惚れている。お母様だけではなくスイレンまでも天然魔性系なのかもしれない。
この状態をどうしたら良いのか分からずにいると、入り口から大きな声が聞こえてきた。
「姫様! スネックを獲って参りましたよ! マーク殿まで巻き込んで! ちゃんと謝ってくださ……おや?」
やけくそ気味に怒鳴りながら入って来たのはクジャのじいやであるモズさんだ。その後ろには疲れきった表情のマークさんもいたが、二人は私たちを見て歓喜の声を上げている。どうやらクジャは二人にスネック狩りになかば無理やり行かせていたようである。モズさんはスネックを店主のアンソニーさんに渡すと、「皆さん座りましょう」と提案してくれ、ようやく私たちは座ることが出来た。
全員の自己紹介が終わったが、驚くほどにおとなしいニコライさんとクジャは自分から話すこともなく会話が弾まない。
「そういえば二人とももう帰っているとばかり思っていたわ。何かあったの?」
そう聞いても「あの……」「えぇと……」と二人はモジモジとし会話にならない。まるでイチビたちのようだわ。そう思っているとモズさんが口を開いた。
「ペーター殿から『賭けごと』を教えてもらいまして、カレン様がいらっしゃるか賭けていたのでございますよ」
クジャは慌てて「じい!」と叫ぶが、バレてしまったものだからクジャは「一週間以内に来ると賭けたのじゃ……」と言い、ニコライさんは「カレン嬢はお忙しいので来ないほうに賭けておりました……」と白状した。それを聞いたお母様が口を開く。
「もうカレン、カレンがいけないことを教えるからお忙しいのに二人ともここに留まっているのよ? 反省なさい」
お母様に怒られシュンとする私が珍しいのか、ようやくニコライさんとクジャも笑顔を見せてくれた。
「本当に誰に似てこんなにお転婆なのかしら?」
何気なく呟いたお母様の一言にヒイラギ、ナズナさん、ハコベさんの三人は「モクレンでしょ」とハモる。
「モクレンさんとは?」
ニコライさんが質問をするとお母様が答えた。
「この世界で……一番素敵な私の夫よ……」
と、今度はお母様が真っ赤になり頬を押さえモジモジとし始めた。知らない者からすれば美女が恋する乙女モードとなり危険なフェロモンを振り撒いているのだろう。ニコライさんを始めとする店内の数人の男性たちが鼻血を噴いてしまった。私とスイレンが慌てる中、ヒイラギたちは慣れているのか「被害者が増えた……」と呟いていた。
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