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朝食タイム
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翌朝目を覚ますと、いつもはスイレンの顔が見える位置にクジャの顔がある。本当に綺麗だなぁと寝ぼけ眼で見つめているとクジャも目を覚した。
「……おはようカレン……」
「おはようクジャ」
目は覚ましたが、まだ横になったままの格好で私たちは朝の挨拶をして笑いあった。するとちょうど良いタイミングでモズさんが私たちを起こしに来たので、身支度を整え町の中へと踏み入った。早朝というわけでもないので人はまばらにいる。私とクジャが並んで歩くと小さな子どもたちは「おひめさまだ!」と眩しいほどの笑顔を見せてくれる。
「クジャの子どもはどんな子に育つかしらね」
「なっ! こここ子ども!?」
こんなにも美人なのに浮いた話がないらしいクジャはウブな反応を見せる。そこに道の向こう側からお母様たちが歩いて来た。
「カレーン! クジャクさーん! おはようー!」
無邪気に手を振るスイレンに、クジャは「恥ずかしい」と言いつつも控え目に手を振り返している。合流したのはちょうどアンソニーさんの経営する食堂の前で、立ち話をしつつ「もうお店はやっているかしら?」と溢すとクジャが口を開いた。なんとこの町に滞在中はクジャたちととニコライさんたちの為に朝早くから食堂を開けているというではないか。その話を聞き驚いているとニコライさんたちを起こしに行ったモズさん一行も合流する。
「クジャ、ニコライさん、毎日アンソニーさんを朝早くから働かせていたんですって? アンソニーさんだって生活があるのよ? 我がままはいけないわ」
腰に手を当てクジャとニコライさんを注意すると二人はあっけらかんとしているが、それぞれの後ろでモズさんとマークさんが溜め息を吐いている。
「じゃが金は払っておるぞ?」
「そうです。アンソニーさんもニコニコしていますし」
二人の言い分を聞いてつい声を荒げてしまう。
「それは払って当然よ! あなたたちはもっと庶民の暮らしを知るべきね。二人のようにお付きの人が何でもやってくれる訳ではないのよ!?」
二人を叱りつけていると食堂の中からアンソニーさんが慌てて出て来た。私の声が聞こえていたのか苦笑いをしているが「どうぞ中へ」と私たちを入れてくれた。中に入ってもまだ不機嫌な私はアンソニーさんにも注意をする。
「アンソニーさんも! 辛かったり無理な時は断らないと駄目よ。お客さんが好き放題するようになったらまともなお客さんは誰も来なくなるわよ?」
三人を叱ると反省したのか項垂れている。それを見たスイレンは「みんな座ろう?」と間を取り持ってくれた。スイレンたちはブルーノさんのお宅で軽く朝食をいただいたそうなので飲み物だけを頼み、私たちは軽めの朝食を頼んだ。塩味の効いた野菜スープと硬いパンことブレッドを食べているとヒイラギが口を開いた。
「そうだクジャクさん、リーンウン国用のリバーシを作って来たから後で渡しますね」
まだ落ち込み口数が少なかったクジャは顔を上げ目を輝かせる。
「なんと! もう作ってくれてのか? ありがたいことじゃ!」
クジャの喜びようにみんなが笑う。ようやくいつものように楽しい食事の時間となり、朝食を済ませた私たちは店を後にした。
「してカレンよ、これからどうするのじゃ?」
「私たちは売り物を売って必要なものを購入したら帰るわ。早く帰らないと……いろいろと大変なのよ……」
後半言葉を濁したが、事情を知らないクジャやニコライさんは特に聞き返すこともなく私たちに付き合うと言う。
「そうだわクジャ、薬を見立ててもらいたいの。あとニコライさん、あのね、とてもしょっぱい水から作られた塩って手に入れることが出来る?」
私の話にクジャは「任せると良い」と喜び、『海』を知らないヒーズル王国の者たちから海に代わる名前を聞けずにいた私は『しょっぱい水』と表現した。
「塩湖から作られた塩ですね? 岩塩とは違うサラサラとした塩なので料理人に好評ですので取り扱っておりますよ」
「それでも良いのだけれど、もっと塩湖よりも大規模な水溜まりよ。魚や貝や生えている藻なども欲しいの」
やはり塩湖と言うので海を表現したいが、語彙力のない私は『大規模な水溜まり』としか言えずにいたが、魚がいると言えば理解してもらえるだろう。
「もっと大きな? そして魚? カレン嬢、何かの物語の話ですか? 塩湖の塩水の中で魚が泳げる訳がありませんよ」
そう言ってニコライさんは笑う。周りを見るとクジャやモズさんたちも同じように笑っている。
「……この大陸で一番端はどこ?」
「リーンウン国が一番南に位置していると言われてきたが、おそらくヒーズル王国もまた同じくらい南にあるだろうな」
クジャは勉強を教える姉のように優しくそう言い微笑む。
「じゃあそのリーンウン国の一番南には何があるの?」
「山じゃ。どの国も高い山に囲まれておる。その向こうはどこまでも山だと言われておるが、誰も確かめようとする暇人などおらぬ。山しかないのだからな」
「私たちテックノン王国はおそらく人類史上初となる爆破でその山を壊しているのです」
私の疑問にクジャは答え、ニコライさんは自信たっぷりにそう言う。……ヒーズル王国のみんなが海を知らないのではなく、この世界では海を知らないか無いのか、はたまた認識していないかなのだろうか。私が考え悩んでいるとお母様たちは爆破の音についてニコライさんと話している。
海がなければ死ぬわけでもないし、地球にだって海に面していない国なんてたくさんある。私にとってただ残念なのは、鰹出汁や昆布出汁が食べられないということだけなのだから……。
「……おはようカレン……」
「おはようクジャ」
目は覚ましたが、まだ横になったままの格好で私たちは朝の挨拶をして笑いあった。するとちょうど良いタイミングでモズさんが私たちを起こしに来たので、身支度を整え町の中へと踏み入った。早朝というわけでもないので人はまばらにいる。私とクジャが並んで歩くと小さな子どもたちは「おひめさまだ!」と眩しいほどの笑顔を見せてくれる。
「クジャの子どもはどんな子に育つかしらね」
「なっ! こここ子ども!?」
こんなにも美人なのに浮いた話がないらしいクジャはウブな反応を見せる。そこに道の向こう側からお母様たちが歩いて来た。
「カレーン! クジャクさーん! おはようー!」
無邪気に手を振るスイレンに、クジャは「恥ずかしい」と言いつつも控え目に手を振り返している。合流したのはちょうどアンソニーさんの経営する食堂の前で、立ち話をしつつ「もうお店はやっているかしら?」と溢すとクジャが口を開いた。なんとこの町に滞在中はクジャたちととニコライさんたちの為に朝早くから食堂を開けているというではないか。その話を聞き驚いているとニコライさんたちを起こしに行ったモズさん一行も合流する。
「クジャ、ニコライさん、毎日アンソニーさんを朝早くから働かせていたんですって? アンソニーさんだって生活があるのよ? 我がままはいけないわ」
腰に手を当てクジャとニコライさんを注意すると二人はあっけらかんとしているが、それぞれの後ろでモズさんとマークさんが溜め息を吐いている。
「じゃが金は払っておるぞ?」
「そうです。アンソニーさんもニコニコしていますし」
二人の言い分を聞いてつい声を荒げてしまう。
「それは払って当然よ! あなたたちはもっと庶民の暮らしを知るべきね。二人のようにお付きの人が何でもやってくれる訳ではないのよ!?」
二人を叱りつけていると食堂の中からアンソニーさんが慌てて出て来た。私の声が聞こえていたのか苦笑いをしているが「どうぞ中へ」と私たちを入れてくれた。中に入ってもまだ不機嫌な私はアンソニーさんにも注意をする。
「アンソニーさんも! 辛かったり無理な時は断らないと駄目よ。お客さんが好き放題するようになったらまともなお客さんは誰も来なくなるわよ?」
三人を叱ると反省したのか項垂れている。それを見たスイレンは「みんな座ろう?」と間を取り持ってくれた。スイレンたちはブルーノさんのお宅で軽く朝食をいただいたそうなので飲み物だけを頼み、私たちは軽めの朝食を頼んだ。塩味の効いた野菜スープと硬いパンことブレッドを食べているとヒイラギが口を開いた。
「そうだクジャクさん、リーンウン国用のリバーシを作って来たから後で渡しますね」
まだ落ち込み口数が少なかったクジャは顔を上げ目を輝かせる。
「なんと! もう作ってくれてのか? ありがたいことじゃ!」
クジャの喜びようにみんなが笑う。ようやくいつものように楽しい食事の時間となり、朝食を済ませた私たちは店を後にした。
「してカレンよ、これからどうするのじゃ?」
「私たちは売り物を売って必要なものを購入したら帰るわ。早く帰らないと……いろいろと大変なのよ……」
後半言葉を濁したが、事情を知らないクジャやニコライさんは特に聞き返すこともなく私たちに付き合うと言う。
「そうだわクジャ、薬を見立ててもらいたいの。あとニコライさん、あのね、とてもしょっぱい水から作られた塩って手に入れることが出来る?」
私の話にクジャは「任せると良い」と喜び、『海』を知らないヒーズル王国の者たちから海に代わる名前を聞けずにいた私は『しょっぱい水』と表現した。
「塩湖から作られた塩ですね? 岩塩とは違うサラサラとした塩なので料理人に好評ですので取り扱っておりますよ」
「それでも良いのだけれど、もっと塩湖よりも大規模な水溜まりよ。魚や貝や生えている藻なども欲しいの」
やはり塩湖と言うので海を表現したいが、語彙力のない私は『大規模な水溜まり』としか言えずにいたが、魚がいると言えば理解してもらえるだろう。
「もっと大きな? そして魚? カレン嬢、何かの物語の話ですか? 塩湖の塩水の中で魚が泳げる訳がありませんよ」
そう言ってニコライさんは笑う。周りを見るとクジャやモズさんたちも同じように笑っている。
「……この大陸で一番端はどこ?」
「リーンウン国が一番南に位置していると言われてきたが、おそらくヒーズル王国もまた同じくらい南にあるだろうな」
クジャは勉強を教える姉のように優しくそう言い微笑む。
「じゃあそのリーンウン国の一番南には何があるの?」
「山じゃ。どの国も高い山に囲まれておる。その向こうはどこまでも山だと言われておるが、誰も確かめようとする暇人などおらぬ。山しかないのだからな」
「私たちテックノン王国はおそらく人類史上初となる爆破でその山を壊しているのです」
私の疑問にクジャは答え、ニコライさんは自信たっぷりにそう言う。……ヒーズル王国のみんなが海を知らないのではなく、この世界では海を知らないか無いのか、はたまた認識していないかなのだろうか。私が考え悩んでいるとお母様たちは爆破の音についてニコライさんと話している。
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