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家出
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飲み終わった青いココナッツを地面に置き、使い道が色々とある地面に落ちている褐色のココナッツを手に持つとハチドリたちが残ったジュースを飲みに集まって来た。その小さく美しい鳥の姿を見てお母様は笑顔になっている。
「アカシア……あの黄色い花の木も植えたいわね。オアシスが完成したら枝を貰いにまた来ましょう」
「そうね、本当にこの場所のようになるといいわ」
お母様は目に焼き付けるかのようにオアシスを見つめていたが、満足したのか「戻りましょう」と言うので私たちはまた縄梯子を登る。インコたちもまた飛び交ってはいたが、時折振り向きながら観察をするとこのオアシスだけに長くいたせいかあまり飛ぶのが上手くないようだ。その不器用さがまた可愛らしい。
本物のオアシスから出て縄梯子を地上に上げ、人工オアシスへと戻るとなんと荷車を外されたポニーとロバがその畔でウトウトとしている。
「え? どうしてポニーとロバが?」
私たちは疑問に思いながらもポニーとロバの近くに行き声をかけると、スリスリと顔を擦りつけてくる。
「どうしたんだろうね? 水路の方に行ってみようか?」
スイレンのその言葉で水路を辿って行くとヒイラギが私たちに気付いたようで走り寄って来る。
「ヒイラギ! 何かあったの? ポニーとロバがそこにいたのだけれど」
ヒイラギに声をかけると、疲れたような何とも言えない表情で口を開いた。
「姫たちこそどこに行ってたの? この子たち、しばらくはおとなしく作業を見ていたんだけれど、オヒシバの姿を見たら暴れだしてしまって……連れ出そうと荷車を外している間もおとなしくしてて、広場に連れて行こうとしたら動かなくて」
「まぁ」
「それで『姫たちのところに行く?』って声をかけたらおとなしくここまで来たんだけど姿が見えないし。この子たちもまた動かなくなってしまって」
私もウッカリとしていたが、何故かポニーとロバはオヒシバに対してだけ敵対心を持っている。同様にオヒシバもまたこの子たちを目の敵にしているのだが。
「ならお母様が広場に戻るから一緒に連れて行くわ。行きましょうポニー、ロバ」
じいやとハマナスはこのまままた蛇籠作りと設置に戻ると言う。スイレンも行こうとしたが、大人たちからゆっくり休めと言われ私たち親子はポニーとロバを引き連れて広場へと戻った。
「レンゲ!」
広場へと戻るとナズナさんが血相を変えて走って来る。今度は何事だろうか?
「どうしたのナズナ? どうかした?」
すっかり機嫌を直したお母様はニコニコとナズナさんに微笑みかける。するとナズナさんはお母様の目の前まで来てお母様の両手を掴み深呼吸をした。
「レンゲ、落ち着いて聞くのよ」
「何……? どうしたの……?」
ナズナさんの様子にお母様から笑みが消え、私とスイレンもまた顔が強張る。緊急事態だろうか? 誰かが倒れたりしたのだろうか……?
「……逃げたわ」
「え?」
ナズナさんの言葉の意味が分からないお母様は聞き返す。もちろん私もスイレンも意味が分からず表情は強張ったままだ。
「ちょっと目を離した隙に、モクレンとタデが逃げたのよ!」
「「「はぁ!?」」」
これには私たち親子もハモってしまうほどに驚いた。唖然としているとナズナさんは早口で捲し立てる。
「最近は少しは王様らしくなったかと思ったけれど、やっぱりモクレンはモクレンなのよ! ちょっとレンゲに怒られただけで傷付くなんて、子どもの頃から変わってないわ!」
ナズナさんは呆れ三割、怒り七割といった感じである。
「……さっきは見直したと思ったのだけれど……」
お母様が聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟き、私とスイレンは目だけでお母様を見る。その表情は無であった。私とスイレンは恐ろしくなり、視線を外そうとするとお母様は突然ニッコリと微笑んだ。それがまた怖いのだが。
「カレン、スイレン、私はハコベと一緒にモクレンとタデに話をしに行くわ。どうせこの国であの二人が行ける場所なんて、私たちが泊まったあの小屋しかないのだから。もし暗くなる前に戻って来なかったら、じいやの言うことをしっかりと聞くのよ?」
いつもニコニコとしているお母様だが、必要以上に笑顔になりゆっくりと諭すように話すが、そのこめかみには青筋が見える。それに気付かないフリをして私たち姉弟は聞き分けの良い子のように「はい」と笑顔を貼り付けて返事をする。
「良い子たちね」
そう微笑んで私たちの頭を撫でると「ハコベ! 準備をするわよ!」と鬼の形相で広場の方へとナズナさんを引き連れて行ってしまった。私たちはお父様とお母様の喧嘩など見たことがなかった上に、あの別れ際の表情を見てしまいカタカタと震えるしかなかったのだった。
お父様、タデ。美樹からの助言だけれど、夫婦円満の秘訣はいかに奥さんを怒らせないかが大事なのよ。直接は言えないから祈っておくわ……。
「アカシア……あの黄色い花の木も植えたいわね。オアシスが完成したら枝を貰いにまた来ましょう」
「そうね、本当にこの場所のようになるといいわ」
お母様は目に焼き付けるかのようにオアシスを見つめていたが、満足したのか「戻りましょう」と言うので私たちはまた縄梯子を登る。インコたちもまた飛び交ってはいたが、時折振り向きながら観察をするとこのオアシスだけに長くいたせいかあまり飛ぶのが上手くないようだ。その不器用さがまた可愛らしい。
本物のオアシスから出て縄梯子を地上に上げ、人工オアシスへと戻るとなんと荷車を外されたポニーとロバがその畔でウトウトとしている。
「え? どうしてポニーとロバが?」
私たちは疑問に思いながらもポニーとロバの近くに行き声をかけると、スリスリと顔を擦りつけてくる。
「どうしたんだろうね? 水路の方に行ってみようか?」
スイレンのその言葉で水路を辿って行くとヒイラギが私たちに気付いたようで走り寄って来る。
「ヒイラギ! 何かあったの? ポニーとロバがそこにいたのだけれど」
ヒイラギに声をかけると、疲れたような何とも言えない表情で口を開いた。
「姫たちこそどこに行ってたの? この子たち、しばらくはおとなしく作業を見ていたんだけれど、オヒシバの姿を見たら暴れだしてしまって……連れ出そうと荷車を外している間もおとなしくしてて、広場に連れて行こうとしたら動かなくて」
「まぁ」
「それで『姫たちのところに行く?』って声をかけたらおとなしくここまで来たんだけど姿が見えないし。この子たちもまた動かなくなってしまって」
私もウッカリとしていたが、何故かポニーとロバはオヒシバに対してだけ敵対心を持っている。同様にオヒシバもまたこの子たちを目の敵にしているのだが。
「ならお母様が広場に戻るから一緒に連れて行くわ。行きましょうポニー、ロバ」
じいやとハマナスはこのまままた蛇籠作りと設置に戻ると言う。スイレンも行こうとしたが、大人たちからゆっくり休めと言われ私たち親子はポニーとロバを引き連れて広場へと戻った。
「レンゲ!」
広場へと戻るとナズナさんが血相を変えて走って来る。今度は何事だろうか?
「どうしたのナズナ? どうかした?」
すっかり機嫌を直したお母様はニコニコとナズナさんに微笑みかける。するとナズナさんはお母様の目の前まで来てお母様の両手を掴み深呼吸をした。
「レンゲ、落ち着いて聞くのよ」
「何……? どうしたの……?」
ナズナさんの様子にお母様から笑みが消え、私とスイレンもまた顔が強張る。緊急事態だろうか? 誰かが倒れたりしたのだろうか……?
「……逃げたわ」
「え?」
ナズナさんの言葉の意味が分からないお母様は聞き返す。もちろん私もスイレンも意味が分からず表情は強張ったままだ。
「ちょっと目を離した隙に、モクレンとタデが逃げたのよ!」
「「「はぁ!?」」」
これには私たち親子もハモってしまうほどに驚いた。唖然としているとナズナさんは早口で捲し立てる。
「最近は少しは王様らしくなったかと思ったけれど、やっぱりモクレンはモクレンなのよ! ちょっとレンゲに怒られただけで傷付くなんて、子どもの頃から変わってないわ!」
ナズナさんは呆れ三割、怒り七割といった感じである。
「……さっきは見直したと思ったのだけれど……」
お母様が聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟き、私とスイレンは目だけでお母様を見る。その表情は無であった。私とスイレンは恐ろしくなり、視線を外そうとするとお母様は突然ニッコリと微笑んだ。それがまた怖いのだが。
「カレン、スイレン、私はハコベと一緒にモクレンとタデに話をしに行くわ。どうせこの国であの二人が行ける場所なんて、私たちが泊まったあの小屋しかないのだから。もし暗くなる前に戻って来なかったら、じいやの言うことをしっかりと聞くのよ?」
いつもニコニコとしているお母様だが、必要以上に笑顔になりゆっくりと諭すように話すが、そのこめかみには青筋が見える。それに気付かないフリをして私たち姉弟は聞き分けの良い子のように「はい」と笑顔を貼り付けて返事をする。
「良い子たちね」
そう微笑んで私たちの頭を撫でると「ハコベ! 準備をするわよ!」と鬼の形相で広場の方へとナズナさんを引き連れて行ってしまった。私たちはお父様とお母様の喧嘩など見たことがなかった上に、あの別れ際の表情を見てしまいカタカタと震えるしかなかったのだった。
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