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竹蛇籠
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完成した竹蛇籠を数えてみるがおそらく足りない。かと言ってどれ程あれば良いのかの検討もつかない。割ったタッケはまだたくさん残っているので、ひとまずこのタッケをあるだけ使ってしまうことにした。ただ全員で竹蛇籠を作るわけではなく、三分の一の者たちにはマッツで杭を作ってもらう。
「マッツは油分を含んでいるでしょう? だから水中での作業に適した木材なのよ」
加工作業を見学しながらそう呟くと、この作業に参加していたイチビが口を開いた。
「ということは、これからこの杭を川に打ち込むのですね?」
「そうなのよ。だから川に抵抗がないイチビたちを呼んだのだけれど……やってくれる?」
半ば無理やり連れてきて川へ入れと言うのだから嫌がられても仕方がない。おずおずとそう聞いてみればイチビもハマスゲも「もちろんです」と笑顔で答えてくれほっとする。
杭が出来上がったところで竹蛇籠と共に川へと移動する。まだ石の詰められていない竹蛇籠は大人の力であれば軽々と持ち運ぶことが出来るのだ。そして少々難儀な作業を始めるのでパワー系の二人を呼ぶ。
「お父様ー! じいやー! 手伝ってー!」
二人を指名するとちょうど作り終えたばかりの蛇籠ごと二人はこちらに向かって来る。その表情は「次は何をするんだろう」というワクワク感に満ちている。
大聖牛を設置する時のやり方も地域によって違うだろう。美樹の地域では三角形に組んだ丸太が崩れないように支えるようにして竹蛇籠を設置する。だけれど今回は丸太は使わない。その代わり竹蛇籠を固定する為に杭打ちをすることにした。
「この蛇籠の穴に杭を打って流されないように補強したいの。お父様とじいやなら簡単に打ち込めると思うのだけれど」
それを聞いた二人は遊び道具を取りに行く子どものような目をしてポニーとロバの荷車へと走る。二人とも本当に体を使うことが好きならしい。お父様たちが戻る前に私たちは竹蛇籠の真ん中部分に石を詰める。川に入れてすぐに流されないようにだ。その作業をしているとお父様たちは大きな木製ハンマーを肩に担ぎ戻って来たが、どうにもその姿は悪役にしか見えない。そんなことはもちろん口には出せないので作業を進める。
「この蛇籠を川に入れるわ。川の中に入ることに抵抗のない者だけで大丈夫よ」
取水口は川に対して垂直に作った。そして高低差まで考えずに設置してしまったので上手く水が流れないのだ。手探りで作業をしていたので誰のことも責められない。むしろそこまで考えられなかった私の責任である。そんな思いに駆られ申し訳なく思ってしまうが、作業をする者たちは私の思いとは裏腹に楽しそうに笑い、その明るく振る舞う姿は私の心の闇を払拭してくれる。
「姫様、どの辺に設置するのですか?」
泳いだり川を渡ったりと水に抵抗のないイチビは眩しい笑顔でそう問いかける。彼の中ではこの作業も川遊びの一環なのかもしれない。
「えぇとこの位置に」
私が示したのは取水口のすぐ下流側である。ここに竹蛇籠を設置し、完全にではないが水をせき止める形にして取水口に水を入れようと考えたのだ。そのことを伝えながら川の中に竹蛇籠を入れ、編み始めと編み終わり部分の穴に杭を差し込む形でお父様とじいやにハンマーを振るってもらう。すぐ隣にも同じように竹蛇籠を設置し杭打ちをしてもらう。そして私たちは竹蛇籠の横に一列に並び、バケツリレーのように川岸から石を渡してもらい穴に詰めていく。
作業に夢中になっている間に気付かなかったが、完成した竹蛇籠を運んで来てくれた者たちは水位が上がっていると騒いでいる。取水口を確認すると先程よりも多くの水が流れ込んでいるようだ。
「川に抵抗のある者は水路の確認に向かって!」
そう叫べばマッツを運んで来た者たちが走って広場の方向へと向かった。だがこれで完成ではない。川には抵抗はないが怯えている者たちを集め、川に対して平行に川岸に竹蛇籠を設置してもらう。水位が上がった分、川岸を無駄に削らないようにする処置だ。お父様たちが杭打ちをし、それにも石を詰め込んでもらう。川の中の私たちの作業した二つの蛇籠の上にもう一段蛇籠を載せ俵積みにする。さらに中流側にもう一組の俵積みを作り上げると、水位はさらに上がった気がする。
「このままだとゴミまでも取水口に流れてしまうわ。誰かタッケと縄を持って来て」
そうして持って来てもらった縄を使い、とっくり結びという縛り方でタッケを縛りすのこを作る。縄のおかげでタッケとタッケの間には隙間ができ、取水口に斜めにかぶせるように設置するとその隙間から上手く水が流れ込む。蛇籠や杭で取水口には水以外の大きなものは流れないように細工する。そのすのこの上流側を高くして斜めに設置するとみんなから疑問の声が上がる。
「これは梁漁という魚を捕まえる仕掛けでもあるの。流されてきた魚がこのすのこの上に打ち上がるのだけれど、私たちはずっとここにいるわけではないでしょう? 魚が逃げられるように斜めにしたのよ。無駄な殺生はしたくないから」
普段は魚が蛇籠を越えて上手く逃げられるように細工したが、魚を捕るときはそこを塞げばいいように調整もした。これで水も魚も大量ゲットよ!
「マッツは油分を含んでいるでしょう? だから水中での作業に適した木材なのよ」
加工作業を見学しながらそう呟くと、この作業に参加していたイチビが口を開いた。
「ということは、これからこの杭を川に打ち込むのですね?」
「そうなのよ。だから川に抵抗がないイチビたちを呼んだのだけれど……やってくれる?」
半ば無理やり連れてきて川へ入れと言うのだから嫌がられても仕方がない。おずおずとそう聞いてみればイチビもハマスゲも「もちろんです」と笑顔で答えてくれほっとする。
杭が出来上がったところで竹蛇籠と共に川へと移動する。まだ石の詰められていない竹蛇籠は大人の力であれば軽々と持ち運ぶことが出来るのだ。そして少々難儀な作業を始めるのでパワー系の二人を呼ぶ。
「お父様ー! じいやー! 手伝ってー!」
二人を指名するとちょうど作り終えたばかりの蛇籠ごと二人はこちらに向かって来る。その表情は「次は何をするんだろう」というワクワク感に満ちている。
大聖牛を設置する時のやり方も地域によって違うだろう。美樹の地域では三角形に組んだ丸太が崩れないように支えるようにして竹蛇籠を設置する。だけれど今回は丸太は使わない。その代わり竹蛇籠を固定する為に杭打ちをすることにした。
「この蛇籠の穴に杭を打って流されないように補強したいの。お父様とじいやなら簡単に打ち込めると思うのだけれど」
それを聞いた二人は遊び道具を取りに行く子どものような目をしてポニーとロバの荷車へと走る。二人とも本当に体を使うことが好きならしい。お父様たちが戻る前に私たちは竹蛇籠の真ん中部分に石を詰める。川に入れてすぐに流されないようにだ。その作業をしているとお父様たちは大きな木製ハンマーを肩に担ぎ戻って来たが、どうにもその姿は悪役にしか見えない。そんなことはもちろん口には出せないので作業を進める。
「この蛇籠を川に入れるわ。川の中に入ることに抵抗のない者だけで大丈夫よ」
取水口は川に対して垂直に作った。そして高低差まで考えずに設置してしまったので上手く水が流れないのだ。手探りで作業をしていたので誰のことも責められない。むしろそこまで考えられなかった私の責任である。そんな思いに駆られ申し訳なく思ってしまうが、作業をする者たちは私の思いとは裏腹に楽しそうに笑い、その明るく振る舞う姿は私の心の闇を払拭してくれる。
「姫様、どの辺に設置するのですか?」
泳いだり川を渡ったりと水に抵抗のないイチビは眩しい笑顔でそう問いかける。彼の中ではこの作業も川遊びの一環なのかもしれない。
「えぇとこの位置に」
私が示したのは取水口のすぐ下流側である。ここに竹蛇籠を設置し、完全にではないが水をせき止める形にして取水口に水を入れようと考えたのだ。そのことを伝えながら川の中に竹蛇籠を入れ、編み始めと編み終わり部分の穴に杭を差し込む形でお父様とじいやにハンマーを振るってもらう。すぐ隣にも同じように竹蛇籠を設置し杭打ちをしてもらう。そして私たちは竹蛇籠の横に一列に並び、バケツリレーのように川岸から石を渡してもらい穴に詰めていく。
作業に夢中になっている間に気付かなかったが、完成した竹蛇籠を運んで来てくれた者たちは水位が上がっていると騒いでいる。取水口を確認すると先程よりも多くの水が流れ込んでいるようだ。
「川に抵抗のある者は水路の確認に向かって!」
そう叫べばマッツを運んで来た者たちが走って広場の方向へと向かった。だがこれで完成ではない。川には抵抗はないが怯えている者たちを集め、川に対して平行に川岸に竹蛇籠を設置してもらう。水位が上がった分、川岸を無駄に削らないようにする処置だ。お父様たちが杭打ちをし、それにも石を詰め込んでもらう。川の中の私たちの作業した二つの蛇籠の上にもう一段蛇籠を載せ俵積みにする。さらに中流側にもう一組の俵積みを作り上げると、水位はさらに上がった気がする。
「このままだとゴミまでも取水口に流れてしまうわ。誰かタッケと縄を持って来て」
そうして持って来てもらった縄を使い、とっくり結びという縛り方でタッケを縛りすのこを作る。縄のおかげでタッケとタッケの間には隙間ができ、取水口に斜めにかぶせるように設置するとその隙間から上手く水が流れ込む。蛇籠や杭で取水口には水以外の大きなものは流れないように細工する。そのすのこの上流側を高くして斜めに設置するとみんなから疑問の声が上がる。
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