177 / 370
賑やかな旅路
しおりを挟む
入り口へと向かうと見えて来たのはイチビたちのたくましい背中だ。アンソニーさんに小瓶を手渡しすぐにこちらに向かったのだろう。
「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」
大きな声でその背中に話しかけるとイチビたちは振り返るが、その表情は困ったような顔をしている。
「それが……」
どうしたのだろうか? いつも入り口にいるペーターさんもいない。不思議に思いながら歩を進めるとイチビが口を開いたが、その内容に私たちは「は?」と声を上げる。
「えぇと……もう一度聞いても良いかしら?」
「はい……ブルーノさんが到着し、それを見たペーターさんが自分も行くと騒ぎ出し、どうにもならなくなってしまったのでブルーノさんが旅の支度の手伝いに行きました……お止めすることが出来ないほどの気迫でした……」
話を聞いた私たちは困惑するが、目の前でその一部始終を見ていたイチビたちはもっと困惑しているであろう。そもそもブルーノさんをヒーズル王国に招くことすら想定外だったのだ。それに加え、なぜかペーターさんまで来ることが私たちの知らないところで決まっているのだ。私たちは頭を抱え「どうする?」と言い合うが、どうもこうも無さそうである。と、そこへ聞き慣れた声が響く。
「あぁカレンちゃん! 私も行くからな! ダメだと言われても着いて行くからな! ブルーノが良くて私がダメというのは無しだぞ! 町長として付き添う!」
意気揚々と現れたペーターさんは動きやすい服装に着替え、お断りが出来ないほど楽しげで生き生きとしている。
「でも……ほら……ペーターさんは入り口で見張りをしないといけないんじゃないのかしら?」
言葉を選びつつ話しかけるが「それは刺激が欲しいだけ」とか「ブルーノが行くなら私も行く!」と話が堂々巡りとなってしまい、私たちは根負けしペーターさんの同行を認めざるを得ないことになった。
「えぇと……ブルーノさんにも話したのだけれど、本当に何もないからおもてなしが出来ないわよ」
「もてなされに行くわけではない」
ブルーノさんと同じことを言うペーターさんは満足げに笑う。私たちももう笑うしかなく、呆れ笑いをしながら国境へ向けて歩き出した。道すがら気になることがあったが、あえて口に出さずに国境へ着くと、ジェイソンさんをはじめとした警備隊がざわめいている。
「先生! それに町長殿! どういう組み合わせですか? 何かここに用事でも?」
ほんの数時間前に国境を通り抜けた私たちに驚いているのか矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
「あー……こちらはブルーノさんと言って大工だ。我が国の建築技術向上の為に力を貸してくれるそうでな。そしてペーターさんは町長として付き添いという形でだな……」
じいやも何と説明したら良いのか分からないらしく語尾を濁すと、それまで不思議そうな顔をしていたジェイソンさんが途端に笑顔になる。
「なるほど! 事情は良く分かりました! ……ならば護衛が必要ですね!」
今度はこの国境でジェイソンさんの言葉に困惑してしまう。
「えぇと……ジェイソンさん? 道中危険はないわよ? ……ちょっと過酷なだけで……」
護衛など必要ないくらい屈強な森の民たちの一団なのだ。けれどジェイソンさんは笑顔のまま自己主張を始める。
「本来ならば国境の行き来は記録が必要ですが、それをしていないのです。万が一シャイアーク国民に何かあったら大変なのです。ですから私がお供します!」
「……ジェイソンよ、そなた、ただ我が国に来たいだけであろう……」
誰もが思ったことをじいやが告げると「とんでもありません」と否定はするが、誰がどう見てもヒーズル王国……というよりはじいやの側にいたいのが目に見えてしまい、私たちは呆れ笑いやら失笑をしてしまう。そんな中スイレンが声を上げる。
「もう! 一人も二人も三人も変わらないよ。僕たちの国はもてなすほど何かがあるわけじゃないけど、それでもいいんでしょ? 僕は早く勉強をしたいの!」
あのあまり自己主張をしないスイレンが激しくわがままを言うが、その内容が勉強をしたいだなんて私には理解が出来ず頭痛がしてきた。この三人は遅かれ早かれ招こうと思っていた人たちなのだ。もう面倒になってきたので連れて行ってしまおう。
「はい、ジェイソンさん行くわよ。荷物をまとめる時間はないからそのままの格好でね」
溜め息を漏らしながらそう言うとジェイソンさんは拳を振り上げガッツポーズをし、隊員たちは「隊長だけずるい!」と羨ましがっていたが、土産を持ってくるということで話が付いた。土産物屋すらないヒーズル王国で、帰りに何を持たせるかを考えただけで頭痛が増してきた気がする。
「さあ早く行きましょう。急がないと日が暮れるわ。ちなみに夜営をしないと王国に着かないから覚悟してね」
私の言葉に今までうきうきとしていた三人は驚きの表情のまま固まってしまった。
「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」
大きな声でその背中に話しかけるとイチビたちは振り返るが、その表情は困ったような顔をしている。
「それが……」
どうしたのだろうか? いつも入り口にいるペーターさんもいない。不思議に思いながら歩を進めるとイチビが口を開いたが、その内容に私たちは「は?」と声を上げる。
「えぇと……もう一度聞いても良いかしら?」
「はい……ブルーノさんが到着し、それを見たペーターさんが自分も行くと騒ぎ出し、どうにもならなくなってしまったのでブルーノさんが旅の支度の手伝いに行きました……お止めすることが出来ないほどの気迫でした……」
話を聞いた私たちは困惑するが、目の前でその一部始終を見ていたイチビたちはもっと困惑しているであろう。そもそもブルーノさんをヒーズル王国に招くことすら想定外だったのだ。それに加え、なぜかペーターさんまで来ることが私たちの知らないところで決まっているのだ。私たちは頭を抱え「どうする?」と言い合うが、どうもこうも無さそうである。と、そこへ聞き慣れた声が響く。
「あぁカレンちゃん! 私も行くからな! ダメだと言われても着いて行くからな! ブルーノが良くて私がダメというのは無しだぞ! 町長として付き添う!」
意気揚々と現れたペーターさんは動きやすい服装に着替え、お断りが出来ないほど楽しげで生き生きとしている。
「でも……ほら……ペーターさんは入り口で見張りをしないといけないんじゃないのかしら?」
言葉を選びつつ話しかけるが「それは刺激が欲しいだけ」とか「ブルーノが行くなら私も行く!」と話が堂々巡りとなってしまい、私たちは根負けしペーターさんの同行を認めざるを得ないことになった。
「えぇと……ブルーノさんにも話したのだけれど、本当に何もないからおもてなしが出来ないわよ」
「もてなされに行くわけではない」
ブルーノさんと同じことを言うペーターさんは満足げに笑う。私たちももう笑うしかなく、呆れ笑いをしながら国境へ向けて歩き出した。道すがら気になることがあったが、あえて口に出さずに国境へ着くと、ジェイソンさんをはじめとした警備隊がざわめいている。
「先生! それに町長殿! どういう組み合わせですか? 何かここに用事でも?」
ほんの数時間前に国境を通り抜けた私たちに驚いているのか矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
「あー……こちらはブルーノさんと言って大工だ。我が国の建築技術向上の為に力を貸してくれるそうでな。そしてペーターさんは町長として付き添いという形でだな……」
じいやも何と説明したら良いのか分からないらしく語尾を濁すと、それまで不思議そうな顔をしていたジェイソンさんが途端に笑顔になる。
「なるほど! 事情は良く分かりました! ……ならば護衛が必要ですね!」
今度はこの国境でジェイソンさんの言葉に困惑してしまう。
「えぇと……ジェイソンさん? 道中危険はないわよ? ……ちょっと過酷なだけで……」
護衛など必要ないくらい屈強な森の民たちの一団なのだ。けれどジェイソンさんは笑顔のまま自己主張を始める。
「本来ならば国境の行き来は記録が必要ですが、それをしていないのです。万が一シャイアーク国民に何かあったら大変なのです。ですから私がお供します!」
「……ジェイソンよ、そなた、ただ我が国に来たいだけであろう……」
誰もが思ったことをじいやが告げると「とんでもありません」と否定はするが、誰がどう見てもヒーズル王国……というよりはじいやの側にいたいのが目に見えてしまい、私たちは呆れ笑いやら失笑をしてしまう。そんな中スイレンが声を上げる。
「もう! 一人も二人も三人も変わらないよ。僕たちの国はもてなすほど何かがあるわけじゃないけど、それでもいいんでしょ? 僕は早く勉強をしたいの!」
あのあまり自己主張をしないスイレンが激しくわがままを言うが、その内容が勉強をしたいだなんて私には理解が出来ず頭痛がしてきた。この三人は遅かれ早かれ招こうと思っていた人たちなのだ。もう面倒になってきたので連れて行ってしまおう。
「はい、ジェイソンさん行くわよ。荷物をまとめる時間はないからそのままの格好でね」
溜め息を漏らしながらそう言うとジェイソンさんは拳を振り上げガッツポーズをし、隊員たちは「隊長だけずるい!」と羨ましがっていたが、土産を持ってくるということで話が付いた。土産物屋すらないヒーズル王国で、帰りに何を持たせるかを考えただけで頭痛が増してきた気がする。
「さあ早く行きましょう。急がないと日が暮れるわ。ちなみに夜営をしないと王国に着かないから覚悟してね」
私の言葉に今までうきうきとしていた三人は驚きの表情のまま固まってしまった。
53
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる