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持て成し料理の下ごしらえ
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「この石のカゴ? はどういう理由なんだい? それとここまで来る水は地中を通しているのかい?」
荷車から降りた三人はどこまでも一直線に並ぶ蛇籠を観察していたが、ブルーノさんがおもむろに口を開いた。
「ここは砂地だから、ただ溝を掘った場所に水を流したら砂が流れ込むでしょう? かと言ってただの石を積み上げても同じことが起きてしまう。これはそれを防ぐ役割があるの。そしてこの小さなヤンナギが育つと石の間に根が入り込んでより強固なものにしてくれるのよ。そう考えれば今水位が無くて良かったのかもしれないわね。水は石菅を作ってセーメントで繋いでいるの」
それを聞いたブルーノさんは溜め息を吐きながら首を振る。私の説明に驚きを通り越して呆れているようだ。
「ブルーノさんが計算を教えてくれたから出来たんだよ。川からここまでの角度を大きくすると石菅に負担がかかるし、小さければ水が流れないってカレンが言うから、ホントはすっごく大変だったんだから!」
スイレンははしゃいでそう言うが、その測量をやってのけたスイレンが一番すごいと思う。いや、ここまで作り上げた全員がすごいのだ。ブルーノさんとペーターさんは溜め息ばかりであったが、ジェイソンさんは急に立ち上がり私に向き直る。
「……今まで数々のご無礼を……」
「だからジェイソンさんったら! 普通にして!」
いつぞやのように急に畏まるジェイソンさんにツッコミを入れるとあちらこちらで笑いが起こった。
ふと空を見上げれば太陽は傾き夕方近くになっているようだ。とはいえ地球よりも日が長いので本当の夕暮れまではまだまだ時間がある。今夜の持て成し料理の仕込みをしたい。
「私は今夜の食事の準備をするわ。お父様、お母様、スイレン、三人と楽しくお話をしていてね。料理を手伝ってくれる人を若干名募集しているのだけれど」
料理が完成するまでの相手をお父様たちに頼み、料理の仕込みをしてくれる人を探すと、以前一緒にリトールの町へと行ったタラとセリさんがあの時のお礼をしたいと名乗り出てくれた。さらにいつもタラと共に畑の手入れをしてくれるエビネも名乗りを上げた。最近は作物を作る喜びと共に料理の楽しみを知ったようなのだ。さらにはいつもお母様と共に布作りをしているキキョウさんとナデシコさんも加わり、私と同年代の子どもたちも料理を覚えたいと参加してくれることになった。
ぞろぞろと広場に移動し、私の指示のもとに食材を収穫してもらう。そしてリトールの町で購入してきた食材を取り出しているとセリさんに声をかけられた。
「姫様、それはジンガーですよね? わざわざ買わなくてもすぐ近くに生えていましたのに」
「ウソ……」
この世界での呼び名が分からないので、リトールの町で見つけた時に食べたくてわざわざ購入したのはショウガだ。この世界ではジンガーと呼ぶらしく、フキことフゥキの近くにたくさん生えていると言う。
まずは食材を洗うところから始まり、次に食材を切っていく。女性たちにお願いした切り方をしながら子どもたちに包丁の使い方の指導を頼み、エビネとタラにはポゥティトゥを渡す。
「皮を剥いたらすりおろしてほしいの」
おろし器も手渡し、今日一番の力仕事となるこの作業を頼む。ポゥティトゥは堅いので大変なのだ。その間に私は空の小さな壷を持って油を取りに行く。初めて作った油はしっかりと透明になっており、それでもナーの花を思い起こさせる綺麗な黄色をしている。工場にある柄杓で壷に適当量を入れ広場に戻ると、まだ作業は続いていたので強力粉にあたるムギン粉を準備する。
他の者にも見える位置で、何個かのボウルに適当にムギン粉を入れ塩を混ぜる。基本的に私の料理は目分量なのだ。そして水を入れて捏ねる。捏ねていると以前作ったパスタだと思ったのか喜びの声が聞こえるが、残念ながら違うのである。あえて何になるとは言わず、微笑みながらムギン粉を捏ね続ける。
気付けばエビネとタラの作業が終わっていたので、すりおろしたものを布で搾ってほしいと伝える。その際に出る水分はよせておいてほしいと言うと不思議そうな顔をしていたが、布を持って来て言う通りにしてくれた。
そうしている間に私の作業が終わり、セリさんに湯を沸かしてほしいと頼む。湯が沸くまでに捏ねたものに打粉をして細長く切っていく。そして沸騰した湯に入れて茹で、茹で上がったものを水洗いをすれば手打ちうどんが出来上がる。パスタだと思っていた皆は『何か違う?』といった表情をしているがあえて言葉に出さない。きっとまた別の違う料理だと気付き楽しみになってきたからだろう。
今回作る料理は『和食っぽい』料理なのだ。あくまでも『ぽい』なので和食ではないが、昆布出汁もカツオ出汁もないこの世界で、せめて見た目だけでも和食に近いものを食べたいという私の欲求で今夜の持て成し料理を作るのだ。
荷車から降りた三人はどこまでも一直線に並ぶ蛇籠を観察していたが、ブルーノさんがおもむろに口を開いた。
「ここは砂地だから、ただ溝を掘った場所に水を流したら砂が流れ込むでしょう? かと言ってただの石を積み上げても同じことが起きてしまう。これはそれを防ぐ役割があるの。そしてこの小さなヤンナギが育つと石の間に根が入り込んでより強固なものにしてくれるのよ。そう考えれば今水位が無くて良かったのかもしれないわね。水は石菅を作ってセーメントで繋いでいるの」
それを聞いたブルーノさんは溜め息を吐きながら首を振る。私の説明に驚きを通り越して呆れているようだ。
「ブルーノさんが計算を教えてくれたから出来たんだよ。川からここまでの角度を大きくすると石菅に負担がかかるし、小さければ水が流れないってカレンが言うから、ホントはすっごく大変だったんだから!」
スイレンははしゃいでそう言うが、その測量をやってのけたスイレンが一番すごいと思う。いや、ここまで作り上げた全員がすごいのだ。ブルーノさんとペーターさんは溜め息ばかりであったが、ジェイソンさんは急に立ち上がり私に向き直る。
「……今まで数々のご無礼を……」
「だからジェイソンさんったら! 普通にして!」
いつぞやのように急に畏まるジェイソンさんにツッコミを入れるとあちらこちらで笑いが起こった。
ふと空を見上げれば太陽は傾き夕方近くになっているようだ。とはいえ地球よりも日が長いので本当の夕暮れまではまだまだ時間がある。今夜の持て成し料理の仕込みをしたい。
「私は今夜の食事の準備をするわ。お父様、お母様、スイレン、三人と楽しくお話をしていてね。料理を手伝ってくれる人を若干名募集しているのだけれど」
料理が完成するまでの相手をお父様たちに頼み、料理の仕込みをしてくれる人を探すと、以前一緒にリトールの町へと行ったタラとセリさんがあの時のお礼をしたいと名乗り出てくれた。さらにいつもタラと共に畑の手入れをしてくれるエビネも名乗りを上げた。最近は作物を作る喜びと共に料理の楽しみを知ったようなのだ。さらにはいつもお母様と共に布作りをしているキキョウさんとナデシコさんも加わり、私と同年代の子どもたちも料理を覚えたいと参加してくれることになった。
ぞろぞろと広場に移動し、私の指示のもとに食材を収穫してもらう。そしてリトールの町で購入してきた食材を取り出しているとセリさんに声をかけられた。
「姫様、それはジンガーですよね? わざわざ買わなくてもすぐ近くに生えていましたのに」
「ウソ……」
この世界での呼び名が分からないので、リトールの町で見つけた時に食べたくてわざわざ購入したのはショウガだ。この世界ではジンガーと呼ぶらしく、フキことフゥキの近くにたくさん生えていると言う。
まずは食材を洗うところから始まり、次に食材を切っていく。女性たちにお願いした切り方をしながら子どもたちに包丁の使い方の指導を頼み、エビネとタラにはポゥティトゥを渡す。
「皮を剥いたらすりおろしてほしいの」
おろし器も手渡し、今日一番の力仕事となるこの作業を頼む。ポゥティトゥは堅いので大変なのだ。その間に私は空の小さな壷を持って油を取りに行く。初めて作った油はしっかりと透明になっており、それでもナーの花を思い起こさせる綺麗な黄色をしている。工場にある柄杓で壷に適当量を入れ広場に戻ると、まだ作業は続いていたので強力粉にあたるムギン粉を準備する。
他の者にも見える位置で、何個かのボウルに適当にムギン粉を入れ塩を混ぜる。基本的に私の料理は目分量なのだ。そして水を入れて捏ねる。捏ねていると以前作ったパスタだと思ったのか喜びの声が聞こえるが、残念ながら違うのである。あえて何になるとは言わず、微笑みながらムギン粉を捏ね続ける。
気付けばエビネとタラの作業が終わっていたので、すりおろしたものを布で搾ってほしいと伝える。その際に出る水分はよせておいてほしいと言うと不思議そうな顔をしていたが、布を持って来て言う通りにしてくれた。
そうしている間に私の作業が終わり、セリさんに湯を沸かしてほしいと頼む。湯が沸くまでに捏ねたものに打粉をして細長く切っていく。そして沸騰した湯に入れて茹で、茹で上がったものを水洗いをすれば手打ちうどんが出来上がる。パスタだと思っていた皆は『何か違う?』といった表情をしているがあえて言葉に出さない。きっとまた別の違う料理だと気付き楽しみになってきたからだろう。
今回作る料理は『和食っぽい』料理なのだ。あくまでも『ぽい』なので和食ではないが、昆布出汁もカツオ出汁もないこの世界で、せめて見た目だけでも和食に近いものを食べたいという私の欲求で今夜の持て成し料理を作るのだ。
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