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さらなる喜びを作ろう
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おやきの味見をし、皆の表情を見て大成功なのだと確信する。ならばまだ焼いていないものをどんどんと焼こう。おやきを食べた者たちは嬉しそうに、そして楽しそうに一緒に焼いてくれる。その顔を見ていると、さっきまでうじうじと泣いていたことが恥ずかしくなってしまう。コンプレックスは消えないけれど、皆の為に出来ることを頑張ろう。そう思えた。
焼き上がったおやきは、手が空いている者が取っ手付きのカゴに入れてくれる。もうすぐ昼になろうとしているので収穫しておいたオーレンジンや他の果実など、水分補給となるものと一緒にしそれぞれの作業場へ持って行く為だ。畑や森、布作りの場などには老人たちが散歩がてら配ってくれると言うのでお言葉に甘えることにする。エビネとタラは水汲みに行くと言うので、そちら方面を任せることにした。
「水汲みならポニーとロバを連れて行ったら?」
「私たちの言うことを聞きますかね?」
苦笑いでエビネは言うが、相手がオヒシバでなければ暴れたりはしないはずだ。二頭の様子を見るために、私が呼んでいると声をかけてここまで来れるか試してみることにした。
エビネたちが戻るまでもひたすらおやきを焼いていく。文字通り山のように作ったのだ。焼いては皿に載せたりカゴに入れていると、遠くからポニーとロバが駆け足でやって来るのが見えた。手を止め二頭を撫でるとスリスリと顔をこすりつけてくる。
「ポニー、ロバ、良い子ね。今日はエビネとタラと一緒にお出かけをしてちょうだい。ちゃんと言うことを聞くのよ? あとオヒシバを見てもケンカしたらダメよ?」
二頭はスリスリとしながらも耳だけはこちらに向いている。おそらく分かってくれただろう。
「エビネ、タラ。お父様たちのほうに行くのなら、クレソンを採ってきてもらっても良いかしら? 今夜の晩ごはんに使いたいの」
二人は「分かりました」と了承してくれ、ポニーとロバに荷車を取り付け川の方へと向かって行った。
皆を見送った後に残り数個のおやきを焼いてしまい、次の料理に取り掛かる。日本でかぼちゃ料理と言えば煮物だが、パンキプンを使ってそれを作る。水の節約の為に布巾を絞って鍋を水拭きし、かまどには鍋だけを置く。皆おやきを配りに行ったので辺りには誰もいない。私一人でも火を起こせるのだ。そう思い必死に火を起こそうとするがなかなか火が起きない。必死になっていると、戻って来た老人たちがいとも容易く火を起こしてくれたが悔しい。
気持ちを切り替え鍋に餡にしなかったパンキプンと、その皮の部分を入れる。私は煮物にした時の、皮の何とも言えない食感が好きなので出来上がりが楽しみである。それぞれの鍋にパンキプンが浸るくらい水を入れ、砂糖・セウユ・酒を適量入れる。後は落し蓋をして煮詰めれば完成だ。
煮汁が減り、煮詰められたのを確認し火を消して少し休憩をとることにする。鍋の中の小さなパンキプンを味見すれば、目分量で作ったとは思えない程の美味しい煮物が出来ていた。休憩しながら民たちと談笑していると、どうやらエビネたちが戻って来たようだ。
「ただいま戻りました。クレソンが増えていたので多めに採ってまいりました」
「ありがとう。ポニーとロバも頑張ったわね」
そう言いながら二頭の頭を撫でているとタラが苦笑いで口を開いた。この子たちが粗相をしたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。おやきを配った全員に二頭はすり寄ったらしいが、オヒシバだけは完全に無視をしていたそうだ。ケンカをするなとは言ったが、無視をするとは思わず私も苦笑いをしてしまう。私たちが思う以上に言葉を理解しているようだ。
ポニーとロバの行動について笑っているうちに夕食の準備をする時間となる。とはいっても煮物も完成しているし、後はサラダくらいだ。サラダは食べるギリギリに盛り付けることにするので、トゥメィトゥを水に入れて少しでも温度を下げる。火を通す時は気にしないがサラダとして他の食材と合わせるなら温度を下げたほうが良い。
お母様たちも戻って来たのでナンを焼いてもらうことにし、私はサラダのドレッシング作りをする。使える材料が少ないので簡単なドレッシングしか作れないが、油とセウユに少しの砂糖とリーモンの搾り汁を入れてさっぱりとしたドレッシングを作る。
────
「さぁ召し上がれ」
昼も夜もパンキプンで申し訳ないが、皆は気にする様子もなく食べてくれる。特製ドレッシングも好評で「酸っぱいけど美味しい」とスイレンはトゥメィトゥばかりを食べている。辛味のあるクレソンはスイレンはあまり食べないのだ。
今夜も楽しく談笑しながら食事をしていると、突然ペーターさんが大声で話し始めた。
「私は……明後日に帰ろうと思う。あまりここにいたら皆さんにも迷惑がかかるだろうし、何よりも私自身が帰りたくなくなってしまう……」
お父様をはじめとする私たちは迷惑などと思っておらず、そのことをはっきりと告げるがペーターさんの意思は強いようで「止めないでくれ」と言って聞かない。私たちも無理強いするわけにもいかず、その後は口数の少ない静かな食事となってしまった。
焼き上がったおやきは、手が空いている者が取っ手付きのカゴに入れてくれる。もうすぐ昼になろうとしているので収穫しておいたオーレンジンや他の果実など、水分補給となるものと一緒にしそれぞれの作業場へ持って行く為だ。畑や森、布作りの場などには老人たちが散歩がてら配ってくれると言うのでお言葉に甘えることにする。エビネとタラは水汲みに行くと言うので、そちら方面を任せることにした。
「水汲みならポニーとロバを連れて行ったら?」
「私たちの言うことを聞きますかね?」
苦笑いでエビネは言うが、相手がオヒシバでなければ暴れたりはしないはずだ。二頭の様子を見るために、私が呼んでいると声をかけてここまで来れるか試してみることにした。
エビネたちが戻るまでもひたすらおやきを焼いていく。文字通り山のように作ったのだ。焼いては皿に載せたりカゴに入れていると、遠くからポニーとロバが駆け足でやって来るのが見えた。手を止め二頭を撫でるとスリスリと顔をこすりつけてくる。
「ポニー、ロバ、良い子ね。今日はエビネとタラと一緒にお出かけをしてちょうだい。ちゃんと言うことを聞くのよ? あとオヒシバを見てもケンカしたらダメよ?」
二頭はスリスリとしながらも耳だけはこちらに向いている。おそらく分かってくれただろう。
「エビネ、タラ。お父様たちのほうに行くのなら、クレソンを採ってきてもらっても良いかしら? 今夜の晩ごはんに使いたいの」
二人は「分かりました」と了承してくれ、ポニーとロバに荷車を取り付け川の方へと向かって行った。
皆を見送った後に残り数個のおやきを焼いてしまい、次の料理に取り掛かる。日本でかぼちゃ料理と言えば煮物だが、パンキプンを使ってそれを作る。水の節約の為に布巾を絞って鍋を水拭きし、かまどには鍋だけを置く。皆おやきを配りに行ったので辺りには誰もいない。私一人でも火を起こせるのだ。そう思い必死に火を起こそうとするがなかなか火が起きない。必死になっていると、戻って来た老人たちがいとも容易く火を起こしてくれたが悔しい。
気持ちを切り替え鍋に餡にしなかったパンキプンと、その皮の部分を入れる。私は煮物にした時の、皮の何とも言えない食感が好きなので出来上がりが楽しみである。それぞれの鍋にパンキプンが浸るくらい水を入れ、砂糖・セウユ・酒を適量入れる。後は落し蓋をして煮詰めれば完成だ。
煮汁が減り、煮詰められたのを確認し火を消して少し休憩をとることにする。鍋の中の小さなパンキプンを味見すれば、目分量で作ったとは思えない程の美味しい煮物が出来ていた。休憩しながら民たちと談笑していると、どうやらエビネたちが戻って来たようだ。
「ただいま戻りました。クレソンが増えていたので多めに採ってまいりました」
「ありがとう。ポニーとロバも頑張ったわね」
そう言いながら二頭の頭を撫でているとタラが苦笑いで口を開いた。この子たちが粗相をしたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。おやきを配った全員に二頭はすり寄ったらしいが、オヒシバだけは完全に無視をしていたそうだ。ケンカをするなとは言ったが、無視をするとは思わず私も苦笑いをしてしまう。私たちが思う以上に言葉を理解しているようだ。
ポニーとロバの行動について笑っているうちに夕食の準備をする時間となる。とはいっても煮物も完成しているし、後はサラダくらいだ。サラダは食べるギリギリに盛り付けることにするので、トゥメィトゥを水に入れて少しでも温度を下げる。火を通す時は気にしないがサラダとして他の食材と合わせるなら温度を下げたほうが良い。
お母様たちも戻って来たのでナンを焼いてもらうことにし、私はサラダのドレッシング作りをする。使える材料が少ないので簡単なドレッシングしか作れないが、油とセウユに少しの砂糖とリーモンの搾り汁を入れてさっぱりとしたドレッシングを作る。
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「さぁ召し上がれ」
昼も夜もパンキプンで申し訳ないが、皆は気にする様子もなく食べてくれる。特製ドレッシングも好評で「酸っぱいけど美味しい」とスイレンはトゥメィトゥばかりを食べている。辛味のあるクレソンはスイレンはあまり食べないのだ。
今夜も楽しく談笑しながら食事をしていると、突然ペーターさんが大声で話し始めた。
「私は……明後日に帰ろうと思う。あまりここにいたら皆さんにも迷惑がかかるだろうし、何よりも私自身が帰りたくなくなってしまう……」
お父様をはじめとする私たちは迷惑などと思っておらず、そのことをはっきりと告げるがペーターさんの意思は強いようで「止めないでくれ」と言って聞かない。私たちも無理強いするわけにもいかず、その後は口数の少ない静かな食事となってしまった。
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