265 / 370
いつもの広場へ
しおりを挟む
広場へ戻る道すがら、スイレンから話を聞いた。いつもおとなしくのんびりとしているポニーとロバが急に暴れ出し、放牧地から出たそうにしていたので二頭を出したらしいのだ。
すると二頭は自分から馬具を口に咥え、スイレンに迫ったらしい。
「てっきり僕たちの手伝いをしてくれると思ったの」
馬具を装着している間もおとなしく、装着し終えると同時に二頭は走り出したらしい。その二頭を追ってスイレンは走り出し、たまたま近くにいたオヒシバがスイレンの後を追ったらしいのだ。
ちなみに今でもポニーとロバと、オヒシバの関係は良くなっていないらしい。
「ポニーとロバはカレンのことが好きだから、きっとすぐに分かったんだね」
そう言ってスイレンは微笑む。こんなに長い期間離れたことのなかった私の片割れは、やはり最高の癒やしの存在なのだ。その笑顔に疲れが吹っ飛ぶ。
そんな会話をしているうちに、とうとう私たちの家がある広場へと到着した。
「みんなー! カレンたちが帰って来たよー!」
今までのスイレンからは考えられないほど腹から声を出して叫び、その声量に私たちは驚いた。きっとスイレンも少しずつたくましく成長しているのだろう。
「姫様ー!」
「モクレン様ー!」
ほんの少し大人の階段を登ったスイレンを見ているうちに、広場にはどんどんと人が集まって来た。その中から風のように駆けて来る者がいた。森の民の全力疾走はこんなにも速いのかと驚いていると私たちの前で止まり、お父様とハイタッチをしている。
「タデ! ヒイラギ! 変わりはないか?」
お父様が少年のように笑っている。
「変わりあるわけがないだろう!」
「あったら怒るくせに!」
全力疾走をして来たのに息切れ一つしていないタデとヒイラギは、お父様と同様に少年のような顔で微笑んでいる。そしてお父様とのやり取りを終えると私を見た。
「娘よ! 会いたかったぞ!」
「私の妹! 寂しかったんだよ!」
以前、私はタデを『お父さん』と呼び、ヒイラギを『歳の離れたお兄ちゃん』と呼んだ。二人はそのことを忘れなかったのだろう。『お父さん』と『お兄ちゃん』に私は揉みくちゃにされる。
「待って待って二人とも! 落ち着いて!」
そうは言っても「落ち着くなんて出来ない」と二人に持ち上げられたり、抱っこをされたりと、まるで赤ん坊になった気分だ。
「……モクレン! ……カレン! じいやも……おかえりなさい!」
私の周りが大騒ぎの中、か細い鈴の音のような声が聞こえた。お母様だ。
「お母様! ただい……ま……」
元気に挨拶をしたのだが、お母様は一応私とじいやにも「おかえりなさい」と言ったにもかかわらず、真っ直ぐにお父様の元へと走りその胸に飛び込んだ。お父様もしっかりと両腕でお母様を抱きしめている。
「こんなに離れたことなんてなかった……」
「そうだな……待たせてしまったな」
ドラマか何かかと思うほど二人の世界になってしまっている。スイレンもギョッとしているが、見ているこちらが赤面してしまい、二人をその場に残して広場の中央へと移動した。大人たちは見慣れているのか、お父様とお母様に声すらかけない。
「ようやく帰って来たわー! ただいまー!」
「戻りましたぞー!」
じいやと共に大声で叫ぶと、笑いと共に拍手が起きる。するとスイレンが口を開いた。
「カレン変わらないね」
「どういう意味?」
スイレンに問いかけると、スイレンは問題発言をした。
「あんなにお姫様らしいクジャクさんと一緒にいたんでしょう? お姫様らしさを見習おうと思わなかったの? あっ……ごめん。それどころじゃなかったよね……」
普段のクジャを知らないスイレンは、クジャをおとなしいお姫様だと思っている。私のように大雑把で騒がしく、そして食いしん坊だと言っても信じないだろう。苦笑いしか出て来ないのが悔しい。
「カレンちゃーん!」
「先生ー!」
悔しさからプルプルと震え始めていると、遠くからまた懐かしい声が近付いて来た。その声が聞こえる方向を見ると、ジェイソンさんがブルーノさんをおんぶして走って来ておりギョッとしてしまった。
「ジェイソン! ブルーノ殿の体を気遣わんか!」
「あぁ! 間違いなく先生だ! もっと怒鳴ってください!」
この国に来た時の服装は汚してしまったのか、二人ともヒーズル王国の服を着ている。そのことに触れずにじいやはジェイソンさんを怒鳴るが、ジェイソンさんはそれは嬉しそうにしている。
「カレンちゃん、ベンジャミンさん、モクレンさんは……あぁ……。おかえり! お疲れ様!」
お父様の姿を確認し、いろいろと察した表情をしたブルーノさんは私とじいやを労ってくれた。
「ただいま。ブルーノさん、ジェイソンさん。私たちが帰って来ないから、帰らなかったのでしょう?」
「それもあるけど、こんなに建築が楽しいと感じたのは久しぶりで、なかなか帰りたくなくてね」
「私も建築というものの魅力に気付いてしまいました!」
そう二人は言う。まずはお疲れ様と皆の休憩も兼ねて、お茶でも飲もうとお茶会の準備が始まった。
ちなみにお父様とお母様は二人の世界に入ってしまい、誰もが声をかけるのを躊躇っていたが、そういったことに疎いスイレンが普通に駆け寄り二人の世界を壊したのには皆が笑ったのだった。
すると二頭は自分から馬具を口に咥え、スイレンに迫ったらしい。
「てっきり僕たちの手伝いをしてくれると思ったの」
馬具を装着している間もおとなしく、装着し終えると同時に二頭は走り出したらしい。その二頭を追ってスイレンは走り出し、たまたま近くにいたオヒシバがスイレンの後を追ったらしいのだ。
ちなみに今でもポニーとロバと、オヒシバの関係は良くなっていないらしい。
「ポニーとロバはカレンのことが好きだから、きっとすぐに分かったんだね」
そう言ってスイレンは微笑む。こんなに長い期間離れたことのなかった私の片割れは、やはり最高の癒やしの存在なのだ。その笑顔に疲れが吹っ飛ぶ。
そんな会話をしているうちに、とうとう私たちの家がある広場へと到着した。
「みんなー! カレンたちが帰って来たよー!」
今までのスイレンからは考えられないほど腹から声を出して叫び、その声量に私たちは驚いた。きっとスイレンも少しずつたくましく成長しているのだろう。
「姫様ー!」
「モクレン様ー!」
ほんの少し大人の階段を登ったスイレンを見ているうちに、広場にはどんどんと人が集まって来た。その中から風のように駆けて来る者がいた。森の民の全力疾走はこんなにも速いのかと驚いていると私たちの前で止まり、お父様とハイタッチをしている。
「タデ! ヒイラギ! 変わりはないか?」
お父様が少年のように笑っている。
「変わりあるわけがないだろう!」
「あったら怒るくせに!」
全力疾走をして来たのに息切れ一つしていないタデとヒイラギは、お父様と同様に少年のような顔で微笑んでいる。そしてお父様とのやり取りを終えると私を見た。
「娘よ! 会いたかったぞ!」
「私の妹! 寂しかったんだよ!」
以前、私はタデを『お父さん』と呼び、ヒイラギを『歳の離れたお兄ちゃん』と呼んだ。二人はそのことを忘れなかったのだろう。『お父さん』と『お兄ちゃん』に私は揉みくちゃにされる。
「待って待って二人とも! 落ち着いて!」
そうは言っても「落ち着くなんて出来ない」と二人に持ち上げられたり、抱っこをされたりと、まるで赤ん坊になった気分だ。
「……モクレン! ……カレン! じいやも……おかえりなさい!」
私の周りが大騒ぎの中、か細い鈴の音のような声が聞こえた。お母様だ。
「お母様! ただい……ま……」
元気に挨拶をしたのだが、お母様は一応私とじいやにも「おかえりなさい」と言ったにもかかわらず、真っ直ぐにお父様の元へと走りその胸に飛び込んだ。お父様もしっかりと両腕でお母様を抱きしめている。
「こんなに離れたことなんてなかった……」
「そうだな……待たせてしまったな」
ドラマか何かかと思うほど二人の世界になってしまっている。スイレンもギョッとしているが、見ているこちらが赤面してしまい、二人をその場に残して広場の中央へと移動した。大人たちは見慣れているのか、お父様とお母様に声すらかけない。
「ようやく帰って来たわー! ただいまー!」
「戻りましたぞー!」
じいやと共に大声で叫ぶと、笑いと共に拍手が起きる。するとスイレンが口を開いた。
「カレン変わらないね」
「どういう意味?」
スイレンに問いかけると、スイレンは問題発言をした。
「あんなにお姫様らしいクジャクさんと一緒にいたんでしょう? お姫様らしさを見習おうと思わなかったの? あっ……ごめん。それどころじゃなかったよね……」
普段のクジャを知らないスイレンは、クジャをおとなしいお姫様だと思っている。私のように大雑把で騒がしく、そして食いしん坊だと言っても信じないだろう。苦笑いしか出て来ないのが悔しい。
「カレンちゃーん!」
「先生ー!」
悔しさからプルプルと震え始めていると、遠くからまた懐かしい声が近付いて来た。その声が聞こえる方向を見ると、ジェイソンさんがブルーノさんをおんぶして走って来ておりギョッとしてしまった。
「ジェイソン! ブルーノ殿の体を気遣わんか!」
「あぁ! 間違いなく先生だ! もっと怒鳴ってください!」
この国に来た時の服装は汚してしまったのか、二人ともヒーズル王国の服を着ている。そのことに触れずにじいやはジェイソンさんを怒鳴るが、ジェイソンさんはそれは嬉しそうにしている。
「カレンちゃん、ベンジャミンさん、モクレンさんは……あぁ……。おかえり! お疲れ様!」
お父様の姿を確認し、いろいろと察した表情をしたブルーノさんは私とじいやを労ってくれた。
「ただいま。ブルーノさん、ジェイソンさん。私たちが帰って来ないから、帰らなかったのでしょう?」
「それもあるけど、こんなに建築が楽しいと感じたのは久しぶりで、なかなか帰りたくなくてね」
「私も建築というものの魅力に気付いてしまいました!」
そう二人は言う。まずはお疲れ様と皆の休憩も兼ねて、お茶でも飲もうとお茶会の準備が始まった。
ちなみにお父様とお母様は二人の世界に入ってしまい、誰もが声をかけるのを躊躇っていたが、そういったことに疎いスイレンが普通に駆け寄り二人の世界を壊したのには皆が笑ったのだった。
41
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる