幽幻會社 夢現堂

Levi

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就職活動

開始です!

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 さて、履歴書を書いたはいいですが、面接希望の電話をするのがハードル高すぎです。

 スマホを持ったり置いたりと、緊張からなかなか電話を掛けられません。
 さすがに三時間も同じ事を繰り返していると、ようやく覚悟が決まりました。

「……もももももしもしもし、あああああのあの、面接をしたいです……」

 えぇ、とてつもなく不審者極まりない電話をしましたが、なんと面接をしていただけるようです。
 翌日、アパートから少し離れたコンビニに面接に行きました。

 結果!

 見事に不合格……。

 え? コンビニの面接って落ちるの? あれ? ニートってコンビニのバイトから始めて社会に復活するんじゃないの??

 それ以降、自宅に一番近いコンビニ以外、五件面接して全滅ですよ。ちなみに一番近いコンビニは、落ちたら買い物に行けないので面接なんて行きませんよ!

 いや~五件受けて全部ダメって、逆にすごくないですか?

 しかも面接に行く度に、ストッキングが伝線したり転んで怪我したり、パンプスのヒールが私の体重を支えられなくなったのか、ポキッと折れたり……。
 ちなみにヒールは接着剤で直しましたけど、地味~に出費が痛い……。

 その後もコンビニ以外に面接に行っても、門前払いのように面接すらしてもらえないこと多数でした。
 受付で名乗ったら、少しの沈黙の後に「もう決まってしまって……」って、明らかに嘘ですよねぇぇ!?

 そんな事を繰り返し、アパート付近の資格・経験不問の会社は全滅。どんどん目減りする通帳残高。

 これは本格的にヤバいと思い、ついに頑張って隣駅にまで面接に行った日のことですよ。
 珍しくちゃんと面接をしてくれたのは、隣駅に隣接するスーパーでした。サービスカウンターを募集しているようです。でもサービスカウンターって何をするのでしょうか?

 もちろん私はそんなことなんて聞ける訳もなく、淡々と面接は進みます。面接官は店長代理という綺麗なおばちゃんでした。
 美人さんだなぁなんて思いつつ、どうせ落ちるんだろうと思い、適当な受け答えをしていました。

「ごめんなさいね。今回は採用を見送らせていただきます」

 もうね、後日連絡とかじゃなく、その場で落とされてしまうのにも慣れてしまいました。

「……はい……分かりまし……たぅっ!!??」

 ビリッ!!!!

 立ち上がり、お辞儀をしようとした瞬間、スカートの縫い目が裂けました……。横からパンツもストッキングも丸見えです……。
 色気も素っ気もない私のベージュのパンツが、ストッキングの色と同化して履いてない人みたいになってしまったのです……。

 面接官のおばちゃんとしばし呆然としました。さすがに可哀想と思われたのか、しょっぱい表情をして「縫い直してあげる」と言われ、目隠し用のカーディガンを渡されました。

 スカートを脱いでカーディガンで下半身を隠し、チクチクと私のスカートを縫ってくれるおばちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。面接に落ちてるだけに、私の心もチクチクとしますよ。

 無言が続いていた時に、おばちゃんが不意に口を開きました。

「桃田さん、どうして不合格になったか分かる?」

 手を止めて、私を見つめて言いました。

「いやぁ~……資格も経験もないからですかねぇ……?」

 ポリポリ、と頬を掻きながら答えました。

「それは関係ないわ。まず、入室の時に失礼しますも、よろしくお願いしますも何も言わない。動きもマイペース。受け答えも『はぁ……』とかやる気も覇気も感じない」

 スーパーダメ出しタイムktkr。

「服装はいいのよ。けどね、せめて髪を整えたり、軽くお化粧したりしたりしないと接客業は受からないわ。あなた、自分が働いている姿を想像できる? お客様として来店した時に、そんな自分を見てどう思うかしら?」

 正論ばかりで何も言い返せず、見事に無言になってしまった私です。少し経つと、直ったスカートを渡されました。

「……ありがとう……ございます……」

「キツイ事を言ってごめんなさいね。けど、少しは考えてみて。気付いてそこを直せたら、貴女はきっと変われるから」

 その後どうやって事務所を出たのか分からないですが、電車で帰る気にもならず、歩きながら言われた言葉をずーっと考えてしまいました。
 歩きながら顔を上げた時、ふと、ショーウィンドウに写る自分の姿を見た時に思ってしまったのです……。

 腰まで髪を伸ばした、ヒゲのない葉加〇太郎かパパ〇ヤ鈴木じゃないか、と。だらしのない体型で、一切整えてない伸ばしっぱなしのくせ毛のスッピンアラサーは、相手を不愉快にさせてしまうんだ、と。
 ……うん、こんな店員なんてお客さん目線で見ると嫌だし、自分が面接官だったら落とします……。

 そう認識してしまうとすれ違う人に笑われているような気になり、大通りから小道へと逃げるように入りました。

 とぼとぼと歩きながら、面接官のおばちゃんに言われた事をまた思い出すと、何の感情なのか自分でも分かりませんが、とにかく涙が溢れてきました。
 通行人に見られるのが恥ずかしくて、私はさらにさらに小道へと進みます。

 気付くと辺りは何もない場所でした。しいて言えば、かなり高さのある壁が連なっている小道でした。
 周囲には人もおらず、今度は迷子かよ! と自分にツッコミをしていたら、またヒールが折れました。両足ともに。

 私の心も完全にポッキリと折れ、辺りに人がいないことを良いことに、声をあげてギャン泣きしてしまいました。
 その時に不思議現象が起こったんです。
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