幽幻會社 夢現堂

Levi

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出会い

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「うわぁぁぁん!!」

 と、大声で泣き叫ぶ恥ずかしい大人、私こと桃田百合子です。こんなに泣いたのは小学生以来です。

 周りに人の気配がないのをいい事に、引くほど泣きました。私は何をしているんだろう、今まで何をしてきたんだろうって思いながらです。

 壁に両手をつけて泣いていると、なんと突然壁が動き出しました。

「……は?」

 手を離して間抜けな顔で壁を見てみると、音もなく静かに地中に埋まって行きます。

「ねぶちゃん? 初めまして! 明日来るんじゃなかったの?」

 頭上から子供の声が聞こえ、顔を上げると地中に埋まって行く壁のてっぺんに、赤い着物を着た小さな女の子が立っています。
 壁が埋まって行くので、エレベーターの下りのように女の子がスゥーと目の前に降りてきます。

 てか、ねぶちゃん? この壁は最新技術?? 引きこもってる間に、世界ではすごい技術が開発されたんだぁ……。

 さすがに驚きから泣き止み呆然としてると、少女は壁があったはずの場所に立っていて、小首を傾げニコリと微笑みました。

 ……やだ、かわいい。そして壁が埋まった跡が分かんないって、本当にすごい技術だなぁ……。

「ねぶちゃんでしょ? みんな待ってるよ? 早く早く~!」

 小さなかわい子ちゃんは、キャッキャと騒ぎながら壁があった向こう側に走ります。少し離れた所で止まり、おいでおいでと私を急かします。
 何だかよく分からないけど、かわい子ちゃんに癒されに行こう! そう決め、折れたヒールを両手に握りしめ、ヒールが折れたせいでカカトがパカパカいうパンプスで走りました。

 壁のあった向こう側は手前は林のような感じで、奥の方は背の高い木々が生い茂っています。まるで森の中にいるようです。
 その奥に建物らしき物が見え、かわい子ちゃんが走って向かって行くので追いかけます。

 その建物の全貌が見えて驚きました! あんなに木がたくさんあったのに、そこだけ拓けた場所にある物は素敵な建物でした。
 白い壁に窓枠は水色で統一されていて、柱や小さなバルコニーの手すり、軒先なども綺麗な水色で統一されたそれは、まさに大正ロマン溢れるお屋敷でした。

 口を開けて見ているうちに、かわい子ちゃんが玄関へと入ってしまいました。ぽけーっとしながら続く私です。

「……お邪魔しま~す……」

 恐る恐る中へと入ると、コレまたビックリです! 靴を脱ぐスペースがないんです! え? ここ日本なのに土足でいいの??
 しかも目の前にはとても幅の広い階段があります! 踊り場の左右に、二階へ登る階段があります! その踊り場には小洒落た照明が付いていて、私は劇や舞台へと迷い込んだようです。

 パニックになりながら立ち尽くしていると、今立っている玄関の左側のお部屋から声が聞こえてきました。

「お姉ちゃーん! ねぶちゃん来たよ~!」

 これはさっきのかわい子ちゃんの声です。声すらもかわい子ちゃんです。

「は? ねぶは明日だろう? それにお前はねぶに会ったことないだろ」

 キツイ口調のハスキーボイスの女性の声が聞こえました。

「え? ねぶ来たのぉ? ねぶぅぅぅ~!!」

 今度は語尾を伸ばした感じの甘ったるい話し方の女性のようだけど、だんだんと声が大きくなる……ってこっちに来てる!?

 バァン! とドアが開き、目にも留まらぬ早さでタックル、もとい抱き着いてきた女性がいました。

「ねぶぅぅぅ~!!」

「ぐふぅっ!!」

 私の断末魔のような声で手を離してくれたので、ようやくその姿を確認する事ができた。

 上から下までお互い観察をします。お相手はサラサラでツヤツヤの茶色い長い髪で、毛先は巻き巻きしています。
 目元はどうやって化粧をしているのか分からないけど、綺麗なグラデーションのアイシャドウにまつ毛がくるんとしていて、ぷっくりツヤツヤのピンクのくちびるが奪いたくなるほど可愛くて……。

「……だぁれ??」

 と、声を発しました。うん、不審者扱いですね、分かります。

「あ!!」

 と、その女性が言った瞬間、私の顔の横を何かが通った気がして横を見てみるけど、そこには何もないです……。
 前を向いてまた目が合うけど……とりあえず不敵に微笑んでみます。不審者でごめんなさい!
 どうしよう、何か言わないと……と思っていると先にあちらが口を開きました。

「……ちょ~っとだけ、このまま待っててねぇ。帰っちゃダメだよ?」

 美しい女性は、引きつった笑顔のまま元の部屋に走って行きました。
 ……通報か? 通報されるのか? だったら下手に帰るより、このままここにいて警察に本当の事を言おうと佇んでいました……心臓バクバクですけどね!

「ちょっとぉ! ねぶじゃないじゃない! どうしたのよ!?」

 あ、女性が怒っていらっしゃる。

「え~? 太ってるからねぶちゃんだと思った~!」

「がはっ!!」

 かわい子ちゃんの悪気ないデブ発言に血を吐きました……。あ、嘘です、脳内吐血です。

「知らない人間を入れたのか!?」

「えへへ。ごめんね!」

「ちょっとぉ! どうすんのぉ~!?」

 修羅場だ……修羅場が待っている……。白目をむいて立っていると、ドアが静かに開きました。さっきの女性がまた引きつった笑顔で出てきました。

「え~っとぉ、何ちゃん??」

「……桃田……百合子です……」

 消え入りそうな声で答えると、どうぞとお部屋に通されました。そのお部屋もまたモダンなこと!
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