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出会い
②
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お部屋の中は、外と同じく白い壁。天井も同じく白いけど、梁と言うのでしょうか? 所々、等間隔にこげ茶色の木を使っています。
その梁と梁の間に、チューリップ型の傘が五つ付いたレトロなシャンデリアがこちらを向いて咲き誇っています。
壁には同じチューリップ型の照明が、天井に向かって咲いています。
床を見ると赤というよりは、えんじ色の絨毯が敷かれています。濃いえんじ色と薄いえんじ色が交互に並んでいて、とってもオシャンティー。
どうぞ、と促された先は、黒っぽい大きな猫足木製テーブルです。その周りには、これまた猫足の三人掛けのソファーが置かれています。
姫様が座るようなそのソファーは、クリーム色の布地でモスグリーンの幾何学模様が描かれていて、背もたれも同じデザインのふかふか布地で作られているようで、背中が痛くなる心配はなさそうです。
えぇ。まさに大正ロマン溢れる室内です! 口を開いてキョロキョロと見回していたら、言われてしまいました。
「何をしている。早く座れ」
と。黒髪ワンレンロングの女性が、ニコリともせず言い放ちました……。
かかとをパカパカいわせながら、恐る恐るソファーへと歩き、静かに座ったソファーはモッフリとした感触です。
はんあ~……気持ちいいわぁ~……なんて思ってしまいました。
さて、テーブルを挟んだ向かいのソファーには、三人の女性が座っています。
左から、さっきの着物を着た女の子。私には飽きたのか、一人であやとりに夢中になってます……かわいい。
真ん中には、先ほど抱き着いてきた女性がいます。薄いピンクの生地に紫の大輪の花が描かれた、大人っぽいキャミワンピを着ています。
胸元は谷間がくっきり! すっごい細いのに、私のただの脂肪の塊の乳より重量がありそうです……ゴクリ。
右側には、腰まであるツヤツヤの髪のワンレン女性がいます。黒いキャミにデニムのホットパンツを履いています。そこから伸びる足は細く長く……まるでモデルさんのようです。
「ところで何を持ってるんだ?」
右側の女性が、不審者を見るような目で私を見ます。いえ、不審者にほぼ間違いないのですが。言われて両手を確認すると、握りしめたままのヒールがありまし。
「……え~と……折れたヒールです……」
「……そうか……」
微妙すぎる沈黙タイムが発生しました。何を言ったら良いのか分からないまま、少し視線を泳がせた時です。
「うひゃあ!」
私のスネにモフモフっとした感触が!
「「こら! スネ子!!」」
真ん中と右側の女性がハモリました。
「……あ……猫ちゃんですか?? 猫ちゃ~ん……」
この沈黙を破ってくれた猫ちゃんを見ようと思い、足元を見てもどこにもいません……。不思議に思っていると、真ん中の女性が話しかけてきました。
「えっとぉ……百合ちゃんって言ったっけ~? もう少しでね~、何て言ったらいいかなぁ……そうだ! 私たちのリーダーが帰って来るからぁ、もうちょ~っとだけ待ってねぇ」
胸元でパチンと鳴らした手を重ねたまま、ニッコリと微笑みます。
「あの……不法侵入だったらごめんなさい……そんなつもりは無く……えっと……私、帰りますね……」
所々つかえながら、ようやく声を絞り出した私です。そして立ち上がると……。
「駄目だ。座れ」
……右側の女性が怖いよぅ……。
「ちょっとぉ! ユキ! 怯えてるじゃない! ごめんねぇ~百合ちゃん! 悪気はないのよ~口と愛想が悪いだけで~」
「私のどこが口が悪いんだ? 腹黒いお前よりはマシだろう」
「ひどぉい! 腹黒くなんかないもん! 私も本体も真っ白よ~!」
……ん?
「……本体?」
ついうっかりと聞き返してしまいました。
「えっと……あの……あの……もぅ~ぬんはまだぁ!?」
「ぬん?」
もうワケワカメな私です。
「今しがた使いを出したばかりだろう? そうだ、お前水を飲め」
「ちょっとぉ! お客さんに水とか……って何も出してなかったぁ!」
「私も出す~!」
トリオ漫才でしょうか? 三人が立ち上がり、隣のキッチンと思われる場所に小走りで行きました。
そして待つこと数分。
私の前には丁寧に説明された、コップに入った水、アジアンテイストなカップとソーサーに注がれた烏龍茶、かわいい湯呑みに入った玄米茶が置かれています……何で三種類もあるのでしょうか?
とりあえず右側の女性が怖いので、ユキと呼ばれた女性が持ってきた水を飲みました。
「……うわぁ……冷たくて、まろやかで……ほのかな甘味を感じる……美味しいです」
恐る恐る感想を言うと「そうか」と一言。チラリと顔を見ると、ほんの少しだけ口角が上がりました。
怖くてちゃんと見れなかったですが、改めて見ると色白で切れ長の目をしていて、本当にモデルさんのような美しさでした。
「私の故郷の水だ」
一言そう言った彼女は、きっと自慢の水を飲ませてくれたんでしょう。きついんじゃなく、きっと本当に口下手なんだろうな、と思いました。
「ちょっとユキ! あんた自分から絞り出した水じゃないでしょうねぇ!?」
……は?
「蛤じゃあるまいし、そんな訳あるか!!」
ものすごいツッコミ合戦です。やいのやいの騒いでいる二人を見ていると、自然と笑いがこみ上げました。
「どうした?」
「どうしたのぉ?」
二人に問われました。
「いえ……二人のやり取りが面白くて……蛤って、蛤女房のことですよね? 二人ともまさか妖怪の話しをするとは思わなかったんで……」
その言葉に、ピシッと表情も動きも固まる美女二人です。かわい子ちゃんはいつの間にかけん玉に夢中です。
「……とにかく、隣で水を入れていたのを見ただろう?」
「冗談よぉ~」
残念ながらツッコミ合戦は終わってしまったようです。
その梁と梁の間に、チューリップ型の傘が五つ付いたレトロなシャンデリアがこちらを向いて咲き誇っています。
壁には同じチューリップ型の照明が、天井に向かって咲いています。
床を見ると赤というよりは、えんじ色の絨毯が敷かれています。濃いえんじ色と薄いえんじ色が交互に並んでいて、とってもオシャンティー。
どうぞ、と促された先は、黒っぽい大きな猫足木製テーブルです。その周りには、これまた猫足の三人掛けのソファーが置かれています。
姫様が座るようなそのソファーは、クリーム色の布地でモスグリーンの幾何学模様が描かれていて、背もたれも同じデザインのふかふか布地で作られているようで、背中が痛くなる心配はなさそうです。
えぇ。まさに大正ロマン溢れる室内です! 口を開いてキョロキョロと見回していたら、言われてしまいました。
「何をしている。早く座れ」
と。黒髪ワンレンロングの女性が、ニコリともせず言い放ちました……。
かかとをパカパカいわせながら、恐る恐るソファーへと歩き、静かに座ったソファーはモッフリとした感触です。
はんあ~……気持ちいいわぁ~……なんて思ってしまいました。
さて、テーブルを挟んだ向かいのソファーには、三人の女性が座っています。
左から、さっきの着物を着た女の子。私には飽きたのか、一人であやとりに夢中になってます……かわいい。
真ん中には、先ほど抱き着いてきた女性がいます。薄いピンクの生地に紫の大輪の花が描かれた、大人っぽいキャミワンピを着ています。
胸元は谷間がくっきり! すっごい細いのに、私のただの脂肪の塊の乳より重量がありそうです……ゴクリ。
右側には、腰まであるツヤツヤの髪のワンレン女性がいます。黒いキャミにデニムのホットパンツを履いています。そこから伸びる足は細く長く……まるでモデルさんのようです。
「ところで何を持ってるんだ?」
右側の女性が、不審者を見るような目で私を見ます。いえ、不審者にほぼ間違いないのですが。言われて両手を確認すると、握りしめたままのヒールがありまし。
「……え~と……折れたヒールです……」
「……そうか……」
微妙すぎる沈黙タイムが発生しました。何を言ったら良いのか分からないまま、少し視線を泳がせた時です。
「うひゃあ!」
私のスネにモフモフっとした感触が!
「「こら! スネ子!!」」
真ん中と右側の女性がハモリました。
「……あ……猫ちゃんですか?? 猫ちゃ~ん……」
この沈黙を破ってくれた猫ちゃんを見ようと思い、足元を見てもどこにもいません……。不思議に思っていると、真ん中の女性が話しかけてきました。
「えっとぉ……百合ちゃんって言ったっけ~? もう少しでね~、何て言ったらいいかなぁ……そうだ! 私たちのリーダーが帰って来るからぁ、もうちょ~っとだけ待ってねぇ」
胸元でパチンと鳴らした手を重ねたまま、ニッコリと微笑みます。
「あの……不法侵入だったらごめんなさい……そんなつもりは無く……えっと……私、帰りますね……」
所々つかえながら、ようやく声を絞り出した私です。そして立ち上がると……。
「駄目だ。座れ」
……右側の女性が怖いよぅ……。
「ちょっとぉ! ユキ! 怯えてるじゃない! ごめんねぇ~百合ちゃん! 悪気はないのよ~口と愛想が悪いだけで~」
「私のどこが口が悪いんだ? 腹黒いお前よりはマシだろう」
「ひどぉい! 腹黒くなんかないもん! 私も本体も真っ白よ~!」
……ん?
「……本体?」
ついうっかりと聞き返してしまいました。
「えっと……あの……あの……もぅ~ぬんはまだぁ!?」
「ぬん?」
もうワケワカメな私です。
「今しがた使いを出したばかりだろう? そうだ、お前水を飲め」
「ちょっとぉ! お客さんに水とか……って何も出してなかったぁ!」
「私も出す~!」
トリオ漫才でしょうか? 三人が立ち上がり、隣のキッチンと思われる場所に小走りで行きました。
そして待つこと数分。
私の前には丁寧に説明された、コップに入った水、アジアンテイストなカップとソーサーに注がれた烏龍茶、かわいい湯呑みに入った玄米茶が置かれています……何で三種類もあるのでしょうか?
とりあえず右側の女性が怖いので、ユキと呼ばれた女性が持ってきた水を飲みました。
「……うわぁ……冷たくて、まろやかで……ほのかな甘味を感じる……美味しいです」
恐る恐る感想を言うと「そうか」と一言。チラリと顔を見ると、ほんの少しだけ口角が上がりました。
怖くてちゃんと見れなかったですが、改めて見ると色白で切れ長の目をしていて、本当にモデルさんのような美しさでした。
「私の故郷の水だ」
一言そう言った彼女は、きっと自慢の水を飲ませてくれたんでしょう。きついんじゃなく、きっと本当に口下手なんだろうな、と思いました。
「ちょっとユキ! あんた自分から絞り出した水じゃないでしょうねぇ!?」
……は?
「蛤じゃあるまいし、そんな訳あるか!!」
ものすごいツッコミ合戦です。やいのやいの騒いでいる二人を見ていると、自然と笑いがこみ上げました。
「どうした?」
「どうしたのぉ?」
二人に問われました。
「いえ……二人のやり取りが面白くて……蛤って、蛤女房のことですよね? 二人ともまさか妖怪の話しをするとは思わなかったんで……」
その言葉に、ピシッと表情も動きも固まる美女二人です。かわい子ちゃんはいつの間にかけん玉に夢中です。
「……とにかく、隣で水を入れていたのを見ただろう?」
「冗談よぉ~」
残念ながらツッコミ合戦は終わってしまったようです。
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