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事業計画〜エステ・美容編〜
③
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『次は私ね』
それまで隣で見ていた毛倡妓さんが名乗りを上げました。
『萌、ワックス貸して欲しいんだけど』
『その辺にあるから~好きなの適当に使っていいわよ~』
お二人の会話を聞き、最初は小汚い私が床用ワックスで磨かれると思いました。そして恒例となりつつある、読まれる私の心です。
『ちょっと、いくらなんでもそんな酷いことしないわよ』
ツボに入り爆笑する毛倡妓さんですが、笑いながらも私の髪をまとめています。アホ毛を萌さんのワックスで目立たないようにし、自分が付けていたかんざしを一本、私のまとめた髪に挿してくれました。
『あ、それかんざしじゃないから。箸だよ。和柄が可愛いでしょ』
『え!? 箸!?』
よーく見ると赤地に和柄のお花が描かれていて、かんざしじゃないと言われても、誰も箸だとは気付かないと思います。
ちなみに毛倡妓さんは髪の長い妖怪で、遊女の姿で遊郭に現れる妖怪です。
昔から遊郭で、当時の最先端のオシャレを自身の目で見てきた妖怪なので、髪を結ったり着物の色と帯の色を組み合わせたりと、今で言うスタイリストのような面が養われたと仰っておりました。
そして元々遊郭にいたからなのか、萌さんに負けず劣らずお色気ムンムンです。
『最後は私』
ここで青女房さんの出番となりました。
青女房さんは、廃屋と言いますか位の高い方の古い邸宅に出る妖怪で、誰かが来るのに備えて常に化粧をしているそうです。
そして青女房さんと言えば、お歯黒をしていて眉毛がボーボーで有名なんです。
けれど目の前の青女房さんは、すっごい美人で芸能人のような真っ白な歯です。
『あ~……時代に合わないからさぁ。あたしは今を生きる妖怪だから、お歯黒から真っ白い歯になることに決めたんだ~。メイクだってそうさ。眉毛も手入れしないとダサいじゃない……って、ちょっとアンタ! その眉毛なんなの!? ホントに今の時代の人間の女!?』
……手入れをした事のない、私のボーボー眉毛にお怒りです……。
『あー! もー! 許せない!!』
マイ化粧ポーチから、小さなハサミと毛抜きを取り出し私の眉毛を整えていきます。怖くて抜く時に痛いなんて言えません……。
ひたすら目をつぶって考え事をしていました。私、集中するとのめり込むタイプです。名前を呼ばれて我に返りました。
『早く鏡を見てよ』
青女房さんに言われて鏡を見ると……。
『……どちら様でしょうか……?』
『ちょっと~百合ちゃん! 寝ぼけないでよ~! 百合ちゃんよ~!』
と、大興奮の萌さんです。
『ほげぇぇぇ! 私!?』
そこには原型を留めないほど綺麗になった(自分比)私がいました!
『整形じゃないですよね!? コレ!?』
と思った事を言えば。
『失礼ね! 流石に他人の前でスプラッター劇場やるほど残忍じゃないわよ! メイクのテクニックよ!』
と返されました。いやはや……メイク技術と言うよりは、もはや特殊メイクの域です。
『……萌さん……』
『……えぇ……お願いしましょ~……』
私と萌さんは、今置かれている状況を頬撫でさんと美容三人衆に話しました。
私と妖怪たちとでお金稼ぎをしたいこと。ゴンさんに事業計画書を提出しないといけないこと等を話すと、意外にも面白そうとノリノリになってくれました。
そこから緊急女子会が勃発したのです。
────
「という訳で、妖怪さんたちのおかげでここまで見た目が変わりまして……スッピンは元通りの私になりますが……」
「う……うむ……こう言っては何だが、そこまで変わるのなら世の女性たちが飛び付きそうだな……」
短期間での私の変わりようにゴンさんが引いてます。
「ですのでエステだけでもヘアメイクだけでも良いように店舗を分けて、エステと美容院をハシゴすると割引になったりと、お得な特典を付けるのはどうかな~と……。
ちなみにエステのお顔だけのコースで三十分ほど、全身コースで一時間と、そんなに時間もかからずお手軽です……」
「ほぅ……」
「あと頬撫でさんのテクニックと、泥田坊さんの泥がすごいので、高い美容液とかあまり必要ないんです。仕入れもただの泥ですから無料です。
ただ謳い文句が必要だと思うので、オリジナルの精油を作ろうと思います。まず野山にいる妖怪さんたちに植物を集めて貰います。
萌さんの狐火とユキさんの水や氷を作る能力で、その植物を水蒸気蒸留法で精油を作って貰います。
あとは精油を作る為に圧搾法というのがありまして、赤さんの知り合いの鬼さんに果物を潰してもらって、力ずくで遠心分離させて精油を作って貰ったり、あまり妖力や力のない妖怪さんには油脂吸着法という、油に花を浸して作る精油を作ってもらおうかと……。
これで限りなくコストは抑えられるかと思います……」
「……桃田さん……詳しいな……」
「オリジナル精油を使っても、ほとんどコストはかからないので格安設定で薄利多売はどうかなと……」
なんたって力技の遠心分離ですからね。
「美容院メンバーは、フリーの妖怪の美容師さんに声をかけてもらっています。なのですぐに見つかるかと……。青女房さんは、エステ後のメイクを頼むと一回いくら、みたいな値段設定をしようかと……」
「……私の想像以上で驚いたよ」
ちゃんと感心してくれているゴンさんです。
「さらに、事業計画書の次のページですが、猫カフェ兼、猫耳喫茶についてです。
事業内容は後で説明しますが、エステや美容院とその猫カフェを、道路向かいか隣にしたいんです……」
「ほう……なぜかな?」
ゴンさんは首を傾げるます。
「店舗と店舗の間に、袖引き小僧さんを配置して、道行く人の足を止めようかなと……そこにおいで狐さんを店舗前に配置して、人を呼び込もうと思いまして……広告費の削減になるかと……」
「ぶはっ!」
ゴンさんが全力で吹き出しております。
ちなみに袖引き小僧さんとは、くいっと袖を引っ張るだけの人畜無害な妖怪です。
そしておいで狐さんは、その昔お茶屋をやっていたおばさんが『おいで』と呼ぶと出てきた狐です。もうそのおばさんはこの世にいないので、おいで狐さんは今度は自分が誰かを呼びたいと志願してくれました。
「最高じゃないか! 猫カフェの話も聞こうか!」
ゴンさんは楽しそうに私の話を聞いてくれました。
それまで隣で見ていた毛倡妓さんが名乗りを上げました。
『萌、ワックス貸して欲しいんだけど』
『その辺にあるから~好きなの適当に使っていいわよ~』
お二人の会話を聞き、最初は小汚い私が床用ワックスで磨かれると思いました。そして恒例となりつつある、読まれる私の心です。
『ちょっと、いくらなんでもそんな酷いことしないわよ』
ツボに入り爆笑する毛倡妓さんですが、笑いながらも私の髪をまとめています。アホ毛を萌さんのワックスで目立たないようにし、自分が付けていたかんざしを一本、私のまとめた髪に挿してくれました。
『あ、それかんざしじゃないから。箸だよ。和柄が可愛いでしょ』
『え!? 箸!?』
よーく見ると赤地に和柄のお花が描かれていて、かんざしじゃないと言われても、誰も箸だとは気付かないと思います。
ちなみに毛倡妓さんは髪の長い妖怪で、遊女の姿で遊郭に現れる妖怪です。
昔から遊郭で、当時の最先端のオシャレを自身の目で見てきた妖怪なので、髪を結ったり着物の色と帯の色を組み合わせたりと、今で言うスタイリストのような面が養われたと仰っておりました。
そして元々遊郭にいたからなのか、萌さんに負けず劣らずお色気ムンムンです。
『最後は私』
ここで青女房さんの出番となりました。
青女房さんは、廃屋と言いますか位の高い方の古い邸宅に出る妖怪で、誰かが来るのに備えて常に化粧をしているそうです。
そして青女房さんと言えば、お歯黒をしていて眉毛がボーボーで有名なんです。
けれど目の前の青女房さんは、すっごい美人で芸能人のような真っ白な歯です。
『あ~……時代に合わないからさぁ。あたしは今を生きる妖怪だから、お歯黒から真っ白い歯になることに決めたんだ~。メイクだってそうさ。眉毛も手入れしないとダサいじゃない……って、ちょっとアンタ! その眉毛なんなの!? ホントに今の時代の人間の女!?』
……手入れをした事のない、私のボーボー眉毛にお怒りです……。
『あー! もー! 許せない!!』
マイ化粧ポーチから、小さなハサミと毛抜きを取り出し私の眉毛を整えていきます。怖くて抜く時に痛いなんて言えません……。
ひたすら目をつぶって考え事をしていました。私、集中するとのめり込むタイプです。名前を呼ばれて我に返りました。
『早く鏡を見てよ』
青女房さんに言われて鏡を見ると……。
『……どちら様でしょうか……?』
『ちょっと~百合ちゃん! 寝ぼけないでよ~! 百合ちゃんよ~!』
と、大興奮の萌さんです。
『ほげぇぇぇ! 私!?』
そこには原型を留めないほど綺麗になった(自分比)私がいました!
『整形じゃないですよね!? コレ!?』
と思った事を言えば。
『失礼ね! 流石に他人の前でスプラッター劇場やるほど残忍じゃないわよ! メイクのテクニックよ!』
と返されました。いやはや……メイク技術と言うよりは、もはや特殊メイクの域です。
『……萌さん……』
『……えぇ……お願いしましょ~……』
私と萌さんは、今置かれている状況を頬撫でさんと美容三人衆に話しました。
私と妖怪たちとでお金稼ぎをしたいこと。ゴンさんに事業計画書を提出しないといけないこと等を話すと、意外にも面白そうとノリノリになってくれました。
そこから緊急女子会が勃発したのです。
────
「という訳で、妖怪さんたちのおかげでここまで見た目が変わりまして……スッピンは元通りの私になりますが……」
「う……うむ……こう言っては何だが、そこまで変わるのなら世の女性たちが飛び付きそうだな……」
短期間での私の変わりようにゴンさんが引いてます。
「ですのでエステだけでもヘアメイクだけでも良いように店舗を分けて、エステと美容院をハシゴすると割引になったりと、お得な特典を付けるのはどうかな~と……。
ちなみにエステのお顔だけのコースで三十分ほど、全身コースで一時間と、そんなに時間もかからずお手軽です……」
「ほぅ……」
「あと頬撫でさんのテクニックと、泥田坊さんの泥がすごいので、高い美容液とかあまり必要ないんです。仕入れもただの泥ですから無料です。
ただ謳い文句が必要だと思うので、オリジナルの精油を作ろうと思います。まず野山にいる妖怪さんたちに植物を集めて貰います。
萌さんの狐火とユキさんの水や氷を作る能力で、その植物を水蒸気蒸留法で精油を作って貰います。
あとは精油を作る為に圧搾法というのがありまして、赤さんの知り合いの鬼さんに果物を潰してもらって、力ずくで遠心分離させて精油を作って貰ったり、あまり妖力や力のない妖怪さんには油脂吸着法という、油に花を浸して作る精油を作ってもらおうかと……。
これで限りなくコストは抑えられるかと思います……」
「……桃田さん……詳しいな……」
「オリジナル精油を使っても、ほとんどコストはかからないので格安設定で薄利多売はどうかなと……」
なんたって力技の遠心分離ですからね。
「美容院メンバーは、フリーの妖怪の美容師さんに声をかけてもらっています。なのですぐに見つかるかと……。青女房さんは、エステ後のメイクを頼むと一回いくら、みたいな値段設定をしようかと……」
「……私の想像以上で驚いたよ」
ちゃんと感心してくれているゴンさんです。
「さらに、事業計画書の次のページですが、猫カフェ兼、猫耳喫茶についてです。
事業内容は後で説明しますが、エステや美容院とその猫カフェを、道路向かいか隣にしたいんです……」
「ほう……なぜかな?」
ゴンさんは首を傾げるます。
「店舗と店舗の間に、袖引き小僧さんを配置して、道行く人の足を止めようかなと……そこにおいで狐さんを店舗前に配置して、人を呼び込もうと思いまして……広告費の削減になるかと……」
「ぶはっ!」
ゴンさんが全力で吹き出しております。
ちなみに袖引き小僧さんとは、くいっと袖を引っ張るだけの人畜無害な妖怪です。
そしておいで狐さんは、その昔お茶屋をやっていたおばさんが『おいで』と呼ぶと出てきた狐です。もうそのおばさんはこの世にいないので、おいで狐さんは今度は自分が誰かを呼びたいと志願してくれました。
「最高じゃないか! 猫カフェの話も聞こうか!」
ゴンさんは楽しそうに私の話を聞いてくれました。
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