幽幻會社 夢現堂

Levi

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 爆睡していると、ご飯の時間だと起こされました。

「……んあ?」

「百合ちゃ~ん、私たち・・・のご飯の時間よ~」

 萌さんの言葉に釣られて顔を上げると、私のお腹という肉布団の上でヨダレを流して寝ている福の神さんと、足元でゼーハーしながらやり切った感が丸出しのスネ子ちゃんがいました。

「こんなに~トントン拍子に話しが進んだのは~福の神が頑張ったからなのね~」

 萌さんはしゃがんで福の神さんをツンツンしています。

「福の神さん、ありがとうございます……」

 そう呟くと、聞こえたのかは分かりませんが寝返りをしながらポンっと消えました。本当に感謝です。
 そしてソファーから降りようと思った時に気付きました。

「……あれ? 足のむくみも筋肉痛も消えてる!?」

「え~!? 百合ちゃん筋肉痛だったの~? 言ってよ~! ……って確かにむくみが消えてるわね~……」

「……萌さん」

「……そうね~」

 私の考えてる事が伝わったらしく、萌さんはスネ子ちゃんを抱き抱えます。

「スネ子~? スネ子のおかげで~百合ちゃんのむくみが消えたの~?」

「二ー」

「全力でスリスリしたって言ってるわ~」

 萌さんは苦笑いをしています。私も便乗してスネ子ちゃんに聞いてみました。

「スネ子ちゃん。今日ね烏天狗さんに聞いたんだけどね。擬人化が妖怪たちの間で起こってるみたいなんだけど、スネ子ちゃんの仲間に擬人化したすねこすりはいる?」

「……二ー」

 と可愛らしく答えてくれたスネ子ちゃんですが、スネ子ちゃんの言葉が分からない私は萌さんを見ます。

「そういえば~聞いたことがあるって~。探してみるって言ってるわ~」

 萌さんが言い終わると同時に、スネ子ちゃんは玄関に向かって走りました。……あぁ、疲れてるだろうにありがたい。

「まずは~私たちは~ご飯食べましょ~」

 萌さんに促され晩ご飯タイム開始です。ちなみに今日のご飯は、私の疲れを察した赤さん青さんによる疲労回復メニューです。
 トンカツに、緑黄色野菜の温野菜サラダ、オクラと長芋のネバネバ和え物でした。

「……美味すぎる……幸せすぎる……」

 お腹をさすって食後のお茶を飲んでいると、ぬんさんが話しかけてきました。

「百合子は本当にいい食べっぷりじゃのう」

「あぅっ……だから痩せないんですよね……」

「そんなもの気にしなくて良いのにのぅ。人間のおなごは気にし過ぎじゃ」

 と、そこへしぃちゃんが登場です。

「ねぶちゃんも気にしてないよー?」

 出た! 寝肥り! トラウマ再来。

「ちょっと~! しぃは黙ってなさい!」

 白目を剥いていると、萌さんが助け舟をだしてくれました。ぷーとふくれたしぃちゃんは、どこかへパタパタと走って行きました。

「そうじゃ百合子、今日の事をゴンに伝えた方がいいかのう? 任せるとは言っておったが」

「あ、そうですよね! こまめに報告しましょう! あと明日の契約って、鈴木さんもいた方がいいですよね?」

「そうじゃの。書類などは鈴木さんに任せた方が良いじゃろう。ワシは鈴木さんに連絡をするから、百合子はゴンに連絡を頼む。あの鼻たれ小僧、ワシと百合子とで態度が違いすぎる」

 ブチブチと愚痴るぬんさんに思わず笑ってしまいましたが、あのゴンさんを鼻たれ小僧って言えるのってぬんさんぐらいですよ。
 本当は信頼し合っているからこそ出る言葉ですよね。

 さて、ゴンさんに電話をするのでポケットからスマホを出します。もちろん誰からも何も連絡なんてありませんが何か?
 通話ボタンを押し、数コールでゴンさんが電話に出ました。

「こんばんは、桃田です」

『おぉ桃田さんこんばんは。どうした? 何かトラブルか?』

 少し不安げな声のゴンさんです。私は今日一日の出来事を話し、明日は物件の契約だと告げました。

『予想以上に早いな! ……あ~、桃田さんちょっと聞いてくれ』

 かなり驚いた様子のゴンさんでしたが、聞いてくれと言われて聞いた話しで、今度は私が驚きました。

『事前にちゃんと調べなかった私が悪いんだが、エステ等女性の事については疎くてな……』

 エステで使うパックや美容液を妖怪たちに作ってもらう予定でしたが、なんとそれだと薬事法違反になるとのこと!
 ちゃんとした工場で作った物でなければ無理だろうとの事でした。そしてその工場も、化粧品製造許可を取得していなければいけない事を言われました。

「えぇ!? どうしましょう!?」

『最後まで聞いてくれ。なのでな、私の関連グループの化粧品製造部門に聞いてみたんだ。実は下請けの工場の一つがだな、小規模で良い物を作っていたのだが、採算が取れず閉鎖が決まったそうでな。

 ……買い取った』

「は?」

 我が耳を疑いました。

『だから買い取った。機械もそのまま使えるぞ。工場長や資格も持っている人間もそのままうちで引き取った』

「はぁぁぁ!?」

『後はその人たちに妖怪の話しをしようと思ってな。その方が妖怪も出入りできてやりやすいだろう? ちょっと萌に代わってくれないか?』

「いやいやいやいや……」

 セレブの考えることはぶっ飛んでますよ。開いた口が塞がらないってこの事ですよね。瞳孔もきっとバッキバキに全開な私です。
 動揺しながら萌さんの近くに行きスマホを渡すと、不思議そうな顔をしながらもスマホを受け取りました。

「もしもし~? ……え~? ……うん、いつもの感じでいいのね~? じゃあ明日ね~」

 いつも? いつもの感じってなに!?

「はい百合ちゃん。ゴンが代わってって~」

 スマホが戻ってきましたが、いつもって何ですか?

『そんな訳で明日萌を借りるぞ。あと数日で四月だ……出来ればゴールデンウィークに合わせてオープンしたい所だな……』

「さすがにそれは無理では……?」

『普通にやったらな。妖怪の力を借りれば、普通の人間よりも工事が早い。名も無いような鬼は建築関係の仕事に就いている率も高いから、ぬんに聞いて探してみてくれ。後は従業員とメニューに値段設定などだな。早めに猫又や頬撫でたちと話し合ってくれ』

 最後はほぼ一方的にゴンさんが話し、あっさりと電話は切れてしまいました。……やる事ありすぎ問題……。
 そっと振り向くと、ぬんさんも電話を終えていました。

「百合子、明日の午前に鈴木さんと不動産屋に行くことになったぞ」

 満面の笑みのぬんさんです。ゲッソリとした私とは見事に対照的です。
 ゴンさんから言われた事を伝えているうちに夜は更け、本日もこのお屋敷に泊まることになりました。
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