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第4章の7・やっとれんわ…の ぷち話し
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山嵐家。
「何?隆正が?」
着物を諸肌脱ぎの状態にして庭池の前に立っている男が、目を丸くして聞いた。
「はい、お父様。…申し訳ありません。私の監督不行き届きです。」
着物姿の女性が頭を下げている。
「…ふ、ふふ…美緒さん、何を謝る。」
女性は隆正の母・美緒(みお)であり、お父様と呼ばれる筋骨隆々の男は隆正の祖父・元正(げんしょう)である。
元正はゆっくりと美緒の方に歩いて来た。
「あの隆正が家を空けてまで己を試そうとしている。こんな嬉しい事があろうか。」
そして美緒の横を通り抜け、縁側に腰掛ける元正。
「美緒さん、その件にあやつは…竜沢の小僧は絡んでいるのか?」
「はい。どうやら…竜沢さんと戦う為の様です。」
「ほっ?!」
それを聞いて、更に嬉しそうな顔をする元正。
「ふ…ふわっはっはっはっ!そいつはいい!」
美緒は、表情こそ変わらないが驚いていた。元正がここまで大笑いする事など、滅多に無いからだ。
「お父様?」
「ふ、ふふ…覚えておるか、あやつが頭を下げに来た時の事を。」
「…はい。」
「初対面のわしにあれほど堂々と話してきよったのは、あやつくらいだ。」
元正の脳裏には、隆正のGCSA入部を頼みに来た時の、竜沢の顔が浮かんでいた。
「ただの恐いもの知らずではない、あの表情…。あれ程の男と、隆正は戦おうとしていると言うのか。」
元正は縁側に置いていた茶をすする。
「…美緒さん、お願いがあるんだが。」
「何なりと、お父様。」
「見て来てはくれんか?あやつと隆正の勝負を。」
美緒は表情を変えず、小さくうなずいた。が…
「ふっふっ…わしに行けと言いたいのだな。直接見れば良かろうと。」
湯飲みを置き、立ち上がる元正。
「美緒さん、わしが行けばどうなるか分かっておろう。大騒ぎになって勝負を見るどころではないわ。」
ゆっくりと腰を下げ、構える元正。
「…ぬぅん!」
元正が右足で空を蹴る。その勢いで庭の砂が舞い上がった。
「…お見事です、お父様。」
驚く事に、元正から遠く離れた池向こうの松の木の枝が切れ落ちた。
「…ふん、切り口が甘いな…鈍ったわ。」
振り返り、美緒の方を見る元正。
「奴らの事もあるでな、わしは迂闊には動けん。美緒さん…頼むぞ。」
「承知しました。ただ…」
「ん?」
「あの松…お母様のお気に入りです。」
「ぬわっ?!」
元正は諸肌だった着物を着なおし、ゆっくりと語り出した。
「…美緒さん、わしは暫く旅に出るのでな。あ、後は…頼むぞ。」
いや、あんた迂闊に動けんのと違うん?
「何?隆正が?」
着物を諸肌脱ぎの状態にして庭池の前に立っている男が、目を丸くして聞いた。
「はい、お父様。…申し訳ありません。私の監督不行き届きです。」
着物姿の女性が頭を下げている。
「…ふ、ふふ…美緒さん、何を謝る。」
女性は隆正の母・美緒(みお)であり、お父様と呼ばれる筋骨隆々の男は隆正の祖父・元正(げんしょう)である。
元正はゆっくりと美緒の方に歩いて来た。
「あの隆正が家を空けてまで己を試そうとしている。こんな嬉しい事があろうか。」
そして美緒の横を通り抜け、縁側に腰掛ける元正。
「美緒さん、その件にあやつは…竜沢の小僧は絡んでいるのか?」
「はい。どうやら…竜沢さんと戦う為の様です。」
「ほっ?!」
それを聞いて、更に嬉しそうな顔をする元正。
「ふ…ふわっはっはっはっ!そいつはいい!」
美緒は、表情こそ変わらないが驚いていた。元正がここまで大笑いする事など、滅多に無いからだ。
「お父様?」
「ふ、ふふ…覚えておるか、あやつが頭を下げに来た時の事を。」
「…はい。」
「初対面のわしにあれほど堂々と話してきよったのは、あやつくらいだ。」
元正の脳裏には、隆正のGCSA入部を頼みに来た時の、竜沢の顔が浮かんでいた。
「ただの恐いもの知らずではない、あの表情…。あれ程の男と、隆正は戦おうとしていると言うのか。」
元正は縁側に置いていた茶をすする。
「…美緒さん、お願いがあるんだが。」
「何なりと、お父様。」
「見て来てはくれんか?あやつと隆正の勝負を。」
美緒は表情を変えず、小さくうなずいた。が…
「ふっふっ…わしに行けと言いたいのだな。直接見れば良かろうと。」
湯飲みを置き、立ち上がる元正。
「美緒さん、わしが行けばどうなるか分かっておろう。大騒ぎになって勝負を見るどころではないわ。」
ゆっくりと腰を下げ、構える元正。
「…ぬぅん!」
元正が右足で空を蹴る。その勢いで庭の砂が舞い上がった。
「…お見事です、お父様。」
驚く事に、元正から遠く離れた池向こうの松の木の枝が切れ落ちた。
「…ふん、切り口が甘いな…鈍ったわ。」
振り返り、美緒の方を見る元正。
「奴らの事もあるでな、わしは迂闊には動けん。美緒さん…頼むぞ。」
「承知しました。ただ…」
「ん?」
「あの松…お母様のお気に入りです。」
「ぬわっ?!」
元正は諸肌だった着物を着なおし、ゆっくりと語り出した。
「…美緒さん、わしは暫く旅に出るのでな。あ、後は…頼むぞ。」
いや、あんた迂闊に動けんのと違うん?
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