龍青学園GCSA -ぷち-

楓和

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第5章の5・いつ走んねんっ!…の ぷち話し

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 早朝。山嵐家の玄関。

 「…くそ。」

捻挫で腫れた右足をテーピングで固めている為、うまく靴が履けない隆正。
靴紐を少し緩めてから足を入れ、キツめに締める。

 「くっ…あかん、もっと締めな。」

左腕にはまだギプスが装着されており、靴紐を強く結べない。その時…

 「…んあ?」

背後から隆正の一番上の兄・重正(しげまさ)が、隆正の肩に手を置いた。

 「重兄ぃ、帰ってたんか。」
 「おう、昨夜な。色々聞いたぜ、隆正。」

そう言って隆正の前に出て屈んだ重正は、隆正の靴紐を強く結んだ。

 「ぐっ…」
 「痛ぇか。でもまぁ…走るんだろ?ならこれで良ぇやろ。」
 「重兄ぃ…助かるわ。」
 「ははっ、大袈裟やな。」


 玄関から門をくぐり、外に出て空を見上げる隆正。まだ薄暗かった。

 「隆正、お前は正統後継者や。その足は歴史を背負う。けど、それ以上に大事な物があるんやろ?そんなら絶対、その大事なもん手放すなよ。」
 「…おうっ!」

黒点塾に向かう隆正の背中を、重正は見送った。

 「…声掛けてやりゃあいいのによ。」
 「ふん。お前だけで十分。」

祖父・元正が門をくぐって外へ出て来た。その後ろには母親・美緒も居る。

 「ったく、あれ程の足をここで賭けるなんてよ。けど…誇らしいぜ。」

重正の言葉に頷く元正。

 「デカくなりおった。…今度竜沢の小僧に美味いもんを食わしてやらにゃあな。」
 「伝説のマタギ『弾拳(だんけん)の万路』の孫にもな。」
 「万路か。ふん、結局奴とは決着がつかんかったな。孫同士で…とも思ったが、それこそ川波んとこのガキに高笑いされそうじゃ。」
 「どっちのや、じいさん?」
 「上に決まっとる。下は奴らの血が混ざっとるとは思えんほど素直な小僧よ。」
 「へぇ…。」
 「さて…朝飯には少し早いか。美緒さん、お茶でも入れてくれぬか。」
 「…」

美緒は無言で隆正が去った方向を見ていた。

 「ん?……ふっ。」

顔を見合わせ、嬉しそうに笑みを浮かべた元正と重正は、美緒を置いて家の中へ入った。

 「…隆正、気張りなさい。」

美緒は拳に力を込めてそう呟いた。
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